ミネソタ州カールトン大学の構内で史学科のアルノ・ホルムストランド教授が殺害された。新米教授エミリーにとって憧れの世界的権威であるものの、個人的な交流は全く無かった人物。
「親愛なるエミリー きみがこの手紙を読んでいるいま、私はすでにこの世にいないだろう――」
ところが何故かその朝届いた手紙には、故人の切実な思いがつづられていたのだった。

 

 

失われた古代アレクサンドリア図書館がじつは失われていないもーん!という謎をめぐって世界中を駆け抜けるノンストップ冒険活劇。
解説の方も書いているように、確かにものすごくダ・ヴィンチ・コードを思い出させる本作ですが、ストーリーはもう少し堅実(トンデモ説とくになし)舞台選びがとてもよく(現在のアレクサンドリア図書館に行きたくなる。ドルマバフチェ宮殿も)、なんつーかしかしそう考えるとこの冒険譚は映画で観るのがいいんじゃないかと。このまま特に手を入れなくとも、まんま映画脚本になりそうな出来で、実際のところ読んでいて絶えずハリウッド映画的な映像が浮かんでくるほど。

ものすごくよく出来た物語なのですが、私が個人的に読書に求める楽しみとはやはり少々違うのだろうな、と思いました。
本作に物申すのはお門違いであるかと思いますが、私はやはり自分とは違う人生を追体験したいので、もう少し掘り下げてくれないとそこまで到達しないというか掘り下げなくても「おお!」と思わせる新理屈がほしいというか、そうでなくともこれが言いたいんだぜ! という強い思いとか。それってどのようなものなのかと言うと、えーと、物語にひそむあまり見つからない宝石みたいなものなのですよ。本作にはそれが見つからなかった。


あとエミリーがウェクスラー教授のところで出会うカイル、カイルの消え方が最初からいなかったみたいな扱いで物凄く気になりました。

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「幻肢」島田荘司

病院で目覚めた糸永遥はすべての記憶を失っていた。

医学生であったという自分の名前も駆けつけてくれた友人のことも分からない。記憶にあるのは雅人、雅人はいったいどうなったのだろう――?

 

 

 

私はおそらく島田ファンなのですが、どこがどう良いかと思っているかというと説明が難しく、島田せんせーの物語を通しての啓蒙とでも言いますか、物語性以外のテーマ提示はとても面白いし素敵だなーと毎回思っています。物語の楽しみ方というのは、じつはいろいろありまして、おおまかにみっつに分けるとしたら、関係性の追体験、ストーリーに翻弄されること、あとは新たな知識との出会いだったりします。今回のメインは最後の、新たな知識との出会いというやつになるのでしょうか。それでも物語形式で体験すると、少々見え方が違ってくるので、有益であるなと思います。

 

私自身は鬱に対してあまりと言いますか、実はぜんぜん理解のある人間ではないと思うのですが、今回は物語という形で主人公である遥の恐怖を追体験することで「なるほどなー」「扁桃体がうまくいってないとこんななのか」「そりゃイヤだわ外でたくないわー」と素直に感じることができました。

しかしおそらくメインテーマであるはずの「失った大事な人のゴーストを見たい」というのはなー、ちょっとなんていうかダメだろとしか思わない。

だってさー、やはりその体験に依存してしまう気がするし、人によっては自分の心に折り合いがつけられなくなるんじゃないかと。実物ではないと分かっているその人に会うのはむしろつらいことではないのか。幻でも会いたいのだろうけれど、やはり幻を見るのはつらい。

 

それはさておき、本作は意外な展開が待っているのですが、私が意外と思ったのはむしろラストのところ(雅人の声がしたり)で、最後の最後まで、結末はホラー的なおっかないエンドであろうと思っていたのですよ。いや思うでしょ。

 

それが……!!

 

それがまさかこのような結末になろうとは、ホラーエンドより数万倍こわい。彼女のセリフとか死ぬほどこわい。実際のところ、私がホラー的な結末を求めていたのは、このハッピーエンドが心底こわくて納得がいかなかったからなのだろうと思うのですが。

いやーそれにしてもねーわ。私この人とやり直すのなんか絶対無理だわ。

 

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フットボールの試合で受けた脳の損傷により、エイモス・デッカーは人生のすべてを失った。ようやく手に入れたはずの刑事としての生活の中で、妻と娘が何者かに惨殺される。
再びすべてを失い、その日暮らしの探偵として生きる彼に、殺人犯から仕掛けられた罠とその犯行の真意とは?

 

 

 

えーとですね、大人になるにつれてなんつーかこう、他人に厳しく物を言うことがなくなっていくような気がする今日このごろです。
だってさー、自分の身の程を思うと、他人様のつくる物語が自分ごのみに完璧でなかったところで、何をブーブー文句をたれなくてはならないのか?
それって美しくねえよな、と。
そういうわけでそのような思想からくる(たぶん)感想です。

 

この物語、あーなるほどエイモスの造形はとても魅力的で、なまじのハードボイルド主人公よりもハードボイルドな反応しかできないはずの彼なのですが、この「情緒的な部分が破壊された脳」を持つはずの主人公が、クライマックスで真犯人へ放つ言葉の、ものすごい違和感。

いえ、すんごい良いせりふなのですよ。読み手としてのカタルシスがあるだけでなく、物語上のご都合主義が垣間見える犯人のむりやりじゃね?な動機にさえ、なんとなく説得力を与えてしまう、クライマックスのこの叫び、とても良い内容なのです。


いやしかし待て、だけどそういうのはさー、この人の脳からひねりだせる感覚ではないはずじゃないか?
なんかヘンじゃないか?

 

こういった異能キャラクターの輪郭をきっちり描写することは難しく(日常行動までウォッチできる対象はなかなかいませんしね)、
だからこそこの部分こそが創作の腕の見せ所なんだろうなという気がするのですが。
そこが上手くいっていないように見えるのは、もしかしたら私自身がこの系統の人とかかわりを持ったことがある人間だからなのかもしれません。
現実には全体像や行動様式がつかみにくく、説明が立てにくい。同じ行動をするかもしれないし、しないかもしれないし、そのことへの理屈もついたりつかなかったりするはずの、その揺らぎが上手く表現されていないので、なんだかキャラクターが嘘くさい。フィクションだからこそ、もうちょっと信じさせてほしいのにー!、という不満が残ってしまいました。


本作には続編があるようですが、シリーズ化するとしても、この物語の魅力もダメなところも全て、エイモスという主人公の造形によるところが大きいので、その描写しだいでどうにでもなるのだろうなという気がします。
ちなみに私は物語終盤まで、記者の女性があやしいなーコイツなんじゃねーのと思いつづけていました(考えすぎ)。

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死ぬはずであったウィリアム・サンドベリは、どことも知れない古城に閉じ込められていた。
押し付けられた仕事は、暗号コードを解読すること――ではなく、法則を見つけて再暗号化が可能なキーを発見すること。ソースは無線なのか電子ファイルなのか、再コーディングする必要が何故あるのか、何ひとつ情報を与えられぬまま謎と向き合うウィリアムに浮かんだ疑問。――このコードは、なぜ四進法を使っているのだろうか? 


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【ネタバレではないですが、これから読む方の楽しみを奪ってしまう部分があるかもしれませんので、読後の方のみお願いします!】


力作SFです。プロフィールによると、作者さんはスウェーデン版劇団ひとりさんみたいな人物(←てきとうすぎねえか……)だそうですが、
魅力的な人物造形と圧倒的なリーダビリティに各誌の絶賛レビューが並び、
本書の帯にも「ダヴィンチ・コード」+「アンドロメダ病原体」+「ジャッカルの日」!! 的なことが書かれていますし、
わたくしの個人的な感触としても、スティーブン・キング+クライトン的な面白さでした。
いやとても面白かったのです。

しかし読後にとても暗い気持になり、なおかつ読後感のためだけではない、モヤモヤしたものが残りました。
とてもよく出来た構成で、読書中のワクワク感だけでも大変な傑作だと思います。思います。思いますけど、私とても今すごく文句が言いたい。(カタコトか)

まずこのお話、三人称で視点もバラバラというか視点人物が一定していない、いわゆる神視点な小説ですけども、こう、登場の順番と比率により、どうしてもウィリアムを主人公として認識してしまうし、ウィリアムに感情移入してしまうわけですよ。
50代のウィリアムからさー、ちょっと奪いすぎじゃーないすか。ひどくないですか。最後すこし前向き風に終わらせているけどさ、いや言いたいことは分かるけど、その試練を与えるにはちっと高年齢すぎないか? ウィリアムだって数年は過去の負の連鎖から逃れ、おだやかに生活するかもしれませんよ。でも手元に残ったものが無さ過ぎて、いずれまた自殺しちゃうんじゃーないの? つまり何が言いたいかというと、主人公に救いが無さすぎる。ありきたりなハッピーエンドを選ばなかったことで現実の厳しさがプラスされて物語全体のリアリティーを増しているのかもしれませんが、それでもやはり読後感が悪すぎる。同じ境遇で協力しあっていたジャニーンという女性が恋人と再会してラブラブハッピーエンドなのを見せられてしまうと、ウィリアムの視点になっている自分、なおさらツライ。

そして本作の謎自体もなー、暗号があるのはいいと思うのです。それがシュメール語の前段階的な言語であるのも、いまどきの超古代史観と辻褄も合うし、いいと思います。
手前のとこまではいいのですが、オチがいまひとつ。
暗号の正体がメッセージなのかプログラムなのか、私という読者には最後までよく分かりませんでした。
どうやら作者さんはプログラムとして扱っているようなのですが、それだと矛盾が多すぎないか? だってさー、人類だけに発現する内容ならそこに書いておけばいいかもしれませんが、災害や政治的事件まで操作することは不可能だし、そもそも操作できないなら、そこに書く理由がない。なので暗号はプログラムではなく、ただのシナリオ、またはメッセージとするほうが矛盾もなく理解しやすいのですが、そういう物語にはなっていないので、辻褄の合わない部分にとてもモヤモヤします。
そして「何者が暗号を作成したのか」という大前提について、明確な回答を出してみせる必要はないかもしれませんが、「存在するんだからいーじゃん」のようなウィリアムのセリフで終わらせるのは安易すぎないか。

本作の謎の決着にも、ややモヤモヤします。えっ、そんな結論?
言われてみると、確かに「アンドロメダ病原体」ぽい結末なのです。真似ていると言いたいわけでも、ウィルス物という類似性について語りたいわけでもなく、ああいう「解決しない解決」なのです。しかしこれ、本作の場合には「めでたしめでたし」とはちょっと思いにくい。ウィリアムは「解決できなくてもしょーがない、自分がやるべきことは他にある!(キリッ)」と駆け出して行くわけですが、ええー、私いままで人類の危機を救う話を読んでいたつもりだったのに、いつのまにか救えないしょーがない話になっていたよビックリ!!!

……というような、二つばかり文句を言うつもりが、気がつくと三つになっておりました。
文句ばかりたれていますが、ここ数年、すっかり物語を読む気力を失っていた自分が最後まで読まされてしまったほどの作品です。設定や構成だけでなく、文章の情報量の詰め込み方とか章の終わりの倒置法っぽいところとか、つねに細かなヒキがあり、読者を飽きさせない技量のある作家さんであると思われます。
ものすごくモヤモヤしますが、ものすごく面白かったです。


侵略により荒廃し、人類の住めなくなった地球――採水プラントを監視するドローンのメンテナンスの為に残されたジャックは、過去の全ての記憶を消され、相棒とふたりでこの任務についていた。任務交替をひかえたある日、未確認飛行物体が落下してくるのだが……。

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えー、すごく分かりやすく言うと、トロン風味のアルマゲドン映画というか~
と思っていたら、この監督さんてトロン(レガシー)のひとだったのか! ああー、あれよりこっちのほうが断然お話があるあるあるよ!!←ほめてる


1ディストピア系だまされ主人公の覚醒
2自分と自分対決
3侵略者との戦い


みたいなそれぞれの要素がわりとのんびりつながっているので、物語的にはちっともおかしくないし結構いい話なのですが、
「なげーよ……」
と上映中に3回くらいは思いました。特に主人公の置かれている状況(人類のために仕事をしているはずなのだが、なんかヘン)については観客にはバレバレであるし、もーちょっとサクサク進めていただきたかったです。
そしてモーガン・フリーマンは出てきたとたんに「モーガン・フリーマンキター!!」としか思えない悲しさ……なんかどうやっても「その物語の中のひと」という気がしてこない、有りすぎな存在感なのですね。


そんなこんなでテーマ的に目新しいものは何もなかったりするのですが、荒廃した地球を駆け抜ける疾走感を味わえる、劇場向きの作品です。SF作品としてどうこう言うよりも、「トム・クルーズ主演最新作!」みたいなノリで観るのが正解かも。
(このお話の場合、主演に華が無いと画面が保たないよなー、50代であの役できるトム・クルーズってスゴイと思う…… )

西暦2080年、人口の爆発的な増加により、世界は失業者にあふれていた。
政府直轄の寮庫で数千万の冷凍民が眠り、空には娼館衛星が飛び、中絶が推奨される、モラルのない社会――
有色人種で初めてアメリカ大統領候補となったブリスキンは、これら全ての問題を解決する「新たなる植民地」の情報を手に入れるのだが、そこは空間の裂け目の向こうの世界であった。


空間亀裂 (創元SF文庫)/東京創元社
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いままで邦訳されていなかった、ディック中期の長編である本作のあらすじ。どこからどう見てもSFではあるのですが、しかし。

「発見された新たな空間」が、じつは別世界の○○であった。

とりあえず伏字にしてみましたが、ここは別になー、この物語のキモではないのですよね。SFともなれば、本来はこの謎の種明かしと、これにまつわるバラドックスが主題となるべきはずなのですが、本作にとっては全く重要な扱いではないのですよね。同じ設定をホーガンに与えたとしたら、全然ちがう物語ができそうだなーと思います。

ではこの物語で語られていることは何なのかとゆーと、「ハッピーエンドで終わる人生なんてないよね」「次の問題がつぎつぎ降りかかってくるわけだしね」という、ひじょーに現実的なお話なのですよね。いやちょっと驚いた……一番の見せ場が、政治的な交渉場面なんだものなー。

SF的カタルシスは殆どありませんが、ある意味では物凄くリアリティのある、とってもオトナの物語でした。
登場人物のひとりであるハドリーが語る「夢や希望を諦めることはできる、でもその後の虚無感は巨大で、しかも日に日に大きくなっていく」という感慨は、ホントそういうもんだよねーと思わされました……。

あけまして!

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おめでとうござりますー!! すー!!(セルフこだま)


だいぶ更新の停止しておりますココですが、実際のとこ読書とかしてねえ……。

時間が無いというよりも、心の余裕がないのでしょうね。


でも年末は新幹線で読みました! ダンナが「おまえ可哀想だから(具体的にどのへんが?)、好きな本を買ってあげよう」と、リーダーストアで購入してくれた半村良の「魔境殺神事件」と「異邦人」を。

半村良作品、多作なこともあり、わたしの残念な脳みそにより何回も「石の血脈」と「産霊山秘録」を購入してしまっているためか、意外と未読の作品あるのですね……。

魔境殺神事件 (新潮文庫)/新潮社
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↑この作品、主人公の松田の語りのハードボイルドぶりが……なんだろう、プッと笑ってしまいそうなのはすでに時代が違うことによる常識の陳腐化なのか。それにしてもすごい既視感があるなー、誰と似てる気がするんだろ始末屋ジャックとか? まあ異能力者を主人公とする一人称は、どうしてもこのような感じになってしまうものかもしれません。これからというところの結末をすべて後日談にしてしまうとゆーおわりっぷりが意外ですごかったです。



そうだ、そういえば「書き上げたー!」とかエラそうに言っていた年賀状ですが、数枚戻ってきております。

何故?!

去年したはずでしょ住所変更……と白目をむいていると、

「おまえ、古いバージョンの住所録を残してないか?」

と、ダンナに指摘されました。

えー、この時期しか使わないし年賀状用のソフト変えたりしているし、もうどれがどれだか……最近になって転居した方のぶんは手書き対応しているから大丈夫として、ここ二年分くらいのをどうやら失っているような……?

毎度毎度ありえない失礼をしでかして、自分のあほうぶりに絶望する年始でございました。ああどうしよう、いまさらえーとどうしたら……。




いろいろレビュー・秋

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ごぶさたしております。突然ですが、短い感想などをいろいろ。

まずは完結したこちらから。


●「秘密―トップシークレット」12巻(清水玲子)


「第九」のセキュリティーを破り、国家機密扱いのレベル5のデータを強奪して逃走した被疑者。
その被疑者とは「第九」室長・蒔警視正――一連の不可解な行動は本当に犯罪なのか?


秘密 -トップ・シークレット- 12 (ジェッツコミックス)/白泉社
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いやービックリした! 予想もしない結末でした。
蒔さん×青木×雪子せんせーの三角関係に、「蒔さんが変わってくれなきゃダメだ」的なことを言っていた自分ですが、えーと、今もその意見はそのまんまであるわけですが。
わたくしそもそもがガチガチの成長物語信者なので、「登場人物が正しい成長の果てに答えを出す」みたいなのを「あるべき姿」だと思っているのですよね。まあ現実には、成長なんてものはてんでしなかったり、成長したと思ったらアレレ~と後戻りしてみたり、そもそも成長ってそんなエラくて素晴らしいもんなのか? などという疑問もありまして、実人生においてそうそう単純な問題ではないのは分かっているつもりなのですが、だからこそ物語では読みたいわけですよ、すっきりさわやか正統派ビルドゥングスロマンてやつを!
しかし本作の結末はですね……ううーむ構造的にはアッチなんですよね。いやアッチってソッチではなくて、つまりですね、「孤独な登場人物が、愛されて受け入れられて救われる」とゆー! アレですよ例の白馬の王子様神話ですよ!!
これはなー、低年齢層向けの少女マンガとかボーイズラブとかハーレクインなんかの黄金パターンで、読み手にとっては、すっごい癒しのある展開なのですよね……。分かっていて楽しむものならいいのですが、これが現実だと思いこむのは大変ヤバイ! その信仰ヤバイ! わけですよ。だから私としましては、そーゆー物語に「あんまりウソつくなよ!」という嫌悪感があったりするのですが……。
しかしですね、今回のこの、青木が蒔さんを選ぶ、という結末については、「これでいいんじゃないの」と思ってしまいました。
なんでだ。
思うに、あまりにも長い間、蒔さんとゆー人物の孤独で孤独で孤独な生きざまをを見せ付けられ続けてきたもので、読者として疲弊してしまっていたのかもしれません。

いや……もういいだろ、蒔さんが幸せなら、雪子センセーは独力で幸せをつかめそう(なんかこう書くと不公平だけど……)だしさ、という。
こんな正反対の思想を持つ読者さえねじ伏せてしまう作者さんの豪腕……「家族」を持ち出すあたりも上手いですね。ある種の人間にとってはさー、家族的な愛は情熱的な恋より攻撃力があるんだよなー。
それにしてもこの結末には良い意味で意表をつかれました。もっとしょーもない終わり方だろうと、あなどっておりました。
「秘密」という、シリーズを通して悲惨なイメージしか持てなかった脳を覗き見るテーマについても、とても優しい結論が出ていて素晴らしかったです。
失くしても失くしても、いつのまにか出来てしまう大切なもの。本当にそうであったらいいのになあ……。



●「GANTZ」35巻(奥浩哉)


混乱を極める宇宙船内。空間圧縮施設の破壊まであと一歩というところに迫る西を、「他の道もあるはずだ」と玄野は制止するのだが――

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いつの間に異星人側が「私達をほろぼさないで!」とか言いはじめている最近の展開。
つーかアナタたちが侵略してきたんじゃないですか。なに言ってだよ人間ポリポリ食ってたじゃんよ!!

というのはさておき、この異星人の襲来に、なんとなくガンツの謎がとけたような気になっていましたが、よくよく考えたら何も分かってないのですよね。
だってさー、うーん、今までのミッションて、この侵略に対抗するための訓練だったのか?
それにしてはさー、死人をデータからよみがえらせたり、○○星人とか出しちゃったり、とうてい地球上のテクノロジーとは思えないGANTZミッションのアレコレなわけですよ。なんか納得いかないわけですよ。そんなん人類が独力で出来ること???
そんなこんなで、実際のところ何も謎がとけていない気がしますので、今後の展開を待っております。
そういえば私の大好きなレイカさんが前の巻(だったかその前だったか……)でお亡くなりになっていますが、なんだろう、あまり悲しくなかったのは玄野の悲しみかたがおおげさにキモかったから……? ←ひどすぎる……でも玄野ときどきそーゆーとこあるよね……




●悪の教典(貴志祐介)

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リーダーストアでデジタル配信されていたのを購入しました!
サイコパスな教師が徐々に日常から逸脱していき……みたいなお話なのですが。蓮見せんせーがおおざっぱすぎて萎える。行き当たりばったりの悪がショボすぎる。だいたいあの女生徒がふたりの関係をヒミツにできるわけないと二秒考えりゃ分かるだろ。
そしてあのオマケみたいなダジャレ話は入れないほうがよかったと思う……(なにあれホントに)


●「メガロマニア」(恩田陸)

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恩田陸×NHKの中南米、古代遺跡めぐりの旅。
うわー、すごいとこたくさん行ってますね! 伝奇ファンにはたまらないですねー!
と言いたいところなのですが、本書から伝わってくるのは何故だか「旅の大変さ」ばかりで、どうもあまりワクワクしない……作者さんはそういえば飛行機恐怖症だったよなー。最初のあたりを読んでも、よろこんで引き受けた企画ではなさそうだし。まるで西原さんがアマゾンへ行かされたアレみたいな感じです。「くつがえされた宝石」というのも個人的にあまりピンとこない。あれってそーゆー意味でつかわれた言葉ではないはずだけど、表現だけ借りるのもなー。いくらでもご自分で新しい表現ができるだろうに。


以前に読んだことのあるビール飲んだくれな旅のほうが楽しそうだった……。


.
ではまた!


巨峰事件。

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どうもこんばんは、わたくしです。



水の中。-やしのき


昨夜おそくに実家の母から電話がありまして、伯父が亡くなったとのこと。
「お通夜が明後日でね、○○会館で17時からなんだけど、行ける?」
と尋ねる母に、
「なんとかして時間つくって行く……」
と答えておいたのですが。



何故だか今日になって携帯電話にやたらと着信履歴があるではないですか。
ああそうか、「○○会館」なんてものが存在しないことに気づいたのか? などと思っていたら(いや元々信用してなかったけど、まさか本当にウソを教えられるとは……)、私が甘かった。


「あー、よかったわー電話に出てくれて! 昨日言い忘れちゃったんだけど、葡萄を送ったから食べてね!」
「は? ぶどうって?」
「○ちゃん(←父の呼び名)と葡萄園に行って来たのよねー! 美味しかったから、そこの巨峰をクール便で送っといたの、よろしくね!」


待て。


「えっ、早く帰れないし、受け取れないけど」
「だってマンションでしょ?」


マンションの……マンションの宅配ボックスにクール便をつっこむ宅配業者がいたら誰か教えてくれ。


「ええー、ダメなの? 水曜日くらい早く帰れないの?」
水曜日くらいも早く帰れないのは明日の通夜に出なきゃならんからなんですけど!! 
忙しさとあいまって、額の血管がちょっぴりピクピクしてしまいましたが、すでに送られてしまったものにアレコレ言っても始まりません。
そんなこんなで出来るだけ急いで帰宅したのですが、再配送可能な時間は過ぎており……



と・こ・ろ・が。

宅配便のドライバーさんから電話がありまして、
「○○運輸です。あのー、再配送の希望を入力していただいたようなのですが、葡萄ですし、土曜日では傷むのでは……」
「そ、そうですよね。そうなんですけど、でも明日はお通夜で明後日は名古屋に出張で、どうしても家にいられなくて!」
赤の他人相手に、もはや挙動不審レベルのこまかい言い訳をする、追い詰められたわたくし。ところがですよ。


「そうですか……、それでは、まだ近くにおりますので、今からお届けします」
「えええー!!」


なにこの人、天使じゃないの?!


……というわけで、無事に巨峰が届きました。指定時間をとっくに過ぎていたのに本当に本当にすみません。ウチの親にはもう二度と平日にクール便を利用させませんすみません。ちなみに巨峰はおいしかったです。 ←いま食べた

スピン膜に閉じ込められ、周囲の時間の流れに取り残された地球――太陽が滅ぶ直前で時間封鎖から解放された現在も、この現象を引き起こした超越的存在「仮定体」は謎のまま。

テキサス州立医療保護センターの医師サンドラは、保護された少年オーリン・メイザーと出会う。彼は自分が書いたという不思議なノートを所持しており、そこに書かれていたのは一万年後の未来世界、タークと名乗る人物の手記だった――


連環宇宙 (創元SF文庫)/東京創元社
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というわけで、時間封鎖(SPIN)、無限記憶(AXIS)と来まして本作の連環宇宙(VORTEX)、スピン三部作の完結編でございます。えーとしかし時系列的には一作目と二作目の中間に位置しておりまして、なんでまた後戻りしてんの? と思いながらも、少年オーリン・メイザーの手記を通して一万年後の超未来を知ることになるのですが……。



前二作においては、

仮定体とは何者か?
その目的とは?

という謎がまず根底にあってのドラマが展開されていたわけですが、完結編である本作では、最初からなんとなく「あー、そういうモノか仮定体って……」というように仮定体の正体が明かされ気味な描写であるので、結末あたりのアレックスの告白による「仮定体って実はこーゆーモノ!」という種明かしに驚くことができませんでした。そこが少々心のこりというか、まあ作者さんが本作で書きたいのは後半のテーマであって仮定体の正体とかどーでもいいのは分かりますけども、やはり「わー、ビックリ!」とかしたかったのです読者としては……。


しかしなー、そういうわけで「仮定体の正体」には驚かなかったものの、あれだけ巨大な謎であったはずの仮定体の行動が、実はただのルーティンというか、成熟した文明に対してはいつもどこでもやっているフツーのふるまいであるというのが、ビックリを超える脱力感をもたらしますね。忘れかけていたとはいえ、うっすら覚えている(←うっすらとか言う人が書く感想……)前二作での全世界規模での大騒ぎを思うとさー、世界も人生も変わっちゃってさー、あんなに人が死んでさー、うわーあの人達かわいそうじゃんか! なんじゃそら責任とれよ!(誰が)みたいな。



それにしても前二作を読了したとゆー体験すべてをリセットしてしまうような、不思議な完結編でした。

二作目のAXISは「仮定体ってなんぞや?」が強すぎるのでアレですが、一作目とこの三作目に関しては、ひとつの物語として成立しているように思われます(私なんかタークのことよく覚えてなかったしさ……だって二作目って父親さがしの女の人のほうが主役っぽくなかったっけ。いや自信ないけど……)。



本作は超越的存在である「仮定体」の謎を解き明かす物語にはなりませんでしたが、時間の果ての果てまでを体験することができる、SFらしいカタルシスのあるお話でございました。
あたたかいラストではあるのですが、しかしそれとは関係なく「まあ最終的には宇宙とか全なくなるんだしなー、目先のことに大騒ぎしてもしょーがないか」という、良いのか悪いのかよく分からん無常観が芽生えます。

あくせく走り回るせわしない日常が、空しくなるような、気がらくになるような……。



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