秘策
…まだ…まだこない…
七原章吾はジョニーのウージーから吐き出される銃弾をかわしながら思った。この作戦を実行するのは大きな賭けであった。その作戦とは…
自分の父である七原秋也をこのプログラム会場に呼ぶ…
もちろんそんなことは出来るはずもなかった。無線機はこっそり持ってきていたものの、この島からは特殊な妨害電波がながれていたせいか、無線機は使えなかった。しかし、遭仙の登場がこの作戦を実行するチャンスが出来たのだ。
そう、遭仙のTウイルスはここでも役に立っていた。Tウイルスがコンピューターを破壊したため、妨害電波がなくなり、自分の父と連絡をとることができたのだ。
しかし、自分の父は国際手配者。それに、ここがどこにある島なのかも担当官から聞いていない。だから、ここに来るのは相当難しいはずだ。しかし、章吾は信じていた。自分の父が最後に言った言葉「オーケイ、それまで生き残れよ」という言葉。この言葉を信じて…
ジョニー「どうした?避けてばっかじゃ俺は殺せねえよ!」
ダァン!ダァン!
ジョニーが持っていたウージーが弾切れしたのだろうか、デザートイーグル50AEをぶっ放してきた。
章吾「ちっ…なんてもん持ってんだよ…」
章吾はそう悪態をつきながらもステアーSSGを構えてジョニーに撃つ。しかし、その銃弾は木に当たるだけでジョニーにはあたらなかった。
はやく…父さん…
パァン…
来来と葵は森の中を撃ち合いながら走っていた。来来が自分で持ってきていたシグ・ザウエルP230を撃つと同時に、葵がブローニング9mmを撃つ…この撃ち合いを走りながら、しかも森の中でやっているのだから、弾は全く当たらず、ただただ弾数が減っていくだけだった。
来「これじゃあ埒が開かない…!」
そう呟くものの、特に策があるわけでもないので、この撃ち合いを続けるしかなかった。
しばらく撃ち合いをしているうちに、どこかの民家にたどり着いていた。来来は何を思ったかその民家にある農具倉庫に入っていった。それを追うように葵も入っていった。
倉庫の中は結構広く、さまざまなトラクターや軽トラが置いてあった。来来は軽トラに隠れながら葵を撃つ…しかし、葵はそれを近くにあった木材で防いだ。
来「なんとかしないと…そうだ…!ここにあれがあれば勝てるかもしれない…!」
そう呟くと来来はそこら辺にあった鎌やくわを葵目掛けて投げ、そして、葵がひるんだすきに更に奥に進んでいった。
来「これじゃない…これでもない…!これだ…!あった!」
来来は自分が探していたものにナイフで穴を開けて、落ちていたバケツの中にそれを入れ始めた。そこまで準備したところで突然殺気が出てきた。葵が近づいてきたのだろう。
この距離なら弾が当たるのは必至だ。そう直感した来来は以前秀夫から譲り受けていたコルトパイソンを取り出してそれを撃ちだした。しかし、この銃は反動が大きく、葵に全く当たらない。しかし、来来はそれでよかったのだ。こうすることにより、相手に自分がパニックに陥ったと見せかけるためだ。相手は軍人の葵。銃器の種類なら知り尽くしているだろうが、今は夜中、銃は見えないだろう。音だけで銃の判断ができるとも思えない。来来はこう踏んだのだ。案の定葵は「あらあら、パニックになっちゃったかしら?」と笑いながら言っている。来来はあくまでもパニクッた振りをしながら秘策がバケツにたまるのを待ち続けた。
来来がコルトパイソン予備も撃ちつくしたときには、秘策は十分たまっていた。そして、来来の作戦が実行された。