野村證券金融経済研究所資料
【2008年度収益予想の概要】
① NOMURA400は27.5%経常減益、NOMURA400(除く金融)では0.1%増収、25.4%経常減益。前回9月時点では、NOMURA400が3.0%経常減益、NOMURA400(除く金融)で6.0%経常減益の予想で、大幅な下方修正。これだけの規模の下方修正は、ITバブル崩壊時の2001年12月以来。我が国の企業収益は2007年10~12月期より下方修正局面入りしたが、今回で5四半期連続での下方修正。5四半期以上連続で下方修正となるのもやはり2001年度のITバブル崩壊以来。
② 今回の業績見直しは3月決算企業の第2四半期(7~9月期)決算の発表を受けて行った。NOMURA400(除く金融)の2008年7~9月期の経常利益は前年同期比23.1%減益、2008年1~3月期より3四半期連続での減益、減益率も一挙に拡大。2008年4~6月期までは業績の悪化は主に円高と原油高に伴うコスト増によるもの、2008年7~9月期にはこれに世界経済減速に伴う数量減が加わり大きく業績が落ち込む結果。2008年度下期は原油価格急落によりコスト増の圧力は弱まるものの、生産数量の減少はむしろ加速することが見込まれる。これまでのところ企業は事業環境の激変に対応して、早めの減産による在庫圧縮や、設備投資や販管費の抑制など機敏に対応しているものの、外部環境の厳しさは企業努力の及ぶ範囲を越えており、大幅な減益は避けられそうに無い。
【2009年度収益予想の概要】
① 2009年度は、NOMURA400(除く金融)で2.3%減収、0.5%経常増益を予想。前回2008年9月時点比で、増収率は6.8%ポイント、経常増益率は15.3%ポイントの大幅な下方修正。通例、来期まで時間の猶予があるこの時期にこれだけの規模で来期予想利益が修正されることは稀で、いかにここ3ヶ月間の景況感の悪化が激しかったかが窺われる。
② 経常増益率で15.3%ポイントの下方修正は、2008年度予想経常増益率の19.4%ポイントの下方修正に比較して修正の規模が小ぶりであったかのように映るが、実額ベースでは2008年度予想よりも2009年度予想の方が下方修正額が大きかった。実際、NOMURA400(除く金融)の2009年度の経常利益実額は9月時点予想比で31%下方修正され、3ヶ月間の下方修正率としては、(記録の存在する)過去30年間で最大となった。
③ 2009年度は世界経済の停滞が続くことによる数量の減少に加え、資源価格下落が物価下落に結びつきデフレ圧力の強まりが見込まれることから、2008年度に引き続き収益環境は厳しい状態。なお、足元の鉱工業生産などの景気指標や為替レートは、今回予想に際して使用した前提よりも業績に対して厳しい水準/方向性で推移。仮にこうした傾向が2009年度も続いた場合、業績予想が更に下方修正され、結果的に2期連続の減益に陥るリスクには留意したい。
過去の業績悪化局面との比較
(1) 2008年度は2001年度以来、7期ぶりの経常減益が予想。また2009年度も現時点では増益予想ではあるものの、景気指標の悪化を踏まえると2期連続減益となる可能性も否定できない状況。
(2) 1970年度以降で比較的大幅な業績後退が見られたのは、①1973~1975年度の第一次オイルショック後、②1989~1993年度の資産バブル後、③1996~1998年度のアジア/ロシア危機後、④2000~2001年度のITバブル後、の4回。このうち1996~1998年度と2000~2001年度の業績悪化度合いが顕著に大きい点が特筆。これは企業が構造調整(資産リストラ)に踏み切った影響と見られる。
(3) 需要減退は足元まで歯止めがかかっていないことに加え、景気持ち直しの兆しを見出すことも困難、今回の業績悪化が最終的にどの程度まで拡大するかは想定しづらい。ただ、我が国企業が本格的な構造調整に踏み切らずに済むのであれば業績悪化幅は3~5割程度でとどまるであろうし、構造調整を余儀なくされるのであれば悪化幅は7割を上回るものと見られる。なお、構造調整局面に入った場合には、少なくともアジア/ロシア危機後、ITバブル後のケースでは税引利益が最終的に赤字化していた点も指摘しておきたい。