◆弱みは埋めるもの、強みは伸ばすもの。


弱みを見せるのは恥ずかしい、と思う人がいるかもしれません。プライドが邪魔をして、弱みを見せられないという人もいるでしょう。そうした人の中には、弱みを隠して、秘かに直そうとする人がいます。しかし多くの人にとって、弱みを直している時間は多くありません。

 

 

自分の弱みを直した場合に、すごい成果が出せるような自分が想像できるでしょうか。弱みを直したところでマイナス100がせいぜいマイナス90になるくらいで、プラスマイナスゼロにすることすら至難の業です。ゼロになっても、強みが発揮できている人には並ぶことすらできません。弱みは、すぐに直すことができないからこそ、弱みなのです。
 

弱みを直すことに多くの時間をつかってしまうと、その分、自分の強みを発揮する時間が減ります。結果、成果は減ってしまいます。「弱みを埋める分だけ、強みが消える」という考え方です。
 

逆に弱みを直すことを思い切ってあきらめたら、どうなるか。強みを発揮する時間が増えますから、100の成果を105にすることもできるでしょうし、200や300にも伸ばす可能性すら生まれます。
 

自分がリーダーの場合、使命はチームとして成果を出すことです。成果から逆算して考えれば、自分の弱みを直すより、その分野は強みを持ったメンバーに任せたほうが明らかに得策です。
 

では、メンバーの弱みはどうするか。結論から言えば、メンバーに対しても弱みを直すより、強みに時間をかけるのが得策です。
 

「強みを発揮しているチーム」と、「弱みを直しているチーム」があるとします。「どちらのほうがより大きな業績をあげていると思いますか?」と聞かれたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか。業績だとどちらがわからないというかもしれません。では「どちらのほうがより『永続的に』大きな業績をあげていると思いますか?」もしくは「あなたが所属するとしたらどちらのほうが良いですか」と聞かれたらいかがでしょうか。
 

研修や勉強会などでこの問いを投げると「強みを発揮しているチーム」と答える方がぐんと増えてきます。なぜなら、強みを活かしたほうがそもそも本人も楽しいし、前向きに仕事に取り組めるため、一人ひとりに粘りが出ます。そうなると結果がより長い期間出やすくなります。強みを活かしたほうが、前向きさと粘りの点で成果が上振れするのです。
 

弱みは、会社経営の損益で言ってみれば赤字です。赤字を減少させたところで、利益にはなりません。マイナスを直す努力をしても、マイナスが変わらない。メンバーの弱みをマイナス100からマイナス90に、10改善できたとしても赤字は赤字です。その分、強みは10伸ばしても黒字は黒字。強みは黒字ですから利益が増えて、新しいものに再投資できることになるのです。
 

本当に成果を早く確実に出そうと考えるなら、「弱みを直すより、強みを伸ばす」。より強みを強化することを考えたほうが、成果の上振れを考えると明らかに得策です。
 

ただし、その弱みがお客様に迷惑をかけるような致命的なミスにつながるなど業績への悪影響が大きいなら、弱みを直すほうを優先しなければなりません。会社が立ちいかなくなる赤字はすぐに直さないと会社自体がつぶれてしまうことと同じです。基本的な技術や知識などはきちんと習得するのはもちろん大切ですが、能力面におけるメンバーの弱みを直すよりも、「いかに強みを発揮してもらうか」に注力したほうが成果につながります。
 

リーダーの中には、メンバーの強みを見つけるよりも、弱みを見つけるほうが得意な人がいます。人の課題は目につきやすく、よく見えるものです。そして、弱みを見つけると、それを直してあげたいという感情がわいてくることがあります。
 

これを私は、「謎の正義感」と呼んでいます。全体の成果を上げることを棚に上げて、目の前にあるメンバーや部下の弱みや課題を見つけた時に、「直してあげないといけない」と強い使命感に燃えてしまうことをいいます。しかし、そんな謎の正義感で弱みを直すところに時間をかけても、マイナスはマイナスのままであることがほとんどです。それならむしろ強みを活かすことのほうがはるかに重要なのです。「弱みを直すのは時間の無駄。強みを見つけて伸ばすほうが断然いいよ」。面談などで社員と相談に乗るときには、思い切って伝えている言葉ですが、この考えがあるとないとでは、自分の成長の向きが大きく変わっていきます。

 

マイナスを直すより、プラスを伸ばす人。
 

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強みを活かすプロジェクト

https://www.makuake.com/project/soyamansoyama/