狂人作家坂口安吾

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作家に対するイメージはみな違う。私の作家のあるべき理想像は坂口安吾と太宰治。特に最近の若手作家に見受けられる文才の不足を、快活明朗な性格やスタイリッシュなビジュアル面など新刊の帯や写真POPで補ってやたらと強調する。これも今の書籍の販売戦略だから否定はできないが、作家はどこか病的でナイーブで日常生活から逸脱した狂人であってほしい。
 作家について昔の文士の典型的なイメージがいまでも長らくかわっていない。それはおそらく坂口安吾から受けた影響がたぶんにある。同郷の作家ということで初めて手にしたときはあまりの難解さに投げ出すも、年を重ねるたびに読みだし、気づかないうちにいくたびも読み返していた。人間坂口安吾についてもいろんな文献で目にするたびに、安吾の晩年の狂気的な部分が天才作家の証であったのかと「天才と馬鹿は紙一重」という台詞を思い出さずにはいられない。安吾は作家としては天才で、人間としはしょうもないならずものだった。
 一般人が到底真似しないような退廃的な、あるいは狂気的な生き方だからこそ、あっと驚く創造もつかない作品が生まれる。安吾の人物評伝は何度となく書かれている。今回たまたま東京堂ふくろう店で見つけた「小説坂口安吾」(杉森久英著 河出文庫)を読んで、あらためて坂口安吾の人生こそ、作品に全身全霊をこめていた真の作家の生き方だったと感じた。

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