サイクルトレーラー・ライフ

リヤカーデザイナー兼ネットショップ店長兼フリーライター(怪しい?)をしている40代男子が、おもにタメにならないことを書いたり書かなかったりします。お酒・本・釣りの話題が中心でしょうか?
ロードバイク+サイクルトレーラーの生活も(販促がてら)紹介します。


テーマ:


もうどうにでもなーれ、という気分が支配的です(作者心情において)。


では参りましょう~。


                


第5話「大気圏突入」


徳島を後にした青いステップワゴンは、来た道を戻って大阪方面をめざす。

出発前に友行みかりんが言った。

「ええっと、時間的に鳴門のうず潮見られそうですよ」

見られなかった。

淡路島の北のはずれにあるサービスエリアで休憩。

土産を買い込む。袖の下用である。

阪神高速の神戸付近は渋滞。下道を使って迂回し、ふたたび高速に乗って一路淀川へ。

「でもさあ、そうそう簡単にお金出すかなあ藤本にいやん」(←永野まゆみん)

「出すで。勝算あんねん」(←福田ゆっきー)

「勝算って何よぅ~」(←矢野やのちん)

「まわり見てみい」

京子は周りの連中の顔を見た。そして言った。

「馬鹿ばっかりよ?」

「・・・否定はせん」

できるはずない。

「せんけど、戦闘力も高いん違う?」

その通りだった。

みな、ネットショップで日々戦っている。

WEBのデザインやら写真の加工やらは、ほとんどの者ができる。

実店舗を切り盛りしながら、ほぼひとりで運営している者もいる。

デザイン、設計、加工を行なっている者も何人もいる。

英語を武器に持つ者もいる。

検索対策ができる者もいる。

為替に強い者もいる。

ここにいるだけではない、一声かければ協力を惜しまないであろうメンバーが、数えきれないほどいる。

いまや小売の最前線とも言えるネットショップで戦っていけるマンパワーはすでにそこにあった。

映画版プリキュアも裸足で逃げ出すほどに。

京子はかつえの顔を見た。

瞳が輝きを放ち始めていた。

かつえっちの瞳に映る自分も、同じ顔をしてるにちがいない、と京子は思った。

胸に、小さな炎が灯る感覚があった。

炎はあっという間に大きくなって、体の内側から熱が指先まで伝わっていった。

「かつえっち、わたし飛びたい」

「なんでパオたんは」

「?」

「いつもわたしと同じ事言うの?」

かつえの口角が不敵に上がった。

「わたしもね、制約のないところで自分の力を思い切り試したいと思ってた」

「うん。それに」

京子はまわりの顔を見た。みな、瞳に力強い何かが宿っていた。そして笑みを浮かべていた。

「わたし、見てみたい。テンチョーズの力が集まったとき、一体どんなことが起きるのか」

「・・・すごい景色を見られそうね」

かつえは瞳を閉じた。京子もそれにならった。

ふたりは、瞼の裏に同じ光景を見た。それは驚くほど鮮明な幻視だった。あるいは、約束された未来。

スポットライトを浴びた壇上から見下ろす、同業者たちの群れ。羨望に満ちた視線。WEB配信のカメラ。

かつえが宣言する。

「とりあえず、3年以内にショップ・オブ・ザ・イヤーいただくわよ」

「2年でいいよねー」(←永野まゆみん)

「1年でひとつ」(←入澤REI)

「バーカ!リヤカー屋さん、飛ばして!」

「かしこ!ふふ、『バロム・1』だ」

リヤカー屋の珠玉のギャグはジェネレーションギャップの前にあえなく撃沈した。

型落ちの青いステップワゴンは、車内にこもる熱の力で重力を振りほどき、路面から0.1mm上を飛ぶ。


☆★☆★☆★


淀川にほど近いアールステージのオフィス前には、なぜか尾張小牧ナンバーのワンボックスが止まっていた。

「あれ?この車見たことあるような・・・」(←荒井)

いたずらっぽい表情で、石崎ぷらさんが手を上げた。

「わたしが呼んでおきました。ギャラリーが多いほうが淀川社長も断りにくいかなと」

悪い顔だ。

オフィスに入ると、見慣れた顔がたくさんいた。

「なにこれ」

京子がのけぞる。

いつもの笑みを浮かべながら、「真ん中の妖精」こと野田あかりがのんびり言う。

「あんなー、ぷらさんからメッセもらってなー、おもしろそうやったからなー、ひろみんに頼んでなー、連れてきてもらったー」

「しょーちゃん(←リヤカー屋のことである)、こういう面白いことは早く教えなさいよ」(←森ひろみ)

「スンマソン」

「まーったく、なんやワレらぞろぞろと」

当の淀川社長が苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「何その嫌そうな顔」(←森ひろみん)

「嫌な予感しかせん」

鋭い、とラブワゴンチーム全員が思った。

「あ、にいやんこれ瀬戸内土産~。つまらないものですが~。えへえへ」(←まゆみん)

「あ、にいやんお肩など揉みましょうか~。えへえへ」(←あやか)

「あ、ふじもっさん、これ珠玉の日本酒」(←荒井)

「ああっ、王禄!リヤカー屋てめー昨日出しやがれ」(←ゆっきー)

「あーうるさいうるさい五月蝿い!とっとと要件言わんかい!」

REIがずいっと前に出た。

「茂樹よく聞け。パオとかつえっちが会社辞めた」

「おお、思い切ったの」

「くびきから逃れたんだよ。これから思う存分力を発揮する場所をつくる。ショップを始めるんだ、ふたりで」

「おお、ええやないか!」

「出資しろ」

「用事思い出した」

逃亡を図ろうとする藤本を20本くらいの手が押さえつけた。その中にはアールステージ社員川畑みちえのもあった。

「あっこの裏切り者!」

「茂樹よく聞け。いや、ふたりの顔を見ろ」

見た。いい顔をしている、と認めざるを得なかった。

「周りの連中を見ろ」

見回した。どいつもこいつもワクワクしているにちがいない表情だった。そして自分の胸の中の虫もざわめき始めていた。

「目をつぶって想像してみろ」

目を閉じた。そこに鮮やかな光景が広がった。一度は自分も夢見た光景が。

目を開けると、みんながニヤニヤした顔で見ていた。「な?」と言いたげだった。

「みっちゃん、カバン」

0.5秒でみちえが差し出す。準備していたに違いなかった。

バブリーなセカンドバッグから小切手を取り出すと、スラスラと数字を書いてかつえに差し出す。

横から覗き込んだまゆみんが不満そうな声を出した。

「えー、にいやん500万ってちょっと少なくね?あいた」

REIの空手チョップが後頭部に落下していた。

「いてーな姉ちゃんなんだよ」

「よく数えろバカ」

「えー?いちじゅうひゃくせんまんじゅうまんひゃくまんせ・・・ゲッごせんまん!!!!!!」

「どええええええええええ」(←一同)

京子が貧血を起こした。例によって綾香が救護。

「ちょ、にいやん、こんないっぺんに・・・」

かつえもさすがに血の気が引いている。

「ちまちまやってもたかが知れとる。成功するには資金の裏付けが必要や。思い切ってやり」

「返済は?」

「10年後の今日、まとめて払え。利子はいらん」

「茂樹~!惚れた!」

REIが首に抱きついた。

「さすが淀川を枯らす男!」「すてち!」「結婚して!」「これ本物?」「目がチカチカする」「おえっ」

ひとしきり賞賛の嵐が吹き荒れたあと、まゆみんがちゃっかり言った。

「まずはさ、これで宴会ってどうすか?」

ぴた、と全員の動きが止まった。

「ナイスアイディ・・・」

「ダメです」

かつえが氷のような声で言った。室温がちょっと下がった。

その時、がちゃ、と音がしてドアが開いた。

「ちわーす!ユーザー目線いかがっすかあ?」

「ちょ、とましゃん?」(←あやか)

楽天ヘビーユーザーにしてテンチョーズと親交の深い、トマトさんこと丸岡かよこだった。

その後ろから、もうひとり顔を出した。

「経理のプロはいりませんかあ?」

「カリナしゃん???」

東の妖精こと濱野カリナだった。ネットショップをやりながら親会社の決算を独りで片付けた経理の鬼だ。

「採用!」

息を吹き返した京子とかつえがハモった。

「どうなっとるんや」

淀川社長が呆れた声を出した。

それは作者にもわからなかった。




つづく

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