サイクルトレーラー・ライフ

リヤカーデザイナー兼ネットショップ店長兼フリーライター(怪しい?)をしている40代男子が、おもにタメにならないことを書いたり書かなかったりします。お酒・本・釣りの話題が中心でしょうか?
ロードバイク+サイクルトレーラーの生活も(販促がてら)紹介します。


テーマ:


※BUMP OF CHIKEN の名曲「プラネタリウム」に乗せてお送りします(笑)。




あの男はこう言ったのだ。


「おれの車、プラネタリウムが付いてるんだ」


目をぱちぱちしていたのはウインクだったらしい。両目を同時につぶってたからゴミでも入ったかと思っていたが。


誘いにしぶしぶ頷いたのは気の迷いだったとしか思えない。


事実、いまあの男を待ちながら後悔している。


夕暮れの駅。ベッドタウンにある、ありふれた駅は、帰宅の人の群れが流れこむ時間には早く、人通りは多くない。


「やあ」


満面の笑みを浮かべて、男が立っていた。


「どうも」


ぶっきらぼうにならないように意識したが失敗した。


気づいてないようだからいいだろう。


男の手招きに従って歩く。


しばらくして男が立ち止まった。


振り返った首から上にドヤ顔が張り付いていた。


「これ、おれの愛車。いかすだろ?」


無意識に体が動いた。


わたしの膝蹴りをみぞおちに受けて、くの字に倒れこむ男の背後には・・・


自転車にリヤカーがつないであった。


きびすを返し、立ち去ろうとするわたしの足首を、男が掴んだ。


「だ、騙されたと思って乗ってみなって」


喉をひゅーひゅー言わせて悶え苦しみながら言う。しぶとい。


「いやよ」


「そう言わず」


「いやよ」


「まあまあ」


ひゅーひゅー。


なぜ?


周囲の視線に顔面から火炎を放射しそうになりながら自問する。


わたしは、押しに弱いほうじゃないのに。


リヤカーに収まっていた。


「出発進行!」


得意気にシュプレヒコールを上げ、男がペダルを踏み込む。


「うっ」


ダメージが残っていたようだ。


リヤカーは滑るように走りだした。


赤面してうつむいたわたしを乗せて。


おどろいたことに、リヤカーはとても乗り心地が良かった。


ぴたりと水平を保ったまま、滑るように走る。風が頬をなぶる。


バカなやりとりの間に夜の帳が落ちていた。


星がまたたき始めている。


「悪くないだろ?プラネタリウム標準装備、自転車けん引リヤカー」


「はずかしいのを除けばね」


「慣れるって」


「慣れるほど乗りません」


「おれはしつこいからな!」


「しつこい男は嫌いよ」


「うっ」


自分の声から硬さが薄れていくのを自覚した。まいっか。


流れ去る周囲の景色は、視点が低いからか、いつもと違う不思議な感じだった。


「地球はプラネタリウムさ。星はいつだってここにある」


男が頭上を指差す。


「それから、ここにも」


自分の胸を指差した。


「そうね」


「ビール飲もうぜ、おれの部屋で」


「駅前の店で」


「ちぇ、まいっか」


まいっか。



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