サイクルトレーラー・ライフ

リヤカーデザイナー兼ネットショップ店長兼フリーライター(怪しい?)をしている40代男子が、おもにタメにならないことを書いたり書かなかったりします。お酒・本・釣りの話題が中心でしょうか?
ロードバイク+サイクルトレーラーの生活も(販促がてら)紹介します。


テーマ:


着地点がちっとも見えません。あと何回で終わるかもぜんぜんわかりません。


なんてことを始めてしまったのだろう(笑)。


明日はどっちだー!


                


第6話「戦場は荒野」


フェイスブックの店長グループにスレが立った。



【退職&新ショップ立ち上げのお知らせ】

このたび、わたくし清水かつえと矢野京子さんは会社を退職し、一緒に新しいショップを立ち上げることになりました。

まだ何を売るかさえ決まっていませんが、売る側買う側双方が幸せになれるようなショップにします。

できれば会社を成長させて、みなさんをヘッドハンティングできるようになりたいわw


炎上、じゃない、祭りになった。

「おお、やっと辞めたか、おめでちょう!」(←多数)

「肉を売るんだ!」(←北海道の肉屋さん、種田やすこ)

「タオルを売るんだ!」(←都心のタオル屋さん、矢島やじー)

「SMグッズを売るんだ!」(←北海道の怪しい馬具屋、堀内つよし)

「それだ!」(←全員)


楽天の店長たちが作っているグループは、店舗運営上の情報を共有しながら、まあたいていは馬鹿話をしている。

もちろん、悩みもまた共有されてきた。

多いのは、運営上のことよりも、労働環境についてのものだ。

スタッフとして雇われてネットショップ業務を行っている者は、ネット仕事に対する周囲の無理解が最大の悩みだった。

ネットに無知な上司が上にいたら、これはもう大変なのだ。

ある程度裁量権を与えてもらって、売上が伸びていくまで長い目で見てもらえる、なんてケースはごく稀だった。

そんな悩みを抱えるテンチョーズにとって、このニュースは希望の光に見えた。

だからこそ、喝采をもって迎えられたのだろう。

さて、時間は数日遡る。


☆★☆★☆★


東の妖精こと濱野カリナが楽天ショップの店長をやっていたのは、前の前の職場だった。

本職は経理の彼女だったが、引き受けたからにはやってやる、と本気を出した。

ネットショップ部門以外にも、親会社の経理もやっていたので激務だった。

決算期など連日の終電帰りだったが、とにかく二足のわらじをパーフェクトにこなした。

ショップレビュー、4.8超え。

ネットショッパーズ的にはネ申の領域である。

いいものを売っているだけでは絶対に叩き出すことの出来ない数字。

きめ細かい、人間らしい対応がもたらしたものだった。

しかし、その会社はネットショップ部門をやめた。

やめたにもかかわらず、カリナへの負担は減ることはなく・・・

面倒なことを人に押し付けて平気な体質に嫌気が差し、ついに退職した。

テンチョーズは言った。

「おめでとう!」

事情を知っていたので、次いけ次、と煽っていたのであった(笑)。

経理のエキスパートの彼女、次もさくっと決まり、やあこれで平穏な日々・・・

ではなかった。あいやー

能力が高く面倒見のいい彼女、どうも周囲に依存されやすいようなのだった。

無理難題に右往左往させられる毎日に、辛抱強い彼女の堪忍袋も強度限界を迎えそうだった。

「クソ社長チネ」

なんて言葉がふと浮かび、あらいけないわ、と打ち消すことの多い今日このごろ・・・

阿呆な上司は最低のタイミングで阿呆なことをやらかす。だから阿呆なのだが。

「濱野さん、ちょっとこの発注どうなってんの?」

そら来た、とカリナは身構えた。

「社長のご指示通りに処理しました」

最速で、完璧に。

「間違ってるよ、おれが発注してって言ったのはこっちじゃない」

ビキ、と脳のどこかで音がしたが、我慢する。

もちろんミスなどしていない。社長はすぐ気が変わる。前言を翻す。

それだけならまだしも、それを社員のせいにする。「自分はこう言ったはずだ」と。

「・・・もうしわけあ・・・」

「困るよ?こうミスが多くちゃ」

ビキビキ

「こっちは中途で拾ってやったんだからさあ」

ぷっつん。

「間違っているのはわたしではありません」

「ああ?」

「社長は脳に欠陥がおありのようです。自分の発言を数時間後に翻し、しかも前の発言を覚えていない。気分次第なのか若年性アルツハイマーなのか単にアタマが悪いのか知りませんが、会社の業務効率を著しく落としています」

「何だと、この・・・」

「この会社にとって、あなたが最大のガンです。今すぐやめるべきです」

顔を真赤にした社長が立ち上がった。あ、殴られる、と思った。

その目の前に、誰かの背中があらわれて視線を遮った。

「社長、濱野さんの言うとおりです」

「何だ貴様、どけ」

「どきません。再三再四発注を変更して業者に迷惑をかけたり時間を無駄にしたり、取引先を失ったり、そのたびにフォローしてるのは濱野さんじゃないですか。彼女の言うとおり、会社の業務上、社長の一貫しない行動は問題です」

「お前、クビな」

カリナは目の前の背中を押しのけた。

「ちょっとどいて。・・・社長、クビはあなたです。役に立たないだけならまだしも、害になるやつはいらない」

社長の顔が赤くなったり青くなったりを繰り返した。忙しい。

がた、と音がして、背後で誰かが立ち上がる気配がした。見ると、年下の女子社員だった。

「わたしもカリナさんの言うとおりだと思う。この会社にいちばん不要なのは社長よね」

男子社員のひとりが座ったまま手を上げて言った。

「さんせ~」

「そうよね~」「よく言ってくれました!」「もうさ、疲れたよ社長の尻拭い」「カリナさん社長でいいよ」

社長がヒステリックに怒鳴った。

「お前ら全員クビだ!」

すかさずカリナが返す。

「会社都合の解雇ですね?ではすみやかに離職票を郵送してください。溜まっていた有給は本日から消化させていただきます。慰留する気などないでしょうが、しても無駄です。あ、今のやりとりは録音させていただきましたから」

さてと、と両手を叩いて私物の整理を始める。

見ると、社員全員が同じことをしていた。

・・・バカね、でもまあ、この会社にいてもいいことないしね。

「ご飯食べに行かない?」

「行く行く~」

誰もいなくなったオフィスに呆然と立ち尽くしていた社長は、へた、と椅子に座り込んだ。

震える指でタバコに火をつける。

「くそっ、フィルターに火ぃつけちまった!」

八つ当たりでデスクを蹴飛ばす。

「ぎゃっ」

小指を骨折した。


☆★☆★☆★


丸岡かよこはちょっと退屈していた。

嫁いできた先は、良く言えば自然豊か、ぶっちゃけて言えば山しかない。街に出るには下山のプロセスが必要だ。

買い物は、いつのまにかネットショップに頼るようになっていた。

買い物ついでに、ショップのブログはよく読んでいた。退屈しのぎだ。

ある日、ふとブログにコメントしてみた。

すぐにレスがあった。

店長の、気遣いのできる感じがすごく良かった。うれしかった。頻繁にコメントを入れるようになった。

それは、まぎれもなく、ひとつの交流のはじまりだった。人と人との。

ああ、ネットショップ、人がやってるんだもんね、と気づいた。

店長ブログには、横のつながりがあるようだった。他店の店長のコメントから、そのショップへ飛べる。

飛んでみた。

愉快な人達が、楽しげに交流していた。

そっと触手を伸ばす。コメントはいつも、歓迎された。本気の歓迎だった。

輪に溶けこむのに時間はかからなかった。

「とまとのしっぽ」のハンドルネームは、いつしかテンチョーズのブログに欠かせない存在になっていた。

そしてその日が来た。

テンチョーズの集まりに、声がかかったのだ。

それはまさしく、交流が本心からのものであったことの証に他ならなかった。

そして、実際に会ったテンチョーズは・・・

素敵な人達だった。想像していたより、ずっと素敵な人達だった。

よかった、と思った。

この人達と知り合えてよかった!

しかし、お互いに無くてはならない存在、すなわち「友達」になってみて、かよこはたまにモヤモヤとした感情を胸の奥に自覚するようになった。

分析するまでもなかった。

わたしも、この人達と同じステージに立ちたい。

同じ目線から、世界を眺めてみたい!

その時、関東のイケメンからメールが来たのだった。

「かつえっちとパオたんが、ふたりでショップを立ち上げるみたいですよ?」

ありがと、ちゅ、と返信してから、すぐにだんなちゃんのもとへ。

「あのね、あのね、話があるの!」

「なに?」

「働きたい!」

飲んでいた缶ビールをテーブルに戻すと、彼は厳しい顔になってかよこの瞳を覗きこんだ。

・・・負けるもんですか!絶対、説得するんだから!

「働く、簡単な事じゃないよ?」

「わかってる。ううん、働いたことないからわかっていないかもしれないけど、覚悟してる。ちゃんと家事は今までどおりやる。おろそかにしたりしない」

「そういうことじゃないんだ」

「でも、でも」

「ちょっと聞いて。働くってことは、その会社の欠かせない一員になるってことだ。簡単に投げ出したりは出来ない。周囲に多大な迷惑がかかる」

考えた。あの人達に迷惑を?そんなのできっこない!

「絶対投げ出さない。それだけは死んでもしないよ!」

「どこで働きたいの?」

かよこは息を整えた。

「お友達の楽天店長さんが、新しくお店を始めるの。ネットショップ」

夫が、テンチョーズに対してどういう感情を抱いているのかはわからなかった。

ネットに張り付いている様子を、苦々しく思っているかもしれない。

でも、ちゃんと説明してわかってもらうんだ!

「あのね、あの・・・」

「わかった」

そういってテーブルの缶ビールに手を伸ばし、美味しそうに喉を鳴らす。

「あのね、清水さんと矢野さんっていう女性二人で、すごくできる人達で、あこがれの存在っていうか」

「わかったよ」

「え?」

「がんばって、会社にとってかけがえのない人になりなさい」

「え?え?いいの?」

「なんで反対される前提なんだよ(笑)。かよちゃんを籠の鳥にするつもりなんて、もともとないよ」

「だんなちゃん・・・」

「自由なかよちゃんが好きで結婚したんだしね。思い切り羽ばたいておいで」

「愛してるぅ!」

わんこがリビングを出て行った。

空気を読んだと思われる。

「ちょ、助け・・・」

だんなちゃん、ファイト。


☆★☆★☆★


数日前にカリナが退職したことを知っていたかよこは、即座にFBメッセージを送った。

「ぷらさんから連絡来た?」

「来た来た」

「行ってみない?」

「行く!」

あっち系のイベントなどで関西慣れしているカリナはふたつ返事でオッケーし、あっという間に新幹線を手配した。

かよこは高速バスで梅田へ。待ち合わせし、淀川社長こと藤本茂樹が代表を務めるアールステージへ。

ネットショッパーズはスピードが命なのだ。

ドアのむこうでは、なにやら話が大いに盛り上がっているようだった。

ふたりはアイコンタクトを交わし、静まったタイミングを見計らって中に飛び込んだ。

「ちわーす!ユーザー目線いかがっすかあ?」

「経理のプロはいりませんかあ?」

扉の向こうには、新しい世界と新しい仲間の姿があった。



つづく(まだまだ)


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