冷たい雨の降る中、約3万5千人のランナーが都心を駆け抜けた28日の「東京マラソン」では、今年もさまざまな人間模様が交差した。(安岡一成)

 「彼女、テレビ見てくれていたかな…」。都庁前のスタートから30キロの地点。車いすの部に出場したアテネパラリンピック金メダリストで福井市職員の高田稔浩(としひろ)さん(44)は時間制限で失格直後、こうつぶやいた。

 両足の筋肉が衰える難病を患う高田さんは、アテネと北京のパラリンピックに2回出場し、3色計7個のメダルをそろえた。今回は自身の調子を確かめることのほかにも“一大イベント”があった。初恋の相手と30年越しの対面だ。

 中学1年のとき、学習雑誌の仲介で千葉県に住む同い年の少女と、文通を始めた。送られてきた写真にはスレンダーで都会的な少女の姿。純朴な少年の恋心に火がついた。

 しかし、次第に疎遠となって文通は途絶。返信はなかったが、年賀状だけは送り続けた。東京マラソンへの出場が決まったころ。突然、彼女から電話が鳴った。連絡が途絶えていたのは、彼女がずっと病気だったからだった。

 「東京マラソン出るよ」

 「じゃあ、会いましょうよ」

 マラソン前日、30年の時を隔てて再会がかなった2人は静かに当時のやりとりを懐かしんだ。

 この日、打ちつける冷たい雨に、タイヤを回す腕の感覚を奪われ、本来の走りはできなかったが、棄権は考えなかった。「必死だった。彼女に頑張っている姿を見てほしかったから」。彼女にメールを打つ高田さんが、少年のような照れ笑いを浮かべた。

 女性の最高齢ランナーとなったのは東京都大田区の無職、渡辺澄子さん(74)。今回は3回目の出場だが、いつも年下の夫、秀司(ひでじ)さん(69)と一緒だった。

 マラソンのほか、スキーやダイビングなどスポーツは共通の趣味。平日はジムに通い、週末は多摩川沿いを走って体を鍛えている。

 走っている間、秀司さんは、時計を見ながらペースを計り、三歩下がった位置から澄子さんの呼吸や調子を気遣う。

 こんな“内助の功”に澄子さんは、「主人が引っ張ってくれたから走れた。1人だったらとっくにやめています」と感謝を忘れない。

 最後は手をつないでゴールイン。「よく頑張ったな」「ご苦労さま」-。今回のタイムは5時間55分55秒。5のぞろ目にも、夫婦の“イーブン”な関係がうかがえた。

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