2007-12-11 23:43:55

<第165話> 第5章 大学受験編Ⅸ ~束縛と父の背中(5)~

テーマ:大学受験編

「りょうせい~。」



その日はある秋の日曜日。


朝っぱらから父の声がした。



「入っていいか~?」



二度ノックをして、廊下から僕を呼ぶ父。



「おー、どうぞ~。」



父は基本的に土日が休みなのだが、


たいてい日曜日は母の買い物につきあったり、庭弄りをしたりして過ごしている。


僕の部屋にくることなど、まずなかったのでびっくりした。



「どしたの? 用事??」


「んや、ちょっと相談があってな(笑)」



受験直前で、僕がぴりぴりしているのを知っていた両親は、


この時期、僕との接触を極力避けていたような気がする。


なので、わざわざ相談があると言った父の行動が、不思議でならなかった。



「相談??」


「あぁ。 実はな~。」



父によると、


どうも、今後の仕事の幅を広げるために、


資格をとろうとしているとのことだった。



「へぇ~。 すごいな。 その歳でがんばるの??」


「あはは(笑) まぁな。 父さんもりょうせいみたいにがんばろうかと思って(笑)」



父は当時すでに50歳近くになっていた。


その年齢から資格をとるという意欲に、純粋に感心した。



「で、そのことを俺に相談するって、どういうこと??」


「いやぁ・・・実はさぁ・・・。」



資格なら自分で勉強して受ければいいだろうし、


高校生の僕が助けてあげられるようなことはまずない。


不思議に思った。



「父さん、試験とかあんまり受けたことがないからさ、予想問題とか解くとき、時間はかったりするの、一緒にやれないかなぁって思って(笑)。」


「へ?」



父親によると、


不慣れな試験勉強を一人でやると、


どうにもはかどらない。


だから、僕がセンター試験の予想問題を解くとき1時間の時間を計ってやるなら、


自分が1時間の時間を計る問題をするから、一緒にやってくれないか。


そうすれば、無理やりでも勉強するだろうし、


ついでにマークシート試験のコツみたいなのも教えて欲しい。


そういうことらしい。



正直、理由が理由になってないような気もしたのだが、


僕と一緒にがんばろうとする父親の姿を見て、


やはり応援したくもなった。



「いいよ? といっても、俺は俺で問題解くだけだけど・・・。」


「おお! ほんとにか!? いやぁ、迷惑だって断られると思った~~(笑)」


「あはは(笑) 別にいいよ。 どうせ時間はかって解くものたくさんあるしね。」


「いやぁ、助かる! りょうせいのやる気、父さんにもわけてほしかったんだよ(笑)」





父親のそんな提案を受け、


その日から、休日は日中に、たくさんの問題を一緒に解いた。


平日は、父が仕事から帰ってきたら、1時間の予想問題を1つか2つ解く。


仕事して、勉強してと、


父がなぜそんなにがんばるのかはわからなかったのだが、


資格を短期間で取ろうと必死なのだろうと思い、


つられて一緒に勉強していた。




座敷にあるコタツに入りながら、


ストップウォッチで1時間を計り、


向かい合わせに座りながら、黙々と問題を解く。


親子の会話らしいものは、合間の休憩時間程度。


「疲れたぁーー。 りょうせいまだがんばるのかぁ??」


「俺は父さんと違って学校だけだからね(笑) まだまだがんばれるよ。」


「さすがだなぁ・・・。 父さんもう限界~。 先に寝るぞ~。」


「いやいや、お疲れ様(笑)」



そんな日々が続いた。


父親が目の前でがんばっているのに、


僕が磯崎のことでフラフラと考えては罰が当たる。


そんな気がしたのか、


父と向かい合って勉強しているときは、よそ事を考えることはしなかった。





気付けば季節は巡った。


こうして迎えた12月のある日、


父が言ったんだ。



「なぁ、りょうせい?」



いつものように試験問題を解き、合間の休憩時間だった。


あったかいコーヒーと紅茶を入れて、父が座敷に戻ってくるなり、僕に話しかける。



「ん? あぁ、ありがと(笑)」



紅茶を受け取り、お礼を言うと、


向かいに腰を下ろした父が続ける。



「最近、勉強はかどってるか? 父さん邪魔してないかな?」


「なんだよいきなり(笑) むしろ父さんのおかげで集中できて助かってるよ(笑)」



それはお世辞でもなんでもない。


本心だった。



「そうか(笑) ならよかった(笑)」



一口コーヒーを含んで、


父は言った。



「父さん実は心配だったんだよ。」


「え?」


「りょうせい、最近ちょっと集中できてないんじゃないかってな・・・。」



父は、


僕の変化を感じ取っていたのだという。



「何があったかはわからないんだけどな(笑)」



そう言って、一度にこっと笑って、



「りょうせいが目指してるものって、すごく大変なものなんだと思うんだ・・・。」



真剣な面持ちに切り替え、父は続けた。



「・・・だからな・・・、無理にその道にこだわる必要もないし、時間をかけてやることだっていいと思う。」


「・・・。」


「悩みたいときはゆっくり悩めばいい・・・。 父さんはそう思ってた。 でもな・・・。」



父は、僕の目を見る。



「一緒に勉強してるときのりょうせい、やっぱりすごいなって、わが子ながら思ったんだ。 集中できてないとか変な心配しちゃってごめんな・・・。 悩んでることとかあっても、それだけがんばれるならたいしたもんだと思う。 応援するから、一緒にがんばろうな(笑)」



このとき、父に対して、



「なんだよそれ(笑) よくわからないけど、俺は大丈夫だよ(笑)」



そんなことしか言えなかった。


でもさ、父さん。


俺、すごくうれしかったんだ。


家で態度に出してるつもりなんてこれっぽっちもなかったのに、


些細な変化に気付いてくれる人がいる、


心配してくれる人がいる、


本当にうれしかったんだ。




後で母に聞くことになるのだが、


父は、僕が勉強に手がついていなさそうなのを心配していた。


それで、取る気もなかった資格を自分がとることにすれば、


一緒に勉強する口実になる。



「俺と一緒だったら、あいつ、がんばれるかな?」



そんなことを言っていたらしい。



「そんな回りくどいことしなくても、がんばれって言ってあげたらいいじゃない?」



母にそう言われた父は、



「がんばってるあいつに、一方的にがんばれだなんて言えないよ(笑)」



そう言って笑ったらしい。



がんばれ。


言われてみれば、このときまでに、父は一度も口に出したことがなかった。


「がんばれ」じゃなくて、「がんばろう」か・・・。


父の優しさが染みた。




その後、年内にあった父の資格の試験。


難関と言われたその試験に、父は見事に合格した。



「りょうせいのおかげだな(笑) ちょっとした勉強でうかるなんて父さんは運がいい(笑)」



そう言ってうれしそうにお酒を飲む父の顔は、


僕の中にあった葛藤、しがらみ、くだらない考えを吹き飛ばしてくれたんだ。


くだらないことばかり考えて、寄り道するのはもうやめよう。


僕は・・・


僕なんだ・・・。



ふっきれた。


気付けば、磯崎のことも、柴田のことも、


何も考えず、


机に向かえるようになっていた。


スイッチのオンオフが、


うまく切り替えられるようになっていたんだ。


もちろん、悩むことはあったが、


少なくとも、


勉強中に集中を欠くということがないようにすることが、


できるようになったのだ。




人は、


何がきっかけで成長するかわからない。


そして、


誰かの支えがあって、初めて伸びることができることだってある。


このときの僕は、


間違いなく、父に救われたのだ。



「これで、父さんはもう一緒に勉強できないけど、だいじょうぶかぁ?(笑)」



少しほろ酔いになった父が僕に聞く。



「あはは(笑) 問題ないよ(笑)」



あの時も、


そして、今も



「さんきゅ、父さん(笑)」



父への感謝は、


尽きることはない。




センター試験を直前に控え、


また一つ成長できた僕は、


最後の追い込みへと駆け抜けて行ったのだった。





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<問題>

このとき父から聞いた、父の座右の銘があるのですが、

それはいったいどんな言葉でしょうか?

んー、深い・・・のかな?笑


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コメント

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5 ■Re:初めましてです。

>関西。さん

コメントありがとうございます^^

そんな風に言っていただけて光栄です♪

ただ、最近の僕はそんなできた人間ではないので、

あまり期待はせずにご覧ください笑

これからもどうぞよろしくおねがいします^^

4 ■初めましてです。

最初からここまで、一気に読ませていただきました。
堅苦しくない、引き込まれる文章で楽しく拝読させていただいております。

コメントは全て読み終えてからにしようと思ったのですが、親子ののさりげないやりとりに涙してしまい、コメントさせていただきました。
早く読み終わってしまっては、わくわくする気持ちが短くなってしまうので、今後は少しずつ、大切に、読ませて頂きます♪
お忙しいときもあるとは思いますが、お体には無理をせずに、勝手ながら更新を楽しみにしております★★★

3 ■>ろんさん&ゆいさん

コメントありがとうございます^^

>ろんさん
そういうことだったんです。
今思っても、本当に感謝で一杯です^^
父のような父親像が理想だなぁと、
当時もつくづく感じたのですが
照れくさいので本人には言いませんでした笑
子は親の背中を見て育つもんです☆

>ゆいさん
ありがとうございます^^
つたない文章ですが、父のあったかみを
書き記してみようと思った次第です^^
普段は適当な感じだったんですが、
このときばかりは本当に感謝しました^^;

これからもちょいちょいでてくる父に
ご期待ください^^

2 ■無題

すごく温い気持ちになりました☆感動しちゃった!!
ホント素敵なお父さんですね(*^_^*)

1 ■おっ、お父さん(;_;)

素敵なお父さん☆父の背中って、こうゆう事だったんですね。

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