政府赤字削減(国債発行抑制)に拘るのは、あまりに危険だ! | 真の国益を実現するブログ

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 ギリシャ問題は、経済評論家の廣宮孝信さんの予測シナリオどおりに進みそうな気がします。
《ドイツが「ギリシャをユーロから追い出せ」世論に押されて強硬路線→株価暴落(?)→ドイツ世論に揺らぎ→ギリシャがほど良く妥協し債権団譲歩引出してユーロ居座り》
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-672.html

 さて、我が国においては、過度な歳出抑制ではなく、経済成長した上での財政健全化が基本方針とされるようです。歳出は大きく減らなくても、税収増でプライマリーバランス改善、国債発行額抑制というシナリオですね。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2015/decision0630.html

 過度な歳出抑制の否定はともかくも、これは危険です。経済を崩壊させかねません。

 いわゆるマクロ経済バランス式であるISバランスですが、海外部門を入れると次のようになります。
 (G-T)+(X-M)=(S-I)の恒等式で表されます。
(ここで、Gは政府支出、Tは税収、Sは貯蓄、Iは投資、Xは輸出、Mは輸入ですので、(G-T)は政府赤字額(ほぼ国債発行額と同額となります)、(X-M)は純輸出額(対外経常収支黒字)、(S-I)は民間貯蓄額(家計と企業の資金余剰分合計)となります。

 この恒等式から、現在の我が国(先進国総てと言っても過言ではありませんが)においては、民間で貯蓄超過(投資不足)が続いている状態ですので、政府赤字または対外経常収支が黒字になることで、国内の資金循環及び実物フローバランスが維持されることになります。
 我が国は、現在、対外経常収支はほぼゼロですので無視できます。したがって、民間貯蓄超過(投資不足)が続けば、政府赤字は継続せざるを得ないことになります。恒等式ですので、結果として事後的には、経済循環として、このような関係が成立しているということです。
 

日銀の資金循環統計から、我が国における1980年代以降の各部門別の資金余剰(不足)の状況を拾ってみました。(2013、2014年度以外は、グラフから大雑把に拾っています、単位;兆円)
 
 <先の恒等式は、(G-T)+(I-S)+(X-M)=0とも表されます。>

        一般政府  家計  民間非金融法人企業  海外    計
1980年  △10  +25   △15     0   ±0
1985年   △5  +35   △20     △15   △5
1990年  +10  +45   △40      △10   +5
1995年  △20  +30    ±0      △10   ±0
2000年  △35  +20   +25      △10   ±0
2005年  △20  +20   +10      △20   △5
2010年  △40  +20   +30      △15   △5
2013年  △32.3    +16.1  +20.0     △0.9   △2.9
2014年  △24.8  +25.3   +10.2     △7.5   △3.2

 政府部門と民間部門(家計+民間非金融法人企業)と海外部門の資金過不足を合計すると、ほぼ±0となっています。

 「政府赤字はけしからん」、「プライマリーバランスを改善しなければいけない」等々の言説は、民間貯蓄超過(投資不足)の経済下にあっては、無理があるわけです。(現在のドイツや少し前の我が国であれば、対外経常収支の莫大な黒字(海外部門△)により、バランスしないこともありませんが)
 さらに言うと、政府赤字の削減(国債発行額抑制)は、民間の貯蓄超過差額を縮小させることになります。
 政府の目論見としては、円安もあり、輸出増加による対外経常収支の黒字増を想定しているのでしょうけど、現地生産の進展や世界全体での景気低迷もあり、かなり厳しいと思います。
 また、国内投資増に関しては、先の日銀短観どおりに企業の投資が進めば、あり得ないこともないのでしょうが、直近の鉱工業生産指数が芳しくない中、むしろ貯蓄が減少してGDPが調整される(減少する)と考える方が自然だと思います。

 ギリシャ危機と上海株式暴落で、そろそろ補正予算の話も出てくるのでしょうか? 2015年度当初予算では、国債発行額は対前年度比で約8兆円も抑制されています。建設・特例国債に関しては、安倍政権以降2012年度の47.5兆円をピークに、2013年、14年度には約40兆円に絞り、2015年度予算では37兆円まで抑制されています。(出典:財務省)
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2015/index.htm


 多くの識者が指摘しているところではありますが、各種社会保険料の負担増もあり、消費税増税ショックからの回復が十分ではない中、政府支出の抑制はもっての外であります。ここにきてのギリシャ危機、上海株式暴落がなくともです。先の資金循環及び実物フローバランスの考え方では、税収増に頼った政府支出拡大というよりも、政府赤字拡大(国債発行増)が必要なのです。政府赤字削減(国債発行抑制)が経済を崩壊させ、景気後退を招くということを認識しておく必要があります
「大企業の収益増加で法人税増収で、政府赤字が削減出来た(国債発行が抑制出来た)、よっし!」ではいけません。

 なお、以前にも紹介しましたが、米国においては、過去6回にわたり国債残高を大幅に減らした時期があり、いずれもその後、経済を崩壊させ深刻な不況に突入したようです。

 参考までに、米欧の部門別の資金過不足(名目GDP比)です。これも日銀の資料からです。
http://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf
 ユーロエリアは変化が小さいのですが、家計が貯蓄超過、それをバランスするかのように、政府赤字があり、直近では、ユーロ安を反映してか域外経常収支黒字が拡大してきています。(無論、ドイツの一人勝ちではあるのですが)
 米国においては、双子の赤字と言われるように、政府赤字と対外経常収支赤字ずっと続いているのですが、ここ数年では両者ともに縮小傾向にあります。
 日米欧共通していることは、いずれも直近で政府赤字を減らしています。これは、リーマンショック前と同じ傾向ですね(○印の箇所)。 怖い、怖い!
 


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