水の中。

海外小説のレビューと、創作を。


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ヘロイン中毒の末に武装強盗を行い、オーストラリアの重警備刑務所から脱獄した男。
リンジーという偽名でボンベイに降り立った彼を待ち受けていたのは、愛と暴力と陰謀、そして戦争。
リン・シャンタラムとしての新たな人生だった。


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シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ

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いやー傑作ですね。

作者さんの実体験(スゴイな、このあらすじそのまんまの経歴……)がかなりの割合を占めてそーな物語で、圧倒的なリアリティとかそーゆー言い方がふさわしいのかもしれませんが、この物語の何がすごいって、インドのムチャクチャな魅力が実感できるところです。
もちろん世の中にはインドを舞台にした小説や旅行記がたくさんありまして、私にもそれらを読む機会が幾度となくあったわけですが、にもかかわらず! この国やそこに住む人々に魅力を感じたことって無かったのですよね。いや、いろいろな意味ですげー国だなーとか感心したりはしますよ。しかしこの物語ほど肯定的に「すばらしいな」「ここは心の国だな」と感じさせられたことはなかったです。これはスゴイ。 本作は「逃亡者の脱獄記」であり、「スラムで生きる隣人たちの人情物」、「マフィアの抗争ドラマ」、「アフガニスタン紛争地域での戦闘記」、あるいはつかめない恋の物語であったりもするのですが、結局のところ物語のキモはそこなのですよね。
そして他作品と何がそれほどちがうのかと言えば――主人公リンが旅行者でも移住者でもない、逃亡者であるから、なのかもしれません。
帰る場所を持つ外国人であれば、よその土地でこうも他人と繋がろうとはしないのではないかなー。そこらへんの覚悟の違いが想いの深さとなり、視点の違いとなって出ているのではないかと。



しかし結構な大長編でありながら、まったく冗長さを感じさせないところはすごいですね。主人公リンとカーデルが善がどーの生がどーのと、正直読んでいるこっちにはどーでもいい人生哲学禅問答がかなり長かったりするのですが、それにすら不要さを感じさせない(しかし飛ばして読んでもまったく構わないとは思う……)。
そうそう、主人公が心酔するマフィアのボス・カーデルについて、最初は犯罪者が善だの悪だのへりくつこねるの片腹いたいわとか思っていましたが、金の入手方法にはこだわらないが使い方にはこだわるとゆー生き方は結構スゴイ。頭のカタイ私ですら、ああそういうのならアリかもなーという気になりました。



そういえば本作はジョニー・デップ主演で映画化されるそうですが、自分のことブサイクと言っている主人公(男性主人公が自分の容姿を気にするのって珍しい気がする)リンを美形デップ様がおやりになるのですか……まあ大画面を長時間もたせるには美形に越したことないか。



ふだんはテーマテーマと「どういう結論を出すのか」という部分にうるさい読者である私でございますが、本作については物語としての大筋がどうこう言うよりも、細部こそが素晴らしいと思わされました。いやー、ほんとうに久々に幸せな読書体験でした!


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