入金の可能性が不明な巨額な賠償金請求権の会計処理
テーマ:会計(注・・・書いてみると非常に恥ずかしい文章になってしまいましたので、会計士及び会計の専門の方は読まないでください
)
いつも(といっても最近なかなか読む時間がないですが)参考にさせて頂いています、「ビジネス法務の部屋」さんの2008年10月7日(火)のエントリー「株主代表訴訟(責任追及の訴え)における素朴な疑問 」の最終段落で、巨額賠償請求権が発生した場合の会計処理についての疑問が投げかけられていました。
質問の概要は、最高裁判所の決定で、蛇の目ミシン社が旧経営陣に対して請求した損害賠償金(583億円)が認められたが、蛇の目ミシン社はこれをどのように会計処理するのか?というものです。
この質問は、なかなか興味深く、会計士の間でもいろいろ意見が出てくるのではないかと思われます。今度時間があるときに他の会計士の意見も聞いてみようかなと思っています。
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この質問に対して、私の個人的な見解では現時点では以下のように考えています。
(本当は直感的に結論が思いついたのですが、監査現場で説明するとした場合を想定して、細かく思考過程を書いてみました。)
まず、何も考えずに普通に会計処理をするとすれば、こんな感じでしょうか。
(借方) 未収入金 583億円 (貸方)特別利益 583億円 (不課税取引)
で、これがこのままで期末決算を迎えると、会計監査で「B/S(貸借対照表)に計上されている未収金が多額ですが、これは何ですか?回収予定は何時ですか?回収できる可能性はどの程度ですか?」という話になると思われます。
また、先にP/L(損益計算書)を見たとすると、「この特別利益(損害賠償金)は入金があったのですか?実質的に実現していない可能性はないのですか?」という話になると思われます。
(本来は後から考えればいいのですが、思い浮かんだままに進めて、まず表示についてですが、)
まず、未収入金サイドから検討するとすると、未収入金についてはワン・イヤールールで流動資産と固定資産とに分ける必要がありますので、その検討が必要となります。
もし約定(覚書等)により返済期日が決まっていれば、それに基づいて分けることになるでしょうが、損害賠償金のケースでは通常期間の設定はないと思われますので、流動・固定に分けられないと思われます。
そうなると、実質判断になりますが、金額が巨額で1年内の入金可能性が高くなければ、保守的な観点もあわせ、固定資産(投資その他の資産)で「長期未収入金」とすべきという意見がでると思われます。
(評価についてですが、)
非常に重要な問題としては、未収入金の評価(回収可能性≒貸倒引当金の設定)を考える必要があります。
個人に対する債権の評価は、言い換えるといくらぐらい回収できそうかということになりますが、それについては、その個人の財政状況その他入手し得るあらゆる情報を総合して判断することになると思われます。
で、今回のように巨額の請求となった場合には余程の資産家でない限りほとんど回収できないのではないかと思われます。
そうすると、回収可能見込み以外の金額については、貸倒引当金として設定すべきということになるでしょう。
(ここで、再び表示の話に戻りますが、)
貸倒引当金をほとんど積むということは、実質その債権は「破産更生債権等」に該当するのではないかということを検討する必要がでてきます。
これについて、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項について(平成6年度版)(企財審査NEWS第6―1号) 」により、破産更生債権等について長期未収入金等の内容が必ずしも良くわからない勘定科目で表示することのないよう注意がされていますので、当該事案の債権については「破産更生債権等」(「等」に該当するのでしょうか)で表示した方が良いのではないかという意見がでると思われます。
(資産性について)
もし、破産更生債権等で表示すべきとなると、当初の仕訳は
(借方)破産更生債権等 583億円 (貸方)特別利益 583億円
なの?ということとなり、そもそも特別利益は実現してるの?という話になると思われます。
(P/L特別利益の実現について)
一般的には、損害賠償請求について裁判所から認められると、その時点で法的権利が生じますので権利が発生した≒利益が実現した、ということでP/Lに利益計上ができると思われます。
しかし、現金等での回収が非常に難しい債権の発生でも利益の実現と言えるのか、という問題が生じてきます。
ここで、実現の要件を考える必要がありますが、「会計学辞典(神戸大学会計学研究室編、同文館出版)」によると、要件として「伝統的には、(1)財・用役の顧客への提供、及び(2)それによる現金もくしは現金等価物の受領」とあり、また概念を拡大するとしても「(1)当該企業実態が当事者である市場取引の存在と、(2)それにもとづく客観的で測定可能な対価の確定」とされています。
ここで、今回のケースをどう判断するのかは意見が分かれるところかもしれません。
これについて、私は今回程請求権が巨額になった場合、入金の可能性が極めて低いと判断できる可能性があるため、その場合には当該債権もはや「現金等価物」とはいえないと判断し、裁判所の決定は「測定可能な対価」の発生と結びつかず、実現したとは言い難い状況であるといえるのではないかと思われます。
以上より、これらを総合的に考えると、裁判所の決定時点で未収入金及び特別利益の計上は難しいのではないかと思われます。
(ではどうするのか)
それではどの段階で認識するのかということになります。
それについては、実際に損害賠償金が入金(又は資産価値のあるものを受入)した時点で、実現の要件を満たしたことになり、利益を認識することになると思われます。
ただし、請求先の個人の資産状況から確実に入金されると見込まれる金額がわかれば、その時点で入金見込額で利益(+未収入金)を計上することになると思われます。
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若干余談になりますが、本来はここで法人税法の取扱いも検討しておく必要があります。
基本的には、法人税法においても会計と同様の計上でいいと思われますが、実務的に考えると、もし巨額損賠賠償金の請求権が確定した時点で益金に算入しないといけなくなったりすると、会社は法人税の納付資金をどうするのかという話になってしまいます。
そこで、法人税上でも会計処理と同様の方法で問題ないということをしっかりと確認(規程をおさえておく)しておくことが重要になると思われます。
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で、最後にそもそも論になりますが、
そもそも、未収入金は「債権」ということで、債権の会計処理は「金融商品会計基準」に従うことになります。
「金融商品会計に関する実務指針」の「金融資産及び金融負債の発生の認識 当初認識時の測定」では、「29. 金融資産又は金融負債の当初認識は,当該金融資産又は金融負債の時価により測定する。」とあります。
これに従って、会計処理を行うとすると、
(借方) 未収入金 “時価” (貸方)特別利益 “時価”
となります。
こうなると問題は時価(≒債権の回収可能見込額(の現在価値))がいくらなのかということになりますが、これについてはおそらく「不明」ということで、保守的に「ゼロ」と考えた方がベターということになる可能性があります。
そうなると、最終的に会計処理は、現金等(の資産価値があるもの)で入金があった時に、
(借方)現金等 “入金額” (貸方)特別利益 “入金額”
となるのではないでしょうか。(前段と同じ結論です。)
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以上、実際の詳細な情報がない中でのざっくりとした個人的な意見ですので、参考程度でお願いします。
しかし、普段、なかなかない事例ですので、実際にこのような事例に該当してしまうと戸惑ってしまうのではないでしょうか。監査実務でこのような事例を扱うことになった場合は、監査チームでの十分な検討が不可欠になると思われます。
(toshi様こんにちは。コメント欄に記載しようと思ったのですが、今回も長くなりそうでしたので自分のブログに記載しました。どうもすみません。)

















1 ■無題
特別利益が実質的に実現しているかという記述に関して教えていただきたいのですが、利益の実現は、費用性資産が貨幣性資産に転換するときに問題となると思うのですが、未収入金は貨幣性資産だから利益の実現・未実現は問題とならず、回収可能価額で評価すればよいということには、ならないのでしょうか?