2016-07-21 23:59:26

欧州経済をみながら色々と考えてみた

テーマ:雑談

 世界はますます複雑化して、混沌としている。ジョージ・オーウェルは、著書「1984」の中で、ビッグ・ブラザーの世界を描き、全体主義国家における世界観を鮮やかな筆致で表現した。国民にとってビッグ・ブラザーとは、独裁者であり、民主化に舵をきるために、打ち砕かねばならない存在であった。人々は恵まれない現状を打破するために西側諸国に憧れ、資本主義体制確立に向けて突き進んだ。ある意味ではこの行動は正しく、一部の者を救い出したことは間違いないだろう。しかし「アラブの春」に見るように、近年の民主化運動では、独裁者を打倒したあとに民衆がみたものは、さらなる混沌という悲しき現実であった。現代は権力構造が複雑になっており、一人の人間が権力の全てを掌握し、その個人を打ち倒すことで、その権力から解放されるといったようなシンプルな世界ではなくなっていたのだろう。そしてこれほどまでに民主化運動が拡大したのは、ネットワークが世界に張り巡らされ、パソコン一つで誰でも容易に世界にアクセスできるようになったことにより、独裁者が情報をコントロールし続けることが難しくなってきたからかもしれない。また現代は無数の小さな権力がそこかしこに存在し、政治・経済をはじめとして、あらゆる分野でグローバル化が進んでいることが理由としてあげられるだろう。

 経済のグローバル化は、確かに人々の生活水準を向上させ、様々な問題を解決に導いたけれども、一方で先進諸国における簡易的な職務は高度化したシステムに奪われ、他国の低賃金の人々に移譲された。

 英国でEU離脱が起きたことは、多くの人々に衝撃を与えたけれど、世界中に蔓延した職を失うかもしれないという不安が噴出しただけかもしれない。英国政府は貧困層の社会保障給付を減額する一方で、すでに十分に低い法人税減税に着手しようとしていた。これではブルーカラーの有権者からの支持を得られようはずはない。さらに移民問題が根強い欧州において、パリのテロ事件なども根底にあるのだろうけれど、英国民のグローバル経済に対する不安が大きく影響しているのだろう。生産性の向上による経済活動の活性化よりも、競争力を失ってでもローカリゼーションに向かおうとする強い意思がそこには見える。資本主義の世界は良くも、悪くも、低コストで商品・サービスを提供できる「場所」を求め続ける。多くの金融機関では、約10年前から急速にコスト削減を押し進め、アジアの金融センターを日本から香港、シンガポールに移した。関係者以外にとっては、これがどれほど衝撃的なことだったかは、イメージできないかもしれないけれど、これは大きな事件だった。日本のビジネスであるにも関わらず、あらゆる意思決定が日本のみでは執行することがかなわず、香港、シンガポールに勤務する上級管理者にお伺いをたてねばならないことになったのである。さらに近年は、金融規制の影響もあり、さまざまな業務をインドなどの、さらに低賃金の地域に移ろうとしている。

 では英国のEU離脱の決定は正しかったのか。年金生活者や単純労働者にとってみれば正しかったのかもしれないが、他国がグローバル経済の敷いているなかで、この決定は、若年層、シティで働く人にとっては大きなダメージになることは間違いない。いまコストをかけることに敏感な金融機関は、英国からその場所を移すことになるどうし、若年層の労働者は、居住区を他地域に移すだろう。

 欧州金融の中心であるシティの不確実性は、もうすでに顕著にあらわれている。イタリアでは銀行の経営問題が泥沼化しており、イタリア国債の足かせとなる現状が継続している。そして長期的な欧州の経済停滞は、イタリアにその原因があると考えられていて、市場から冷ややかな視線を浴びている。生産性の向上が長期的な経済発展に欠かせないことは周知の事実であるが、グローバル化を否定することは、コスト競争力をさらに減価させることに他ならない。生産性の伸び率を向上させるためには、企業投資をしたり、労働力の質を高めることが重要な選択肢であることは疑いのない事実であるが、イタリアにおいて、高等教育を受けた人材は10数パーセントに過ぎず、今後数年間で急激な回復は見込めないことを示している。

 社会主義国家であるか、資本主義国家であるかどうかに関わらず、規制が緩やかで、汚職がなく、高度なビジネスセンターが存在することが、多くの多国籍企業を呼び込む要因であることは広くしられている。これに対して、英国がEUに留まることにNOをつきつけたことは、関税が高くなり、規制がかかることを意味し、ビジネスに負の圧力がかかることになるだろう。

 またもっと言えば、税金が安くて政府支出が少ない国がビジネスのしやすい国であるだろう。だけど残念ながら日本は正反対の道に進んでいる。それはさておき、英国がEU離脱を決定したいま、反EU感情が強い国は、イタリア、ついでフランスであるが、これらの国が税金が高くて政府支出が大きい国であることは偶然でないだろう。英国もこれからそういった国に埋没していくか否かは誰にも分からないけれど、多国籍企業にとって進出しづらい国になることは誰の目からも明らかだ。現代の問題は、もはや「大きくて潰せない企業」から「大きくて潰せない国家」にその様相を変えてきている。そんなイタリアでさえも破綻したら多大な経済インパクトがあろうことは、想像に難くない。

 資本主義の仕組みは、そもそも安価な労働資本市場を見つけ出し、製品やサービスを創出して販売するというインセンティブに基づいて発展してきた。それが過去の日本であり、中国であったわけだけれど、そろそろ限界に近づいてきている。その根拠として、米国経済は、リーマン・ブラザーズの経営が行き詰る前から急降下しており、資本主義の仕組みそのものが変革の必要性がせまれていた。現代のビッグ・ブラザーの世界は、全体主義国家から資本主義国家打倒に向かっているが、打ち崩したあとの夢の場所はまだ見つかっていない。これが一番の問題であり、人々に不安をもたらしている要因となっている。欧州にとって、EUに反旗を翻すことが、正解に向けた第一歩なのだと考えている人々もいるだろうが、一部のひとを除き、いまより不幸になる可能性のほうが高い。では打倒すべきモノは、村上春樹が「1Q84]で主張したようなシステム化して張り巡らされた複雑な何かなのだろうか。それも少し違う気もするし、正しいのかもしれない。そうした「迷い」は政治の世界でも見られる。これ以上財政支出の余裕のない先進諸国の政治家は、良くも悪くもポピュリズムに傾倒してきている。本来国会議員は、地方議員とことなり、国家の中長期的な成長を見据えて政策を提示するために、一般大衆にとって、その瞬間は「わかりづらい」意思決定をしていくものがどうしても多くなってしまうはずだ。しかし米国のトリンプや日銀の政策をみても理解できるように、近年は人々が短期的に「わかりやすい」政策を掲げて支持者を募っている。人々は一時的に高揚し、満足するかもしれないけれど、瞬間的に経済が上向き、賃金が向上し、生活水準がよくなるような魔法の杖は存在しない。トルコのクーデター失敗によってさらなる世界経済混沌に向かっているけれど、これからぼくらの生活はどうなっていくのだろう。そんなことを考えながら、ビールを飲んでいる。日本の夏は蒸し暑すぎますな。やれやれ。





























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