【風・新型インフル】(3)

 「インフル騒動」の象徴ともいえるのが、ワクチン。生産が昨年秋の感染のピーク時に間に合わず、大幅に不足したかと思えば、年明け以降は感染者が急減し、大量にだぶつく事態となった。

 ワクチンメーカーが4社しかない日本では当初、供給不足が予測され、接種の優先順位がつけられた。診察にあたる医師らは10月中旬▽妊婦や重い持病の患者は11月▽高齢者は今年1月-などと定められた。

 冬場の流行期を前に、ワクチン不足を心配する声が高まり、鳥取県内の病院では昨年11月、医師らに限定されていたワクチンを病院職員の孫らに接種していたことが発覚。「身内優遇だ」と批判が集中した。

 「新型のワクチンはまだ病院になく、とりあえず季節性インフルエンザのワクチンを10月ごろに打ってもらった」と話すのは、84歳になる筆者の父親。年が明けて新型ワクチンの接種を医師から勧められたが、「すでに周りはだれもマスクをしていなかったし、今さらいいかと考えて」接種を受けなかったという。

 厚生労働省によると、国産ワクチン5400万回分のうち、在庫は2月現在で3110万回分。輸入ワクチンは5300万回分のうち、出荷されたのは、流行がほぼ収束した3月になってもわずか約4千回分で、国産と輸入分で計約8400万回分が余っている。

 接種回数が当初予定の2回から原則1回になったこともあるが、結果論とはいえ、果たして輸入まで必要だったのかという疑問は大いに残った。

 「日本は、世界中からワクチンを買い占めたと言われかねない」と指摘するのは、大阪大医学部の朝野(ともの)和典・感染制御部教授。「先進国と発展途上国で医療体制に差があり、同じウイルスでも致死率は国によって大きく異なる。途上国では病院で治療を受けることすら難しく、そういう国にこそワクチンは必要」と強調する。

 国を挙げて確保に走った「ワクチン争奪戦」は、今や昔話に。だが、「あのときワクチンがあれば…」「残った在庫を何とかして」という声はなお残り、患者や医師らを振り回し続けた争奪戦の“後遺症”は、今も続いている。(秋)

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