JUNE 21, 1986
This Week No.3 Shadows Of Your Love/J.M. SILK
J.M. Silk。Jack Master Silkの略。ハウス・ミュージック・パイオニアのひとり、スティーヴ・シルク・ハーレーのプロジェクト。彼は、シカゴ、イリノイ出身。ローカル・ラジオのマスターミックス・ショー〈Disco Hot Mix〉を聴きDJを目指す。いくつかのクラブでDJを学んだ後、シカゴのラジオ局〈WBMX〉で「Saturday Night Live Ain't No Jive Dance Party」というマスターミックス・ショーを担当したことでその名が広まった。彼のDJスタイルは、絹のようなスムースなミックスとヒップホップDJ顔負けのスクラッチ～ビートジャグリング。その技を使い、フランキー・ナックルズが確立したハウスとカテゴライズされたあらゆるダンス・ミュージックをプレイしていた。
85年、シカゴのクラブを中心に人気沸騰していた（フランキーナックルズがプレイした）ハウスとカテゴライズされたダンス・ミュージック。雑な説明で申し訳ないが、それはDJ達がオープンリールやドラム・マシンを駆使しオリジナルなRe-EditやRemixを作りクラブでプレイした楽曲達だった。それを音源化しようとインディー・レーベルが立ち上がる。そのひとつに〈DJ International〉があった。そこからスティーヴ・シルク・ハーレーがリリースした「Music Is The Key」がビルボード・ダンス・チャート9位を獲得。それは、シカゴのアンダーグランドなローカル・ダンス・ミュージックであったシカゴ・ハウスがポップ・ミュージックとしてブレイク・スルーした瞬間だった。
そのヒットでスティーヴ・シルク・ハーレーは〈RCA〉とアルバム契約。ヴォーカルのキース・ナナリーらとJ.M.シルクを結成。86年にはアイザック・へイズのシカゴ・ハウス・カヴァー「I Can't Turn Around」でメジャー・デヴュー。ビルボード・ダンス・チャート1位を獲得。その勢いのままに〈DJ International〉からリリースされたセカンド・シングル（?）がこの「Shadows Of Your Love」。
全一曲でヴァージョン違いというダンス・ミュージックの基本とも言える12インチ・シングルのパッケージ。そこには、オリジナル楽曲を拡張＝extendedするという概念はない。それまでのポップ・ミュージックが3~5分であったのに対し、ハウス・ミュージックは6~8分が基本。つまりオリジナル楽曲がすでにダンス・ミュージックだから、楽曲を引き延ばしてクラブ仕様にする必要がない。今更いうことではないが、ハウス・ミュージックはクラブ発のダンス・ミュージックだからだ。
この85～６年を境に、ヒップホップ～ハウスミュージック～テクノなどクラブ発のダンス・ミュージックがチャートを席巻していくことになる。それはオリジナル楽曲を引き延ばし拡張する〈extended〉という概念がなくなりオリジナル楽曲をまるごと違うジャンルへと書き換える〈Remix〉という概念が台頭してくることになる。
Sampled；Robin Wants Revenge/Robin Wants Revenge (Like It Ruff Mix)
Robin Wants Revenge Jungle Jam 1990
