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ヘッジファンドのVW株空売りに念仏を

 金融災厄が深まり世界の自動車産業でも生き残り再編をめぐって“偶有性の嵐”が吹き荒れている。2008年10月26日(日)に独フォルクスワーゲン(VW)の筆頭株主ポルシェ(42.6%)はさらに31.5%追加取得可能な差金決済オプションの保有を公表し2009年中に75%出資(子会社化)の意図を示した。ポルシェの資本参加(2005年、20%)以降上昇していたVW株価の下落を見込んで12%ほど空売りを仕掛けていたヘッジファンド・投機筋(約100社)は、ニーダーザクセン州が20.1%保有しているため浮動株が5~6%しかない市場で、前週末210ユーロから10月27日(月)520ユーロ、28日(火)945ユーロと2日間に348%も暴騰するさなか買い戻し決済に踊らされ約300億ユーロの大損失を蒙った。
 市場が落ち込む状況で火事場泥棒的に空売りを浴びせて荒稼ぎしようとするヘッジファンド・投機筋を失墜させたゲルマン魂に喝采を送りたい。資産の自己増殖目的のみで自由市場に集るヘッジファンド・投機筋は社会になんらの便益も恩恵ももたらさないばかりか世界に難儀を見舞いもする。寄生から共生へ頂門の一針たらんことを望む。

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