伝世舎のブログ

日々是好日

『遺し、伝える』ことが伝世舎の理念です。


分析後、作品の状態によっては保存へのコンサルティング。


必要なものには現状を維持したまま次の時代に遺すために修復を。




伝世舎 


TEL  03-6666-1200


受付時間:10:00~18:00


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 接着剤は、接着力が強くて剥がれない方が良いというイメージはありませんか? ところが修復に使う接着剤は、剥がせることが重要なんです。
 修復をする作品は、長い年月を経てたり、損傷があったりと脆弱化している状態です。強力な接着剤で貼った紙を剥がそうとすると、作品が剥がす力に耐えられなくて、もっとボロボロになる危険性があります。
 将来の修復や、作品に損傷が生じた場合に、作品に負担が掛からないように接着剤が除去できることが大切です。
 そのためには、どのような接着剤を使うのか?
 日本画や書の表装や修復に使う接着剤は、昔から「生麩糊(正麩糊)しょうふのり」です。
 日本画や書の補強や、掛け軸や額などの表装を仕立てるために、裏面に紙を貼ります。そのことを「裏打ち」といいます。その裏打ちに使う接着剤が生麩糊です。
 原料は小麦粉澱粉です。使う度に小麦粉澱粉を煮て、生麩糊を作ります。
 裏打ちは、表装の形や素材、工程によって、紙の種類や厚さ、接着剤の濃さなどを変えて行います。

1 生麩糊はその都度煮て作ります。

2 糊漉で漉してから使います。

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 糊盆で使う濃さに調整します。目的によって糊の濃さはマチマチです。

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 裏打ち紙に生麩糊を塗ります。

5 糊を塗った紙を貼り込みます。これは増裏打ちの様子です。

 以前のブログで紹介した古糊は、生麩糊を数年間寝かせた糊で、接着力がとても弱いものです。

「寒糊を煮ました。」
http://ameblo.jp/denseisya/entry-12144731761.html


 でも、柔らかくしなやかな感じになるので、掛け軸や巻物の仕立てには必須です。広げたり巻いたりする掛け軸や巻物は硬いと、歪みや横折れなどの損傷の原因となります。柔軟性のある仕上がりにするために、手間と年月を掛けた古糊を使います。
 ただし、古糊を塗って紙を貼っただけだと、剥がれやすいので、紙同士の接着が増すように、打ち刷毛を使います。打ち刷毛は、シュロとツグのヤシ科の植物でできている分厚い刷毛です。ほうきやタワシに使われている植物といった方が、馴染みがあるかもしれません。
 紙を貼った後に、打って紙同士の繊維を絡ませ圧着させます。打つことによっても柔軟性をより増していきます。

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 中裏打ち(増裏打ち)後に打ち刷毛で打っていきます。

 この打ち刷毛と古糊はセットで、昔から行われていて伝統的なやり方です。
実は、煮た生麩糊、古糊、打ち刷毛を使っている工房は今では少なくなっています。
 今は、表装には工業製品の接着剤を使うのが一般的です。原料も何種類か混ざっていて、防腐剤などの添加物が入っているため、ずーっと置いていてもカビません。
 工業製品の糊を使っている工房では、すでに古糊や打ち刷毛は使われていません。

 近年、工業製品の接着剤で表装された作品が修復の時期に入ってきています。固着して剥がすことが難しいことがあります。
 昔から使われている伝統的な生麩糊は、修復や表装が繰り返し行われきたので安心できます。
 伝世舎では、作品の修復や表装には工房で煮た生麩糊を使っています。

 ところで最近、打ち刷毛をもう一つ購入しました。サブ用に使うので、本来の打ち刷毛よりもお手頃です。これは馬の毛でできています。
 小林刷毛製造所さんで作って頂きました。
 https://www.facebook.com/kobayashihake/?fref=ts
 
7
 本来の打ち刷毛(右)、馬毛の打ち刷毛(左)。

保存・修復に関するご相談・お問い合わせは伝世舎まで
http://www.denseisya.com/contact/
TEL./FAX. 03-6666-4200

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  6月25、26日(土、日)に文化財保存修復学会の大会に参加しました。今年は東海大学湘南キャンパスで開催されました。2日間、小田急線で約1時間半かけて行きました。
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会場の東海大学湘南校舎。

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 今回は各会場が分かれています。

03 口頭発表風景。

 今回、ポスター発表をしました。
 発表は、約1年半かけて行った、神社神楽殿の格天井画36面と杉戸絵4面の修復報告です。
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発表したポスター。データ量が多すぎました。

 明治期の板に描かれた日本画です。
 約130年も神楽殿に設置されていたので、損傷劣化が酷い状況でした。
 この修復は、東京藝術大学大学院保存修復日本画研究室の監修のもと、板の処置をおいかわ美術修復、画面の処置を伝世舎が行いました。
 伝世舎では、主に画面の汚れの緩和と、脆弱化した絵具の剥落止めの処置をしました。
 神楽殿も老朽化していたので、新築して、そこに修復した格天井画と杉戸絵を設置しました。新たな神楽殿で保存活用することになりました。
 そのポスター発表に、多くの方々に見て頂き、またご指導ご意見を頂き、大変感謝しています。
06 
05 多くの方に見て頂きました。
 
 実は来年の1月に、修復した作品の展覧会が開催します。またご報告します。

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 もう桜も開花して暖かくなってきましたが、少し前のお話しで恐縮です。年度末は何かと忙しく、ブログをまとめる時間がありませんでした。
 
 2月20、21日の2日間をかけて寒糊を煮ました。
 修理や表装で使う糊は生麩(正麩)という小麦粉澱粉を煮たものです。糊はその都度煮て使います。寒糊とは、冬の一番寒いときに煮た生麩糊のことを言います。それを瓶に入れて数年~10年くらい寝かせます。寝かせた糊を古糊と言います。古糊は、掛軸や巻物などの巻いたり広げたりするような柔軟性を必要とする表装作品の裏打ちに使います。
 長い間寝かせているので、もちろんカビが生じます。カビている部分を取って白っぽく残っている部分を使います。そのため、10年くらい経った糊の量は1/10くらいに減ってしまいます。とてもとても貴重な糊です。完成した古糊です。一瓶仕込んだものが、こんな量まで減りました。
 001 完成した古糊。

 糊は煮る直前まで、小麦粉澱粉を水に浸けて膨潤させておきます。ゲル状になっていて面白い感触です。水は精製水を使っています。
 これを鍋で約30分ほどかけてかき回しながら煮ていきます。なかなか疲れる作業です。
002 糊を煮ています。ただひたすらかき回します。

  出来上がりました。それを瓶に入れます。寒い時期に煮るのは熱々の糊が早く冷えるためです。
003 できあがった糊を瓶に移します。

004 紙で封をします。貼る糊は沢山あります。

  封印して冷暗所で寝かせます。次にカビの除去のために開けるときは1年後です。近くに100年を超すお屋敷があり、台所の床下をお借りしています。大丈夫ですよ、臭いは漏れません。
005 
以前の糊もチェックが済んだら封をします。

006 冷暗所で保存します。
 
 年によってカビの生じ方、臭いなども異なり、数年経ってみなければ良い古糊になるか分かりませんね。
 今年の寒糊も、良い古糊になりますように。

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