正直なとこ、全然足りない。
もっと、ちゃんと、愛されてるっていう実感がほしい。
女々しいよね、俺…。
こんな俺だって、ときには凹む。
けど、ほしいものは やっぱりほしいからさ。
おとなしく『聞き分けのいい子』を演じてたって、たぶんこっちの気持ちに全然気づいてくんないし、この人。
あ~あ。今夜はまだお酒もそれほど進んでないのに…
ソファを背もたれにして、床にあぐらをかく猫背のあなたは、いつにも増して目蓋が重たそう。
今おねだりしても、よい効果は期待できそうにないけど。いつだって果敢に(無謀に?)トライだけはしてみる。
こんな健気な俺を、たまには褒めてほしいよ。
「ねぇ…好き?」
酔いに任せてこんなふうに『ありきたりな言葉』をせがむ俺。あなたの目にはどう映ってるんだろう。
「ん…?好きだよ」
まるで機械仕掛け。
たいした抑揚のないオウム返し。
得られるのは、いつもどおりの穏やかな頬笑みだけ。
「それだけ?」
拗ねてみたところで何かが変わる訳じゃない。
一瞬、困った顔で鼻の頭を掻いてから、俺の髪をワシャワシャと撫で始める。
「…俺、ワンコじゃねぇっつうの」
そう文句を溢しつつ、ワンコに徹するのも悪くないか、とも思い直す。膝にゴロンと頭を預けて、整った顎ラインを見上げるのが結構気に入ってる。
この人は、ほんと、優しい。
苦手なことでも一生懸命考えて、なんとか俺をなだめようと頑張ってくれる。
「ばか、うざいなんて思うわけないだろ」
ちょっとマジな顔で反論してくれるとこが、好き。
少しうなだれてから、
「ん~、よくわかんねぇんだよなぁ…」
と、ぼそっと呟く声も。
「なんかいっつも申し訳ないとは思うんだけど…。どうやったら、ちゃんと伝えられるんだろな」
ははっ。こっちこそ、ごめんね。
ちゃんと、伝わってるって。
俺のことを真剣に考えてくれてるのが、すごく嬉しい。
そんな表情を見せるから、もうちょっとだけ、困らせてみたくなるんだ。
"こんなこと言ったら嫌われるかも…"
なぁんていう躊躇や危機感は、とっくにどこかに置き忘れてきちゃったよ。
俺を甘やかし続ける、あなたの責任だからね?
俺はあなたを、信じてる。
あなたは俺を、決して裏切らない。
俺が一番、俺らしく居られる場所。
この居心地のよさを知っちゃうと、もうダメだよね。後戻りはできませんっ!!
だから…
もっと、もっと、ちょうだい?
「なぁ…潤」
「なぁに?」
「…俺の…さぁ、愛情って
=====
