2010-08-30 22:12:47

・為替操作

テーマ:為替、株式、その他

・為替操作

新聞報道によると、

「菅首相は28日、日銀に追加的な緩和策を求める談話を行ったことに加え、企業の国内投資を促進させる総合計画『日本国内投資促進プログラム』を10月にも取りまとめるよう、直嶋正行経済産業相ら関係閣僚に指示した。

また、野田財務相は28日、円高について市場動向を重大な関心をもってみているとし『必要な時には断固たる措置をとる』と述べた。


日本銀行は30日午前、臨時の金融政策決定会合を開き、追加の金融緩和を決めた。昨年12月に導入した新しい資金供給手段(新型オペ)の規模を現在の20兆円から30兆円に増やすとともに、上積み分の貸出期間を従来の3カ月から6カ月に延ばした。円高や株安が消費者や企業の心理を冷やし、景気回復のシナリオが崩れる恐れが高まったと判断した。

追加緩和は今年3月以来、臨時会合を開いての緩和はドバイ・ショック直後の昨年12月以来だ。政策金利の誘導目標は、全員一致で年0.1%に据え置いた」



ところで、今の日本景気が「直面している危機」とは何だろうか? デフレ? 株安? 円高? 企業収益? 雇用? 債務問題?

他にもあるだろうが、これらのすべてがお互いに関連し合って、危機の度合いを強めているように思える。そして、政府や日銀が対策として考えていることは、政府も(10月以降から?)支援するから、企業に一所懸命に頑張って貰いたいということだ。

そして、その支援とは、バブル崩壊後の約20年前に始め、15年前にはすでに限界的となっている金融緩和を、上記のコメントのように量や期間を気持ちだけ伸ばす程度のことだ。


そこで、企業が国内投資に頑張ってくれ、雇用を増やし、需給ギャップを拡げて、輸出を増やしてくれたら、貿易黒字が更に拡大し、円高になり、輸入物価が下がってデフレが進行する。

あれっ? 政府・日銀はいったい何をしたいのだろう?


今の日本が「直面している危機は円高」だろう。ならば、ストレートに円高対策を取ればいい。そうすれば、株価も、企業収益も、デフレも、あわよくば、他の諸問題も解決への方向に向うかもしれない。少なくとも、円高と株安は止まるだろう。


海外のメディアなどでは「Japan's Paradox: Strong Currency, Weak Economy」などと、強い通貨と弱い経済が並び立つ矛盾(Paradox)を挙げているが、経常黒字が積み上がると、通貨が強くなるのは当然だ。(参照:タペストリー第1理論


つまり、日本は輸出が強過ぎるか、国内消費が弱過ぎるか、何らかの理由で海外のものが十分に買われないか、おそらくそれらのすべてが絡み合って、結果的に経常黒字の累積が世界経済を乱すほどに不均衡となっている。


異常な規模(累積で3百数十兆円)の経常黒字国は、黒字を還流させる義務があるのだ。つまり、滞留している円を外貨に戻さねばならない。その義務を遂行する最も単純かつ効果的な方法は、外貨準備を積み上げることだ。外貨買い介入をすればいいのだ。


政府・日銀は、世界経済を歪めている異常な規模の経常黒字を還流させるという、大義名分を持って、円高・株安対策に代えることができる。そして、円安、日本株高は、世界の株価も押し上げる可能性が高い。

「為替操作」はいけないなどという妄言で、主権国の政策を見失ってはならない。そもそも、どの国にも通貨政策がある。ユーロなどは、域内固定為替制度という、集団での為替操作を行っているではないか?



ここに、円高進行中の1995年4月に、どうすれば円高が止まるのかを、思いつくままに24の方法を掲げ、その1つ1つに、これは効果的、これでは全く意味がない、これは効果的だが弊害が大きいなどと解説した拙著がある。



円高を止める方法、活かす方法・矢口新・東洋経済新報社・1995年


第I部 円高を止める二四の方法

1、輸出企業のコストをドル建てにする

2、輸出を円建てにする

3、輸出企業の海外設備投資に税制などで優遇措置を与える

4、輸入障壁を取り除き、輸入促進を積極的に推し進める

5、政府の調達品は輸入品を優先し、公共投資の発注先も外国企業を優先する

6、本邦旅行者の海外での購入品に対して、原則無税とする

7、テレビのチャンネルを一つ米国に開放し、二四時間米国製品のテレビショッピング番組を放映する

8、輸出課徴金、輸入割当てなどの経常収支バランス政策を実施する

9、本邦投資家の対外証券投資を奨励し、為替ヘッジを手控えるよう行政指導する

10、対外不動産投資を低利によって奨励し、不良資産化した場合も追貸しを黙認し、業務を継続させる

11、海外投資家に対し日本の問題点を強調し対内投資をしにくくさせる

12、円金利、日本株配当をさらに低く抑え込み、円投資の魅力を少なくする

13、金融緩和を行う

14、財政政策を実施する

15、政府開発援助(ODA)を急増させる

16、期限が迫っている外国政府等の円借款に対し、特別の配慮をもって臨む

17、円建て外債および新規の円借款の為替ヘッジはなるたけ避けるように依頼し、為替差損に対しては特別配慮の含みをもたせる

18、外国政府の外貨準備に円を加えないように依頼する

19、年間一三○○億ドルの経常黒字に見合うだけの額の円売り介入を行う

20、固定相場制に戻す

21、円をアジアの基軸通貨に、為替バンドを導入する

22、米ドルを日本の通貨にする

23、官僚、政治家の給与をドル建てにする

24、投機資金を取り締まる


円高を止める方法、活かす方法」:電子書籍版
発行者名: 矢口新 価格: 630円(税込) PDF サイズ: 17.1MB


円高を、ディーラーの立場で考えたのが、矢口新著「円高を止める方法、活かす方法」(東洋経済新報社)。榊原英資大蔵省国際金融局長の円高是正策を彷彿(ほうふつ)させるアイデアが多く含まれているのが興味深い。(1995年10月日本経済新聞社SundayNikkei時の本「円・ドルの世紀末を読む」より)



1つ1つの解説は拙著に譲るとして、長く私の書いたものを読んでいてくれている人には、ほとんどの方法の、効果、非効果が、一見して分かるだろう。

実際の資金の流れを伴うもの、外貨買いに繋がるものが効果的なのだ。

その意味では、為替介入による外貨準備高の増大は間違いなく効果がある。特に、現状のように、円ロング・外貨ショートが積み上がっている時には、即効果だろう。

私には15年ぶりの円高、年初来の株安というのは「必要な時には断固たる措置をとる」に値する時期だと思うのだが、犠牲者が出るまでは動かないのだろうか?



金曜日に、バーナンキ米連銀議長は、景気が腰折れするようなら「できることはすべてする。the U.S. central bank will do all that it can」と明言した。


日本の政府が動かないのは、危機を危機と認識していないためかも知れない。あるいは、認識していても、何をしていいかが分からないということもある。

何事でも、どんな場合にでも賛否両論はあるものだが、理論武装して、常にリスクを取って判断する癖をつけておかないと、危機に気付いても、どうしていいか分からないものだ。

出合頭に叩いておかないと、甘く見られると、付け込まれるものなのだ。円高、株安、デフレを止めたいのなら、15年ぶりの円高という機会を捉えていれば、少ない金額でも効果があったのだ。


政府・日銀が動かなければ、円買いの大波はもう一度やってくる。その時も「必要な時には断固たる措置をとる」などという言葉だけや、量的緩和の延長ぐらいでは、日本は何もしない、何もできないと見透かされるのと同じだ。

リスクを取って判断する気がないのなら、やる気のある者に、行政権を渡すべきではないだろうか?



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コメント

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1 ■無題

こんにちは。
いつも大変的を得たタイムリーな記事に頷かされております。今後も楽しく拝読させていただきたいと思います。

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