2005年12月04日 02時27分12秒
第三章 変貌・5
テーマ:魔性の末裔
「ここが、リジン……」リックスはその洞窟を見ると、そう呟いた。
「そうです。あなた達が、血脈の短剣を見つけ出した洞窟です」
(ここが、全ての始まり……)
リックスはその洞窟に、感慨深い物を覚えた。そして、これまでの出来事を思い出しつつ、リックスはエルミの後を追って、洞窟の中へと入っていった。
その洞窟はそれほど広い物ではなく、二人は数分で洞窟の終わりへと辿り着く事ができた。洞窟の中は、不思議な事に壁が青白く光っており、それは心地好い物であった。それが不思議に思え、リックスはその事をエルミに聞いてみた。
「あなたが私の血を飲んだ。ただ、それだけの事です」そうエルミは、あっさりと答えた。
その答えを聞くと、リックスは納得した。そして、洞窟の終わりに広がっていた、広間のような空間の中心を無言で見つめた。そこに、骸骨と心臓、そして、血脈の短剣があった事をリックスは聞き知っていた。
一方、エルミはそんなリックスと同じように無言のまま、骸骨があった場所を見詰めていた。心なしか、その顔は青ざめて見えた。
それに気がついたリックスは、とてつもない歯がゆさを覚えた。だが、リックスは自分が、エルミを慰める事ができない事を知っていた。それは、リックスではなく、レインの仕事なのである。
(魔性の森に入って、今日で二日目か……。レインさんは大丈夫なのだろうか?)
リックスはその場に座り込むと、眉を顰めた。自分自身に対する怒りが込み上げてくるのだが、それをぶつける場所がリックスには見つからなかった。
と、リックスはいても立ってもいられず、突然、すっと立ち上がった。だが、やはり、リックスにはどうする事もできず、リックスは再び座り込んだ。そして、さらに自らの力の無さに、リックスは自分自身に対して憤慨するのであった。
「リックスさん……」と、エルミが口を開いた。
「え?」その瞬間、りックスは思わずぎょっとし、身構えてしまった。
「あ、はい。何でしょう?」リックスは慌てふためきながら、エルミにそう聞き返した。
「あの人は……、レインさんは本当に生きていたのですか?」エルミは恐る恐るそう聞いた。
「ええ。何度も言ったように、彼は生きていました。もし、あなたの言ったように、彼が心臓を矢で射抜かれたのならば、彼は一度死んで生き返った事になりますね」
「そうですか……」それを聞くと、エルミは溜息をついた。
「一体、どうしたんですか? レインさんが生きていた事が、嬉しくはないんですか?」その様子を見て、リックスが首を傾げる。
「もしかすると……、私達はあの人に襲われるかも知れないのです。そして、それが現実の物となったならば、あの人は強大な敵となるでしょう」
「陛下がレインさんを連蓮の薬で、洗脳をすると言う事ですか? では、レインさんはやはり」
「確信は持てませんが、恐らく、そうだと思います。そして、その時、私はあの人を抑える事ができないかも知れません。それに、たとえ彼が私達の味方のままだったとしても」エルミはそう悲しそうに呟くと、目を伏せた。
(あそこには、あの人がいるはず)
リックスは何とも言えない表情をし、頭を軽く掻いた。そして、再び無言のまま、リックスは頭上を見詰めた。
エルミは両手で両足を抱え込んだまま、全く動かなかった。が、その体はまるで何かを怖れているかのように、小刻みに震えていた。そして、どこを見るでもない二つの目は、宙を彷徨っていた。
リックスにはエルミが何を怖れているのか、全くわからなかった。が、何かとんでもない事がこれから起きると言う空気が、リックスにははっきりと感じ取れた。そして、リックスの体も言い知れぬ恐怖に、震えているのであった。
(一体、何が起ころうとしているのだろう? この……、心の奥底から湧き出てくるような恐怖……)
「……?」と、突然、二人の耳に空気を切り裂く音が聞こえてきた。その音は、確実にこちらに近づいてきていた。
(何かが……、近づいてきている!)
リックスはまるで、弓から放たれた矢のように立ち上がった。そして、腰の剣に手を添えると、リックスは洞窟の外へと駆け出していった。
「あ……。待って下さい、リックスさん!」それを見ると、エルミはリックスを呼び止めようとした。が、その声はリックスの耳には届かなかった。
(大変! リックスさんが彼に)
エルミも立ち上がり、リックスの後を追って、洞窟の外へと駆け出していった。
風を切り裂く音は、すでに間近に近づいていた。そして、突然、その音は消え去った。
「そうです。あなた達が、血脈の短剣を見つけ出した洞窟です」
(ここが、全ての始まり……)
リックスはその洞窟に、感慨深い物を覚えた。そして、これまでの出来事を思い出しつつ、リックスはエルミの後を追って、洞窟の中へと入っていった。
その洞窟はそれほど広い物ではなく、二人は数分で洞窟の終わりへと辿り着く事ができた。洞窟の中は、不思議な事に壁が青白く光っており、それは心地好い物であった。それが不思議に思え、リックスはその事をエルミに聞いてみた。
「あなたが私の血を飲んだ。ただ、それだけの事です」そうエルミは、あっさりと答えた。
その答えを聞くと、リックスは納得した。そして、洞窟の終わりに広がっていた、広間のような空間の中心を無言で見つめた。そこに、骸骨と心臓、そして、血脈の短剣があった事をリックスは聞き知っていた。
一方、エルミはそんなリックスと同じように無言のまま、骸骨があった場所を見詰めていた。心なしか、その顔は青ざめて見えた。
それに気がついたリックスは、とてつもない歯がゆさを覚えた。だが、リックスは自分が、エルミを慰める事ができない事を知っていた。それは、リックスではなく、レインの仕事なのである。
(魔性の森に入って、今日で二日目か……。レインさんは大丈夫なのだろうか?)
リックスはその場に座り込むと、眉を顰めた。自分自身に対する怒りが込み上げてくるのだが、それをぶつける場所がリックスには見つからなかった。
と、リックスはいても立ってもいられず、突然、すっと立ち上がった。だが、やはり、リックスにはどうする事もできず、リックスは再び座り込んだ。そして、さらに自らの力の無さに、リックスは自分自身に対して憤慨するのであった。
「リックスさん……」と、エルミが口を開いた。
「え?」その瞬間、りックスは思わずぎょっとし、身構えてしまった。
「あ、はい。何でしょう?」リックスは慌てふためきながら、エルミにそう聞き返した。
「あの人は……、レインさんは本当に生きていたのですか?」エルミは恐る恐るそう聞いた。
「ええ。何度も言ったように、彼は生きていました。もし、あなたの言ったように、彼が心臓を矢で射抜かれたのならば、彼は一度死んで生き返った事になりますね」
「そうですか……」それを聞くと、エルミは溜息をついた。
「一体、どうしたんですか? レインさんが生きていた事が、嬉しくはないんですか?」その様子を見て、リックスが首を傾げる。
「もしかすると……、私達はあの人に襲われるかも知れないのです。そして、それが現実の物となったならば、あの人は強大な敵となるでしょう」
「陛下がレインさんを連蓮の薬で、洗脳をすると言う事ですか? では、レインさんはやはり」
「確信は持てませんが、恐らく、そうだと思います。そして、その時、私はあの人を抑える事ができないかも知れません。それに、たとえ彼が私達の味方のままだったとしても」エルミはそう悲しそうに呟くと、目を伏せた。
(あそこには、あの人がいるはず)
リックスは何とも言えない表情をし、頭を軽く掻いた。そして、再び無言のまま、リックスは頭上を見詰めた。
エルミは両手で両足を抱え込んだまま、全く動かなかった。が、その体はまるで何かを怖れているかのように、小刻みに震えていた。そして、どこを見るでもない二つの目は、宙を彷徨っていた。
リックスにはエルミが何を怖れているのか、全くわからなかった。が、何かとんでもない事がこれから起きると言う空気が、リックスにははっきりと感じ取れた。そして、リックスの体も言い知れぬ恐怖に、震えているのであった。
(一体、何が起ころうとしているのだろう? この……、心の奥底から湧き出てくるような恐怖……)
「……?」と、突然、二人の耳に空気を切り裂く音が聞こえてきた。その音は、確実にこちらに近づいてきていた。
(何かが……、近づいてきている!)
リックスはまるで、弓から放たれた矢のように立ち上がった。そして、腰の剣に手を添えると、リックスは洞窟の外へと駆け出していった。
「あ……。待って下さい、リックスさん!」それを見ると、エルミはリックスを呼び止めようとした。が、その声はリックスの耳には届かなかった。
(大変! リックスさんが彼に)
エルミも立ち上がり、リックスの後を追って、洞窟の外へと駆け出していった。
風を切り裂く音は、すでに間近に近づいていた。そして、突然、その音は消え去った。






