櫻葉【27】◆電気を点けてはいけない部屋◆続編





櫻井先生の助手席が好きだった。

先生の車には、時々乗せて貰っていたけど…。



「先生?次、左って言ってますよ?」



「あっ、あぁ、そうか、そうだ。」



ナビがついてるのに、櫻井先生はよく間違える。
それは、櫻井先生がお喋りに夢中になっちゃうからなんだ。

学生時代のこと、仕事のこと、旅先でのアクシデンド、、、今までにもたくさんの話を聞いて、たくさんの先生を教えて貰って、そのどれもが大好きになったけど。


二人の暗黙の了解ってわけじゃないけど、お互い、恋の話はひとつもして来なかった。


そんな櫻井先生が、初恋の人に会わせるって言うんだから、余程の何かがあると思うんだけど。


車は高速に乗って山の中を抜けると、有名な湖の側を通りすぎて、、、、。

途中、道なき道へと曲がった。


回りは自然に囲まれていて、民家もないし、ほんと何もない。

車のタイヤがジャリジャリと音を立てて、ガタガタ揺れながら舗装されていない道を進むと、古びた洋館のような建物の前で止まった。



「ここなんだ…」



「お店?」



「あぁ、食事も出来るけど…
僕が行きたいのは、裏側ね?」



「うらがわ?」



「さ、行こうか?」



櫻井先生がわざとらしく背筋をピンっと伸ばして腕を出してくる。



「いいんですか?」



「もちろん。」



なら、と、オレは櫻井先生の腕を取った。

腕を組むことなんて あまりなかったけど、こうやって行きたいってことには、何か訳があるのかもしれない。


お店の玄関であろうところには入らずに、洋館の横を過ぎて裏側へと回る。

少し伸びた雑草が、人の出入りの無さを物語っている。


裏側には洋館を小さくしたような、離れがあった。


洋館と離れの間は、屋根だけがある通路になっていて、年配な女性が離れから洋館へと歩いていたんだけど、櫻井先生を見つけると、そりゃもう嬉しそうに話し掛けてくるからさ?


初恋の人とは家族ぐるみなんだ、、、なんて落ち込んだんだ。





…つづく…






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