「ぼくはね、先生のこと、うらやましく
 思ってたんですよ」
と、吉川先生が言う。
 岸本先生は、何を言ってるのか、わからずに、ボンヤリと先生のことを、見つめる。
「ユウタくんや、ソウタくんが、いつも
 入り浸ってたでしょ?あれがね、いつも
 うらやましかったんですよ」
と言って、女性に人気のある、人懐っこい顔をして言った。
もちろん、一部生徒にも、人気のある先生だ。『リアル伝次郎先生』と、生徒たちにからかわれているみたいだ。
寝癖のついた、ぐしゃぐしゃの天然パーマの頭。いつも同じTシャツ
Gパンの上に、トレード・マークの、白衣を羽織っている。
指先には、いつも、化学薬品をさわるせいで、                                                                                                                                             やけどしたり、細かな傷があるけれど。

「先生だって、人気者じゃないですかぁ」
と、岸本先生が言い返すと、吉川先生は、
静かに頭を振り、
「いくら、授業が面白いって、言ってもらえても、先生のように、慕われたことは、
ないもんなぁ」
と、不満そうな顔をした。
「無い物ねだりですなぁ~」
 岸本先生は、ニッコリと笑いつつ、言いました。


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