伝世舎のブログ

日々是好日

『遺し、伝える』ことが伝世舎の理念です。


分析後、作品の状態によっては保存へのコンサルティング。


必要なものには現状を維持したまま次の時代に遺すために修復を。




伝世舎 


TEL  03-6666-1200


受付時間:10:00~18:00


http://www.denseisya.com/



テーマ:

 羅紗バサミ(裁ちバサミ)は洋服の仕立屋さんが使う布を切るために使うものです。伝世舎では主に表具裂を切るのに使っています。
 このハサミ、本来は布用、紙用と分けて使うべきもので、併用すると切れ味が落ちてきます。

 伝世舎で使っているハサミは、50年以上に渡って使い続けてきたものですが、表具用として使用してきた物ではありません。親が仕立屋だった頃使用していたハサミです。日本橋の木屋で購入したとのこと。
 職人は道具を大切にしますが、仕立屋の場合はとくにハサミにこだわります。
 親も研ぎ師をわざわざ呼んで研いでもらい、切れ味をチェックしながら何度も研ぐ作業を繰り返していました。納得しなければ終わらないほどこだわります。
 「仕立屋と理・美容師のハサミの研ぎは割に合わない」とは研ぎ師さんの言葉です。
1 羅紗バサミ


 しかし、そのような羅紗バサミを譲り受けながら、普段は布と紙を余り考えずに併用していました。反省しきりです。
 なおかつ、あろうことか金襴を切るという暴挙に出てしまいました。金襴は金箔の糸で文様を織り出しています。金はいくら柔らかいと言っても金属です。当然ながら刃こぼれが生じてしまい、布が切りにくくなってしまいました。
2
金襴 金箔の糸で模様を織り出す

 ハサミは研ぎの中でも特に難しく、おいそれとできるものではありません。ですから日本橋のコレド室町にある木屋さんに研ぎをお願いしました。
 江戸から続く老舗である木屋は、言わずと知れた刃物の店です。ここで販売した製品でないと研ぎをしてくれません。
 「かなりひどい状態ですね」と言われてしまいました。こちらとしても本当に申し訳なく思っています。木屋では銘を確認して実際にここで扱っている商品だと言うこと、ハサミを製作した工房はまだ健在と言うことが分かりました。研ぎ師の手に負えなければ直しは不可能ですが、何とか頑張ってみる、とのこと。
3 
東鋏 TOKYO Kamekichiの銘がある
 
 さて、研ぎをお願いして10日ほど、できあがってきました。
 ハサミを止めるネジが駄目だったので交換してもらい、綺麗に仕立てて頂きました。
 これで税込み2,700円也。安いです。
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綺麗に蘇りました

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切れ味も元に戻りました
 
 このハサミは布専用として使い、大事にしようと思っています。
 やはり道具のメンテは大切だなと思った次第です。
 そうなると金襴はどのハサミを使ったらいいのだろう?

 

 

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「おまけシール」の修復依頼がありました。
シールは裏に両面テープを付けて、台紙に十数枚並べて、貼ってありました。
その両面テープを剥がして欲しいとの依頼でした。
1

台紙には、シールとは別に小さな紙片も付いていました。確認をするとシール裏面のシートの一部です。台紙に何度か貼り直したようで、その時に破れてしまった紙片です。すでにシートの表面が破れて無くなっている箇所もありました。
2 

両面テープと接着剤を除去して、紙片を元の場所に戻す処置を行います。

実際に、両面テープは接着力が強力で、無理に引っ張って剥がすと紙の表面が薄く剥がれてしまいます。その上、テープを剥がしても、ベトベトした接着剤が残ってしまいます。接着剤は、時間が経つと固着して変色が生じることもあります。

「おまけシール」に負担を掛けずに、接着剤を除去するかが重要です。
今回の処置は、溶剤を使って、接着剤を緩ませて除去する方法で行いました。
溶剤の種類によっては、印刷のインクを滲ませてしまいます。溶剤をいろいろと試して、その中から処置に適した溶剤(接着剤を容易に緩ませ、印刷インクが滲まない、残留しない)を選びました。
2種類の溶剤を使うことにしました。
まずは、処置しやすいように、複数のシールが貼られていた台紙を切断して、シールを単体にしました。
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シールから、両面テープだけを残して、台紙をそーっと剥がしました。
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両面テープに溶剤を塗って、接着剤を緩めて剥がしました。
接着剤のべたつきを、溶剤を浸した綿棒で軽くこすりながら除去しました。
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紙片は、接着剤痕を除去して、元の場所に戻しました。接着剤はメチルセルロースを使いました。
※メチルセルロースは、紙作品の修復などに使われている水溶性の中性接着剤です。
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印刷インクの状態が異なり、同じ溶剤を使って滲まないもの、滲むものがあったり、テープに薄い紙の繊維が付いてきてしまい、戻すことが大変なものもありましたが、テープと接着剤痕を除去して、安定した状態にはなりました。

これからも大事に保管するためには、シールの収納として、アーカイバルバインダーとリフィルをお勧めします。
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バインダーは中性紙コルゲートボードとプラスチックバインダーを使用したシェルボックス型の収納箱です。縦置き、平置きどちらでも対応できます。資料や作品に安全な素材です。
リフィルは、長期保存に適した不活性ポリプロピレン製のシートです。
マウント済35㎜ポジフィルムを入れるサイズのリフィルが、ちょうどおまけシール(480×480㎜)の大きさに合っていました。
バインダーに入れることで、塵埃や光を防ぎ、安定した環境を保つことができます。
リフィルは、透明シートなので直接触らずに両面を鑑賞することができます。
発売元の株式会社資料保存器材にお問い合わせ下さい。
http://www.hozon.co.jp
Email: mail@hozon.co,jp

おまけシール(ビックリマンシール)等も対応できます。
困ったことがあればとりあえず伝世舎までご相談ください。
http://www.denseisya.com/contact/
TEL./FAX. 03-6666-4200

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 接着剤は、接着力が強くて剥がれない方が良いというイメージはありませんか? ところが修復に使う接着剤は、剥がせることが重要なんです。
 修復をする作品は、長い年月を経てたり、損傷があったりと脆弱化している状態です。強力な接着剤で貼った紙を剥がそうとすると、作品が剥がす力に耐えられなくて、もっとボロボロになる危険性があります。
 将来の修復や、作品に損傷が生じた場合に、作品に負担が掛からないように接着剤が除去できることが大切です。
 そのためには、どのような接着剤を使うのか?
 日本画や書の表装や修復に使う接着剤は、昔から「生麩糊(正麩糊)しょうふのり」です。
 日本画や書の補強や、掛け軸や額などの表装を仕立てるために、裏面に紙を貼ります。そのことを「裏打ち」といいます。その裏打ちに使う接着剤が生麩糊です。
 原料は小麦粉澱粉です。使う度に小麦粉澱粉を煮て、生麩糊を作ります。
 裏打ちは、表装の形や素材、工程によって、紙の種類や厚さ、接着剤の濃さなどを変えて行います。

1 生麩糊はその都度煮て作ります。

2 糊漉で漉してから使います。

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 糊盆で使う濃さに調整します。目的によって糊の濃さはマチマチです。

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 裏打ち紙に生麩糊を塗ります。

5 糊を塗った紙を貼り込みます。これは増裏打ちの様子です。

 以前のブログで紹介した古糊は、生麩糊を数年間寝かせた糊で、接着力がとても弱いものです。

「寒糊を煮ました。」
http://ameblo.jp/denseisya/entry-12144731761.html


 でも、柔らかくしなやかな感じになるので、掛け軸や巻物の仕立てには必須です。広げたり巻いたりする掛け軸や巻物は硬いと、歪みや横折れなどの損傷の原因となります。柔軟性のある仕上がりにするために、手間と年月を掛けた古糊を使います。
 ただし、古糊を塗って紙を貼っただけだと、剥がれやすいので、紙同士の接着が増すように、打ち刷毛を使います。打ち刷毛は、シュロとツグのヤシ科の植物でできている分厚い刷毛です。ほうきやタワシに使われている植物といった方が、馴染みがあるかもしれません。
 紙を貼った後に、打って紙同士の繊維を絡ませ圧着させます。打つことによっても柔軟性をより増していきます。

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 中裏打ち(増裏打ち)後に打ち刷毛で打っていきます。

 この打ち刷毛と古糊はセットで、昔から行われていて伝統的なやり方です。
実は、煮た生麩糊、古糊、打ち刷毛を使っている工房は今では少なくなっています。
 今は、表装には工業製品の接着剤を使うのが一般的です。原料も何種類か混ざっていて、防腐剤などの添加物が入っているため、ずーっと置いていてもカビません。
 工業製品の糊を使っている工房では、すでに古糊や打ち刷毛は使われていません。

 近年、工業製品の接着剤で表装された作品が修復の時期に入ってきています。固着して剥がすことが難しいことがあります。
 昔から使われている伝統的な生麩糊は、修復や表装が繰り返し行われきたので安心できます。
 伝世舎では、作品の修復や表装には工房で煮た生麩糊を使っています。

 ところで最近、打ち刷毛をもう一つ購入しました。サブ用に使うので、本来の打ち刷毛よりもお手頃です。これは馬の毛でできています。
 小林刷毛製造所さんで作って頂きました。
 https://www.facebook.com/kobayashihake/?fref=ts
 
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 本来の打ち刷毛(右)、馬毛の打ち刷毛(左)。

保存・修復に関するご相談・お問い合わせは伝世舎まで
http://www.denseisya.com/contact/
TEL./FAX. 03-6666-4200

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