サイクルトレーラー・ライフ

リヤカーデザイナー兼ネットショップ店長兼フリーライター(怪しい?)をしている40代男子が、おもにタメにならないことを書いたり書かなかったりします。お酒・本・釣りの話題が中心でしょうか?
ロードバイク+サイクルトレーラーの生活も(販促がてら)紹介します。


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さて、今年もこの季節がやって来ました。


ネットショップが忙殺される超絶繁忙期、その名も「クリスマス」。


お客様がたも、配送が通常より時間かかったり、欲しいものが売り切れだったりという経験がお有りかと思います。


そんな季節を、われわれネットショッパーはどうやって過ごしているのか、小説という形で書いてきました。


ということで、今年も書きます。


毎年のことながら、モデルがいます。というか本人そのままだったりw


登場してくれるみなさんに、登場はしていないけどつながっている同志のみなさんに、エールを込めて。


では今年も行ってみよう!


                


毎年の懸案事項、雪が止んだ。ドカドカ降ってどうなることかと思ったが、とにかく止んだ。


・・・まったく、クリスマス前に配送遅延とかやめてよお願いだから!


とゆー、ネットでジュエリーを販売している今回のヒロイン、入澤奈央子にとってはあまりにも切実な願いが天に届いたのかもしれなかった。神様もぶっ飛ばされるのは嫌だろう。


「雪、止んで良かったね~」


とてとてとハンマーをふるいながら、夫の健一郎がのんきな声で言った。


楽天で手作りのジュエリーを中心に販売するこの「BONANZA」は、そのクオリティの高さから人気だ。


つまり、クリスマス前は死ぬほど忙しい。普段からバカみたいに忙しいが、さらに輪をかけて忙しい。


軽井沢という土地柄ゆえ、冬は実店舗がヒマ、というのは救いではある。


お客のない店内にハンマーの音が鳴り止まない日々が続いていた。


「お母さん、次どれ?」


中学生の息子が、梱包を終えた商品を差し出した。


いまや、奈央子自身より速く、綺麗だった。


息子が梱包の名人に「なってしまった」ことについて、複雑な感情がよぎることもなくはなかったが、自発的に、そして楽しげに母の仕事を手伝う息子は、頼もしく誇らしい宝物だった。


健一郎のハンマーの音。


奈央子がキーボードを叩く音。


息子が包装紙をさばく音。


ストーブの上のヤカンが水蒸気を吐き出す音。


静かだ、と思った。


クリスマス前、仕事は溜まりに溜まり、問合わせのメールは殺到し、発送は追いつかず、宅配便の集荷は遅れ、配送も遅れ、サイズ変更の依頼で戻ってくる商品はあり、支払いがあり・・・


でも、積もった雪に屋外の音がかき消され、静かだった。


ま、いつまでこうしてるかわかんないけど、こうやって家族で協力しあうこの季節、悪くないじゃん。


キーボードの手を止め、外を見ようと視線を上げた。


さて、このブログにおいて、静寂は破られるために存在する。


棒が立っていた。


「ぎゃーーーーーーーーーーー」


「ぎゃー、じゃねえ。いいかげん慣れやがれ」


棒は横浜のリヤカー屋だった。こ、この男はいつもいつもいきなり来やがって・・・


と言おうとしたら、その後ろから別の顔がふたつあらわれた。


「こんにちは~」「こんにちは~」


千葉のネイル屋・塚越ゆうこりんと、現在ニート、元北海道の西村ゆーとだった。ニートのゆーと(←)YOYO!


「KENさんじはじめまして~。いつもお世話になってます~」


「ああ、どうもどうも、こんにちは~」


「アンタこんにちわじゃないわよ!(←夫に)ちょ、何してんの、ゆうこりんとこもクソ急がしいでしょ!」


「ふふふ、有能な家事手伝いをこき使って今年は余裕あるんですよ~」


嘘だった。クソ忙しかった。


「おいリヤカー屋、何で来たんだよ」


「何っていつものラブワゴンよ。にちぬらの車でとか蛮勇は持ち合わせてない」


「雪道どーしたのよ」


「ああ、ブラック店長が中古のスタッドレスタダで送ってくれてさ~。うん、いい人だ」


帯広のタイヤ屋のネットを仕切っているのりよっしーは、口は悪くてセク☆ハラ大王だが根は親切なのだった。


「ちょっと待て」


「なに?」


「なぜのりよしが絡んでいる!変なこと企んでるんじゃな・・・」


「きゃはー♪」


サンタが現れた。


サンタコスのその人は・・・バンコクに住んでるんじゃなかったっけ???


「日本寒いー」


RMS48センター、バンコク在住西村知美その人だった。


胸騒ぎは確信に変わりつつあった。


こいつら・・・仕込んでやがったな!


「来たよー」「おーっす」


名古屋から食器屋の野田あかりんとホムセンの森ひろみがあらわれた。


「ぱんぱかぱーん」「はじめまして」


北関東自動車道経由で、イバラキの骨屋斉藤のりぞと肉屋原島ちはるがあらわれた。骨肉コンビ


「はあい」「来たでー」


神戸・大阪から輸入雑貨屋小林あやかと子供服屋福田ゆっきーがあらわれた。


「来てみたー」


九州から(!)輸入ワンピース屋の田尻ひろこがあらわれた。


「りゅー、見ろ、かーちゃんが面白くなってるぞ」


息子の肩を叩き、リヤカー屋が奈央子を指さしていた。


棒立ちで口をパクパクし、両目から涙がジョロジョロ流れだしていた。


「遅くなりました」


川崎から販促屋の石崎ぷらさんがあらわれた。


「はいこれ」


サンタの帽子が山ほどあった。いそいそと全員がかぶった。


「奈央子さん、ちょっと失礼しますね~。おい西村ゆーとパソコン出せ」


ゆうこりんが奈央子を追い出し、奈央子のパソコンの前に座った。隣に、自前のノートパソコンを広げたゆーとが座る。


ひろこもタブレットを取り出した。


「なになに?」


わけが分からず挙動不審に陥る奈央子を放置して、ミッションがスタートした。


「奈央子さん、IDとログインパスワードちょうだい~」


「えと、×××××××××××」(←勢いに流されてポロリ)


「はい、じゃあ手分けして受注処理行きましょ~」


「アイアイサー」(←ゆーと&ひろこ)


「はーい、梱包班はこっち集合~」ゾロゾロ


つられて移動しようとした息子をリヤカー屋が止める。


「今日のりゅーには、別に大事な仕事がある」


「?」


「とゆーわけで、BONANZAは我々テンチョーズが占拠した。人質共は指示に従うよーに」


「な、なによう~」


「サンタ役を果たすというこの上なく楽しい仕事は我々が頂戴する!人質共には退屈な強制労働をしていただく」


「な、なによう~」


「フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ、知ってるな?」


「知ってるも何も、日本中で有名な高級イタリアンじゃない」(←軽井沢に実在。食べログ4.5!)


「飯食ってこい。どうだ、退屈なカロリー摂取業務だ、苦しいぞう~」


「ばっかじゃないの、何ヶ月も前から予約でいっぱいよ」


全員がにやにや笑っている。


「ちょ、まさか・・・あんたら何ヶ月前からこれを・・・」


にやにや。


「ちょ、あんな店、高くて払えっこないでしょーが!」


にやにや。


「ちょ、まさか」


「サンタも我々の一味である。支払いは彼が済ませているようだ。ランチだし大した金額ではない」


「もう、もう、やめてよ~!うえ~ん」


「ほらな?泣いたべ?ひゃひゃひゃ」


心底楽しそうに指さして笑うリヤカー屋の顔面に、奈央子の正拳がきれいにヒットした。


リヤカー屋が吹き飛んだ。軽いのだ。


「あ、そうだ、これこれ」


あやかが先日水没で買い替えたスマホを差し出した。


動画だった。京都のアクセサリー屋、永野まゆみが映っていた。


『ねーちゃん、行けんくてゴメン。そのぶん、こっちから祈ってるよ』


「何言ってんだバカ・・・」


涙でぐしゃぐしゃの奈央子を中心に店内はぎゅうぎゅうだった。そこにヤマトが来た。


「横浜のおまたさまからでーす」


大きくて重そうな箱がふたつ。荷札には「靴下」。


開けると、たくさんの靴下・・・の中に、それぞれワインが突っ込んであった。


おお~、という一同のどよめきとともにスタンディングオベーション。


「さすがおまたんやな」(←ゆっきー)


続いて佐川急便が来た。


「北海道の種田様からです」


荷札には当然「にく」と書いてあった。


「でた~、姐の必殺肉送り」


「つうことで」


リヤカー屋が仕切る。


「入澤家は飯食ってこい。ショップはやっとく」


「そんなこと言ったって、うち難しいオーダー結構あんのよ~」


「わからないやつは『わからないフォルダ』つくって放り込んでおきますね~」


すかさずRMSを操作して、ゆうこりんは受注処理画面に新たなリストを作成した。『わからんやつ』


☆★☆★☆★


一同は、受注処理をしながら梱包を進め、梱包した商品を地域で選別した。


配送先が近隣のものを引っつかむと、二人一組で車に乗り込み・・・


配送に出発したのだった。サンタの帽子をかぶって。


☆★☆★☆★


入澤家が食事から戻ると、店の前でとんでもない光景が繰り広げられていた。


「ひぃ」


慌てて駆け寄り(途中で一回転んだ)、両手をグルグル回しながら叫んだ。


「おまーらなにやってんだあーーーーーーー!」


「バーベキューで―っす」(一同)


店の真ん前で焚き火を焚き、その横にバーベキュー台が鎮座していた。肉が焼けている。


開いたワインの瓶がゴロゴロ散乱していた。


「ほれ、奈央子も食え」


肉を焼いていたあやかがトングで掴んだ肉をそのまま奈央子の口にグイグイ押し付けた。


「あっちーんだバカ!ああもう、あした隣のお店に謝らなきゃ~」


「いっしょに飲んでっけど?」


「はあ?」


となりの店主の親父がにょきっと首を出し、ポリポリと頭を掻いた。「いやあ」


いやあ、じゃねんだよ・・・


肩を落としてふと足元を見ると、棒が雪に埋もれていた。リヤカー屋が寝ている。


「死ぬだろーーーーーーーー!起きろーーーーーーーー!」


蹴飛ばされて目を覚ましたリヤカー屋が座った目でこっちを見ている。


「なんだ奈央子じゃねーか何しに来た?ああ!そうか酒な」


言うと瓶を掴んで戻ってきて、にゅっと突き出した。


「まあ飲め。これはグロリアフェラー・ロイヤルキュヴェと言ってだな(中略)」


目の前でゆらゆら揺れるスパークリングワインのボトルを睨みつけていた奈央子だったが、諦め顔で受け取るとごっくんごっくんラッパ飲みした。


「あー!もっと味わってだな」


「うるせえ!もう」


「もう今日は飲んでやるーーーーーー!」


わーぱちぱちぱちぱち(スタンディングオベーション&ウェーブ、KENも参加)


☆★☆★☆★


「あのな、ぼなんざですぅ、お届けですぅ、えと、メリークリスマス、ってゆったらな、めっちゃ驚いてた。でもな、嬉しそうでな、こっちも嬉しくなった」


配送組が、現地での様子を語っていた。あかりはどうやら相当楽しかったらしく、自分の店でも来年やりたいわぁ、としきりに言っていた。


当然のことながら、だれもエンドユーザーに直接手渡しした経験などなく、新鮮な体験になったようだった。


今回の場合、クリスマスに間に合わないと諦めていた商品が届けられたケースが多かったのも、お客さんの喜びにつながったことだろう。


ワインを傾けるペースも落ち、それぞれが思いに浸る。


自分のショップの商品を手にして、喜んでくれる人達がいる。


他人のショップの代理とはいえ、それを目の当たりにして胸に芽生えたこの想いは、期せずして届いた、サンタからの粋なクリスマスプレゼントかもしれないな、などと、それぞれが思う。


「自分ちのことやってるとわかんないんだけどさ~」


ワイン一口で真っ赤になったのりぞが言う。


「ネットショップって、こんなに楽しいんだね~」


嫌なことはないとはいえない。失敗してお客様に怒られることもある。メーカーの遅れのために電話で謝りまくることもある。発送が追いつかなくて仕事が深夜に及ぶこともある。


でも、まあ、悪い仕事じゃない、とだれもが思えた1日だった。


奈央子がポツリと言った。


「みんな、素敵なクリスマスプレゼント、ありがとう。おまえらバカだよな。ほんとバカ・・・」


「奈央子しゃん」


「なに、知美」


「わたしたちにもクリスマスプレゼント来たよ」


「どれ?」


知美は胸に手を当てた。


「この素敵な気持ち」


「あ」


空を見上げていたちはるが声を上げた。


「雪」


みんな上を見た。


下から焚き火に照らされた雪が、静かに、ゆっくりと舞い降りてきていた。


それは祝福に他ならなかった。


祝福は降り注ぐ。


奈央子の頭上にも。


健一郎の頭上にも。


息子の頭上にも。


誰の頭上にも。


等しく。






おしまい

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