2006-08-29 09:25:33
通夜と夜伽
テーマ:お参りにて
通夜というのは、元々僧侶がお堂に籠って夜通し祈願行をすることを云うのだそうですが、それが何故に、いつから葬儀の前夜を指してそう云うようになったのでしょうか。下らん屁理屈を云うならば、通夜という言葉は夜通しと読めるので、深夜勤務したり、徹夜勉強したり、徹夜マージャンなどをして夜を明かすことも通夜ということになってしまいますが、どうもこの言葉には私は今でも馴染めないものがあります。
というのは、小松でも以前は、一般に仮通夜のことを内輪夜伽、通夜のことを本夜伽と云っていました。そもそも夜伽の伽とはお伽話の伽ですから、話し相手をすること、という意味ですが、この夜伽には近しい間柄の人たちが亡き骸の側に居て、互いに故人の思い出話などをしてつれづれ終夜を過ごしたのでした。ですから、夜伽では喪家の者が次々と訪れる弔問客にお礼を述べたり、逆に弔問客からお悔やみの言葉を受けたり、励まされたり、慰められたり、と文字通り夜伽はその場に居合わした者同士が心の痛みを分かち合う場であったのです。
このようにこの夜伽という言葉には、通夜という無味乾燥な言葉からは伺えない趣を感じ取ることができます。私はこの夜伽という言葉の方が人情味を感じるのです。それに、つい30年前までは、特に夜伽の開始時刻は定めてありませんでしたので、我々僧侶も好きな時間に行って読経をしたものでした。当時は、今日のように同時に揃って皆で読経はせず、僧侶であれ、門徒であれ、一人ずつ読経することが慣例になっていて、祭壇の前で誰かが先に読経をしておれば、脇で自分の順番がくるまでじっと待っていました。
ところで、私の母が14年10月に亡くなりましたが、その内輪夜伽の日に晩遅くまで酒を呑んだ後、母の一番下の弟が「今晩は姉さんと一緒に寝るから」と言って、独り母の居る部屋に残ることになりました。所が、その後1時も過ぎた頃、姉が私を起こしに来まして、「マコト、叔父ちゃんがとんでもない事をしているの。早く来て」と言うものですから、部屋に急いで行ってみると、何とその叔父がお棺の上に寝ているではありませんか。姉が「さっき私が、やめてよ!と言ったら、ひどく怒られて…」と、叔父を怖がっているのです。
この叔父は7人姉弟の末っ子で、その中でも母を殊に慕っていたことを私は知っていましたので、私は最後だから甘えたいんだな、と思い「好きなように、させておけばいい」と言って部屋に戻りました。明くる朝、叔父に「よく眠れた?」と聞いたら、叔父が「それがね、マコト、お棺の蓋がかまぼこのようになっていてね、寝れたもんじゃなかったよ」と笑っていました。さて、読者の皆さんは、この叔父を莫迦になさいますか。
住職の口癖 ダラは計算に合わないことを、喜んでする人。
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というのは、小松でも以前は、一般に仮通夜のことを内輪夜伽、通夜のことを本夜伽と云っていました。そもそも夜伽の伽とはお伽話の伽ですから、話し相手をすること、という意味ですが、この夜伽には近しい間柄の人たちが亡き骸の側に居て、互いに故人の思い出話などをしてつれづれ終夜を過ごしたのでした。ですから、夜伽では喪家の者が次々と訪れる弔問客にお礼を述べたり、逆に弔問客からお悔やみの言葉を受けたり、励まされたり、慰められたり、と文字通り夜伽はその場に居合わした者同士が心の痛みを分かち合う場であったのです。
このようにこの夜伽という言葉には、通夜という無味乾燥な言葉からは伺えない趣を感じ取ることができます。私はこの夜伽という言葉の方が人情味を感じるのです。それに、つい30年前までは、特に夜伽の開始時刻は定めてありませんでしたので、我々僧侶も好きな時間に行って読経をしたものでした。当時は、今日のように同時に揃って皆で読経はせず、僧侶であれ、門徒であれ、一人ずつ読経することが慣例になっていて、祭壇の前で誰かが先に読経をしておれば、脇で自分の順番がくるまでじっと待っていました。
ところで、私の母が14年10月に亡くなりましたが、その内輪夜伽の日に晩遅くまで酒を呑んだ後、母の一番下の弟が「今晩は姉さんと一緒に寝るから」と言って、独り母の居る部屋に残ることになりました。所が、その後1時も過ぎた頃、姉が私を起こしに来まして、「マコト、叔父ちゃんがとんでもない事をしているの。早く来て」と言うものですから、部屋に急いで行ってみると、何とその叔父がお棺の上に寝ているではありませんか。姉が「さっき私が、やめてよ!と言ったら、ひどく怒られて…」と、叔父を怖がっているのです。
この叔父は7人姉弟の末っ子で、その中でも母を殊に慕っていたことを私は知っていましたので、私は最後だから甘えたいんだな、と思い「好きなように、させておけばいい」と言って部屋に戻りました。明くる朝、叔父に「よく眠れた?」と聞いたら、叔父が「それがね、マコト、お棺の蓋がかまぼこのようになっていてね、寝れたもんじゃなかったよ」と笑っていました。さて、読者の皆さんは、この叔父を莫迦になさいますか。
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