善行は、あらためて、寝起きパジャマ姿の女の顔を見ました。

女はまだ、髪さえといていないけれど、嚙みつかんばかりに、真剣な目付きで、

猛然と善行をにらみつけました。

「あの子をだましたり、そそのかしたりしてませんよね?」

と、薄い眉をしかめてみせました。

善行は、少し、この女に興味を持ち、

「ほう・・・何か、お聞き及びかな?」

女の方が、ため息をついて、「やっぱり」と、小さくつぶやきました。

「近所の人に、言われたんです。『オタクのハルミくん、何やら、便利屋のオジサンの

所へ、出入りしているらしいよ』って」と言うと、上目遣いに、善行の顔を見つめ、

「何を頼まれたんですか?」

と、切り出しました。

終始仏頂面のままで・・・

善行は(さて、このまま、先に進んで、いいのだろうか)と、迷います。

本来なら、ハルミくんの意向をはっきりさせたいところだが、寝ているところをたたき

起こすのも、気の毒だ・・・

すると、女の方が、はぁ~と大きくため息をつくと、

「大体察しはつきます。『お母さんの荷物を預かってくれ』でしょ?」と言う。

「ほう・・・」

善行は、思いもかけず聡明な面を見せつけられて、大きく目を見開きました。

ハルミくんがあれだけ悩むのだから、どれだけ分からず屋の、トンチンカンなオカシメンコ

(・・・口が悪くて、もうしわけない)

かと思いきや・・・どうやら、話せば、わかる人らしい・・・

(ハルミくん、話せば、わかってくれそうだぞ・・・)

こころの中で、語り掛けます。

「私もね、あの子を、困らせたくて、やってるわけではないんです・・・」

と、静かに目を伏せました。

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