書体に独特の匂いと親しみがある、稲田さんの文字。


稲田茂さんとは、「書き文字の神様的な人だよ」と紹介されて、2,3度お会いしたことがありましたね。もう20年も経つのかな。
「さっきまで、週刊新潮? の特集記事のタイトルを書いていたんですよ」と、にこやかに話されていたのを思い出します。
タイトルは最後の最後に決まるそうで、時間との勝負。書き終わったらすぐに写凸が作られ、すでに組まれている写真凸版や本文組みに、差し込んですぐに印刷に回るようでした。活版の時代です。


そのせいかどうか、写研から沢山の書体を発表されていますが、とても早く制作されたとのこと。遊び心があるんですね。


それぞれに独特な味のある書体で、「イナブラシュ」や「イナクズレ」は特に好きな書体でした。
チラシや広告のキャッチ・フレーズやマンガなどによく使われていました。
DTPフォントでも似たようなものを散見しますが、どうも本家を超えるものはないような気がするんですけど、、、。


絵でもデザインでも文字でも、すべて人間性が出てきますよね。そこが面白いところ。

いまさら写植。なおさら写真植字。-inami

稲田さんの書体名の頭には、すべて「イナ」がついていますね。


ひとつだけ例外があって、たしか、「ファニー」という書体は稲田さんの制作だと聞いたことがあります。
1975年の書体見本帳・No.24には、この書体が掲載されていて、当時、ふき出しに結構使われていた記憶があるんですが、商標の関係で消えたとか。

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いまさら写植。なおさら写真植字。-fny


イナブラシュ・ENA
元々は、1976年ごろに、「広告専用見出し文字盤」として、かなや約物、チラシによく使う漢字などを2枚のサブプレートとして発売されていたもので、字種を増やして新発売。
1982年

いまさら写植。なおさら写真植字。-ena

イダシェ・EDA
この書体も元々は、1976年ごろに、「広告専用見出し文字盤」として、かなや約物、チラシによく使う漢字などを2枚のサブプレートとして発売されていたもので、字種を増やして新発売。
1984年

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イボテ・EBOT
1985年

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イナひげ・EHGE
1985年

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イナミンE・EEMN
イナクズレ・EKZ
1989年

 書体自体はかなも漢字も「クズレ」なく、統一したコンセプトで当然書かれていますよね。楽しく制作された感じです。
いまさら写植。なおさら写真植字。-inamin

イナピエロM・MEPR
イナピエロB・BEPR
1994年

いまさら写植。なおさら写真植字。-inapiro


著書も多く、下記はそのうちの一部です。


・日本字フリースタイル700(1969年6月。A5版-208ページ。マール社)

710の作例を掲載。各見本の番号を元に、「この感じで書いてほしい」という仕組みになっています。下記は一部です。
いまさら写植。なおさら写真植字。-inada-3 いまさら写植。なおさら写真植字。-inada-2
・民芸文字 (書体とPOPのベスト50―伝統文字)
(1982年8月。B5,226ページ。マール社)。漢字、かな、数字など約2800字を掲載。

紙焼きやコピーして自由に使えるようにしてある。
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・写真でみる レタリング入門
・日本字フリースタイルのエレメント
・昭和モダン体


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