読者のみなさまには、いつも私のお話を楽しみにしていただいて、ありがとうございますひらめき電球


さて、今回はリクエスト作品をお届けしたいと思います。


リクエスト第8回は・・・

もうご本人も忘れちゃったかもしれませんが、twoさんからのリクエスト合格


★1吻で、直樹とお見合いをした大泉沙穂子さんのその後を二次小説にして欲しいとのリク

エスとを、もう大分前にいただいていましたが、その内キューブにお話の神様が降りてきた

ら~ということで気長にお待ちくださいとのお返事をしていました。


そこで、今回沙穂子さんと直樹のさりげない再会をテーマに直樹編、沙穂子編の2つのお話

ができあがりましたので、どうぞお読みください・・・

twoさんが希望していたお話、解釈とは少し違ったものになってしまったかもしれませんが、

お楽しみいただければ幸いです・・・ひらめき電球



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   ~恋のあとさき-Naoki Version-~



―あっ・・・あれは・・・


それは、珍しく仕事帰りに琴子と待ち合わせをした夕方のこと・・・


オフクロへのおみやげを買うからと、小さなケーキショップに入った琴子を、オレは店の前

に立って待っていた。
目の前を行き来する車の流れを眺めるともなしに眺めていると、道路を挟んで反対側の大

きなホテルのエントランスに、白い高級車が入って行き、華やかな衣装に身を包んだ女性

の前で静かに停まった。


ふと、その女性を見ると、相手もオレを見ていることに気付いて、オレははっとした。


―沙穂子さん?・・・


それは、経営難に陥ったオヤジの会社を救うため、自分の気持ちを偽ってお見合いをした

相手・・・
あれから、もう6年くらいは経つだろうか・・・遠目に見ても、彼女は清楚な雰囲気はそのま

まに以前よりも、ずっと美しく華やかになっているように見えた。


オレは、微笑みながら彼女に頭を下げた。
彼女は、そんなオレに一瞬驚きの表情を浮かべてから、すぐに同じように微笑んで見せた。
何か言いたげに、オレをみつめている彼女に、車のドアを開けて待っているホテルのドアボ

ーイが困ったような顔を向けている。


「入江君、お待たせ~!ねえ、ソフトクリーム買っちゃった・・・えへへ」


そんな時、琴子が店から出てきて、手に持っていたソフトクリームを見せるようにしてオレの

前に立った。
そして、横を向いているオレにつられるようにして、琴子がオレの視線の先へと顔を向ける。
「ん?・・・誰か知ってる人でもいるの?・・・今、挨拶をしていたみたいだけど・・・」


オレは、すぐに琴子の肩に手を回して、ホテルに背中を向けさせると、「ちょっと知り合いが

いたんだ」と言って、歩き始めた。


「ふーん・・・ねえ、それよりこのお店のソフトクリーム、すごく美味しいんだよ~入江君もひ

と口食べてみて・・・」
何も知らない琴子は、手に持ったソフトクリームをオレの前に突き出す。


「いらねーよ・・・」
オレは、顔をしかめて横を向いた。


「ええ~ひと口でいいから、食べてみて!」


顔に付きそうな勢いで突き出されたソフトクリームを、オレは仕方なくひと口食べてみる。


「ねっ?美味しいでしょう?・・・ほっぺ落ちそうでしょう?」
琴子はオレの感想も聞かずに、はしゃいだ声をあげながらソフトクリームを舐めている。
オレは、呆れた顔を見せながら、琴子が反対側の手に下げているケーキの箱を持ってやる

振りをして、そっと後ろを振り返った。
すると、沙穂子さんの乗り込んだ車が、オレ達とは反対方向に走り去っていくのが見えた。


彼女は、あれからどうしたのだろう・・・
大泉グループを担って行くような相手を見つけたのだろうか・・・
あの時、オレが彼女を傷つけたことは確かだ・・・できれば、オレのことなどすぐに忘れて、

彼女のことを大事にしてくれる相手を見つけてくれていればいいとオレは思った。


―ふっ・・・だからと言って、今の今まで思い出しもしなかったのに・・・


オレは、随分と都合のいいことを考えている自分を自嘲気味に笑うと、琴子の肩にかけた

手に少し力をいれた。



「ねえ、入江君?・・・何かあった?さっき見た知り合いって誰だったの?」
琴子が、不意にオレの顔を覗き込むようにして聞く。


「えっ?・・・どうして・・・」
オレは、少し驚いて琴子の顔を見る。


「う~ん・・・ケーキ屋さんに入ってる間に、入江君がなんだかしんみりした顔になっちゃっ

たから・・・」


オレは、マジマジとオレの顔を見つめている琴子に、意地の悪い笑みを返しながら言った。
「そうだな・・・逃がした魚は大きかったかなって思ってるんだよ・・・」


「えっ?・・・なにそれ・・・」
琴子が、不審げにオレを見上げる。


「それより、溶けちゃうぞ早く食べちゃえよ・・・」
オレは、琴子が手に持っているソフトクリームを指差して話をごまかした。


「ああ~本当だ~手に付いちゃった・・・」
琴子が、手についたソフトクリームを拭こうと慌ててハンカチをバッグから出そうとしている。


「何やってんだよ・・・のんびり食べてるからそんなことになるだろ!ほら、かしてみろよ」
オレは、琴子からソフトクリームを取り上げると、勢いよく口に運んだ。


「ああ、ダメ~そんなこと言って、入江くんも本当は食べたかったんでしょう?返してよ~」
琴子が、あわてて手をのばして取り返そうとする。


「もう、遅いね・・・食べちゃったよ」
オレは、ニヤリと笑ってコーンカップだけになったソフトクリームを琴子に見せた。


「ひどい~~」
琴子が膨れた顔でオレを睨む・・・
空になったコーンカップを覗き込む琴子の、ガッカリとした顔にオレは思わず吹き出していた。


そうさ・・・
こんな風に、他愛のない時間があればいい。
自分のやりたいことが続けていければいい。


オレには、社長室の革張りの椅子も、運転手付きの白い高級車も、増してや美人で聡明な

妻も必要なかった。


―琴子がそばにいれば、あとはどうだっていい・・・


結局は、いつでも答えは同じ。
他に変えられるものは、どこにもない。


ただ、やはり願わずにはいられない・・・
6年前、オレのことを好きだと言ってくれた彼女が、今幸せでいてくれることを・・・


たくさんの大きなものを背負っている彼女だからこそ、それを包んで余りある愛情が彼女に

注がれていることを・・・



                                            END


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



   ~恋のあとさき-Sahoko Version-~


―あっ・・・あれは・・・


それは、ずっとお付き合いをしてきた彼からプロポーズをされた日の夕方のこと・・・


おじい様が決めたお見合いをしてからすでに1年が過ぎようとしていた。
彼は、とても誠実で、優しくて、何よりも私を愛していると言ってくれた。
私も、彼がとても好きだった・・・おそらく、あの初恋以来初めて心動かされた男性のように思

う・・・ただ、私はすぐに返事をせず、彼とお茶を飲んだラウンジを後にした。
彼と結婚することに抵抗はないのに、なぜかずっと私の心を掴んで離さない何かが、私にそ

の場で「はい」と答えることを拒んでいるように思えた・・・


そして、ホテルのエントランスで迎えの車が来るのを待っている時に、”彼”を見つけた。


―直樹さん?・・・


それは、まるで今の私の心を見透かした神様が、私を試すために見せたまぼろしのよう・・・
決して駆け寄ることの出来ない通りの向こうで、6年前と少しも変わらない”彼”は、ひとり人

待ち顔でたたずんでいた。


私はいったいどのくらい直樹さんの横顔を見つめていたのだろう・・・
私を迎えに来た車を目で追っていたらしい直樹さんの視線が、一瞬私の前を通り過ぎようと

して、不意に止まった。


はっと息を飲む表情・・・そして、思いもよらずその顔に浮かんだ微笑み・・・
まるでスローモーションのように、直樹さんが私に向かって頭を下げる仕草が、不思議と時

の流れを感じさせた。
それでも、直樹さんがすぐに私のことをわかってくれたのが嬉しくて、私は懸命に笑顔を返

した。


その時だった・・・


直樹さんの後ろの可愛らしいお店から、女性がひとり弾むように飛び出してくると、直樹さん

はその女性の肩に手を掛けて、歩き始めた。


それが、琴子さんであることはすぐにわかった。


私は、2人とは逆方向に走り出した車を少しの間路肩に止めさせて、去っていく二人の後姿

を眺めていた。
二人は時に肩を寄せ合い、時に見つめあいながら、歩いていく。
琴子さんの笑顔が、今の二人の幸せを物語っている。
ひとつのソフトクリームを、二人で分け合う姿に、私は自分が自然と微笑んでいるのを感じ

ていた。


道路を隔てて、微笑み合った瞬間が蘇る・・・


出合った頃の直樹さんは、決してあんな風に穏やかに笑う人ではなかった。
私がすぐ隣にいても、決して寄り添って来ない心は、いつも違う誰かを思っていた。
どんなに私が見つめていても、さりげなく逸らしてしまうその視線は、いつも違う誰かを追っ

ていた。
何か物憂げで、何かに急き立てられているようで、いつも真っ直ぐに前をにらみつけている

・・・そんな人だった。


それでも、私は直樹さんに初めての恋をした・・・


あんな気持ちは初めてだった。
見るもの全てが輝いて見えた。
一緒にいられるだけで幸せだった。
毎日がドキドキの連続で、全てが直樹さんを中心に回っていた。


あんな恋を、もう一度してみたいとずっと思っていた。
そして、初恋を忘れてやっと見つけた新しい恋・・・


そう・・・私がプロポーズにすぐ返事ができなかったわけは、そんな恋に胸ときめかせた日々

を忘れられなかったからなのかもしれないと、その時ふと思った。
しかしたった今、結婚することで、恋が終ってしまうわけではないことを、琴子さんの幸せな

笑顔が教えてくれた・・・


―結婚しても恋は続くのね・・・


時の流れが風化させた直樹さんへの想いと、今の幸せが心の中ですれ違う・・・
私は、走り出した車の中から、おじい様に電話をかけた。


「もしもし、おじい様?・・・私プロポーズされたの・・・はいとお返事してもいいでしょう?・・・」


おじい様の嬉しそうな声が受話器から聞こえ、車の窓から見える景色がいつもより輝いてい

るように見えた。
そう、それはまるであの初恋の頃のように・・・



                                            END


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


さて・・・いかがでしたかはてなマーク


実はこのお話、最近テレビで流れているあるCMを見ていて、思いついたお話なんですにひひ


お見合いをしてから5,6年が過ぎて、直樹も沙穂子も成長しましたね・・・

ほんの一瞬の再会がもたらした直樹、沙穂子それぞれの胸の内に納得していただけれ

ば良いのですが・・・


最近、twoさんあんまりコメには来てくれないみたいだけど、ここは見てくれてるかな~?

ぜひ、読んでもらえたら感想聞かせてくださいね~(*^^)v



次回もどうぞお楽しみに音譜


コメレス遅れててすみません・・・明日には必ず!




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