≫オルセー美術館展の記事 の続き
前回の記事で、「ルノワールの絵を真剣に見たのは初めて」みたいな事を書きましたが、「クリーブランド美術館展」で「ロメーヌ・ラコー」という肖像画を見てましたよ。10分近くかけてじっくりと。
ルノワールの名前と結びつかなかった。良い絵ですよ、あれも。
では本題に戻りましょう。
「Ⅱ 特別な場所」の区画の後半には数点、写真作品が並んでいました。
解説文には『写真の発明以来、画家達は写真と戦うことを余儀なくされた』『感じたままを描く印象派の発展は写真との差別化を意識したことが大きい』みたいな記述があり(『』内はうろ覚え。図録にこの記述を見つけられない・・・)、「印象派っていうのはそういう側面もあるのか」と感心しました。
思えば、僕は「幻想美術」とか「シュルレアリスム」の作品から美術にのめりこんだんです。それらの作品の魅力は写真には撮れないものですよね。風景画も「良いなー」と感じることが多いのですが、僕が「良いなー」と思う風景画って「まるで写真のような写実画」ではないんですよ。リアルなだけの風景画なら、極端に言うと「直接見た方が感動するんじゃないの?」って思っちゃうんです。「印象派の発展と写真の関係」というのがあるなら、僕の中では非常に納得がいきます。
簡単に言うと、「僕はモネの絵が好きだし、モネの作品の魅力は写真的ではないよね。」という漠然とした思いに答えを示された気がしたんです。(ああ、この数行くどいね、ちょっと)
では本題のさらに中心へ
「Ⅲ はるか彼方へ」では作家が新たなモチーフ、さらには心の安住を求めて旅する「彼方への逃避」がテーマになっています。
フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルのゴッホの寝室」
僕は本質的に天邪鬼なので、以前は「みんな『ゴッホはすごい』っていうけど実際どうなのさ」みたいな思いがありました。逆説的に「時代に左右されない普遍的な魅力があるなら、老後の楽しみに取って置こうかな」と思っていた時期もありました(どちらにしろ、ひねくれてますな)。
多分、子供の頃に見た、「日本企業による、ゴッホの“ひまわり”高額落札」のニュースが僕をひねくれさせたんでしょう。「芸術性の高さって金額で決まるの?」と思った記憶があります。でも、良く考えたら、これってゴッホの責任ではないですよね。
クリーブランド美術館展でゴッホの「サン=レミのポプラ」と「大きなプラタナスの木」を見たとき、あっさり
「やっぱり、良い物は良い」
と思って、この日は「アルルのゴッホの寝室」を見るのを楽しみにしていました。
ゴッホの作品は塗りが厚いので、本で見るのとは違いますね。実物の迫力は圧巻です。
色がすごい。色と色の関係・配置の仕方がすごい。
図録解説によるとゴッホは「私はこれらさまざまな異なる色調によって、絶対的な休息を表現したかったのだ」というコメントを残しているそうです。
今の僕にはどうすごいか、これ以上踏み込めないですね。アンリ・マティス(この人も色使いがすごい)とか抽象画とかも沢山見てからもう一度見たいです。
他の作品がつまらなかったとは言わないですが、ここの区画では「この作品が別格」と感じたので、他は触れません。
≪アルルのゴッホの寝室≫もマグネットを購入。どこに貼ろう。
「Ⅳ 芸術家の生活」は作品自体よりも当時の作家同士がお互いのアトリエを行き来したり、一つのアトリエに大勢で集まっていたという事実が一番面白かったです。
会場では額の横に「描かれているどの人物が誰か」という説明のパネルもあるので、好きな作家の姿を見つけるのも楽しいでしょう。(図録にもこの図解が欲しかったです。どっかにある?)
アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック「ポール・ルクレルク」
タッチが独特ですね。ロートレックは名前を聞いたことはあったので、「この画がロートレックかぁ」と確認する感じ。モチーフがおっさん(失礼!)だったので、別の画も見てみたいです。
エデゥアール・マネ「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」
マネの代表作の一つで、本展覧会の図録の表紙でもあります。(額横の解説文にある)ポール・ヴァレリーによる、この作品への賛辞の言葉も眩しく、絵画史上に燦然と輝く作品なのでしょう。
でも、実物を見てもあんまりピンとこなかったんですよね。「マネが僕好みでない」と言う言葉で片付けていいものだろうか。もう一度見といたほうが良いかなー?
ベルト・モリゾはマネとの恋仲も噂された女性画家。マネの弟と結婚してジュリー・マネ(≫前回の記事 で触れた、ルノワールに描かれている少女)の母親となる人です。この辺の人間関係は非常に面白いですね。
「Ⅴ 幻想の世界へ」
僕は美術にはまったきっかけが≫すぐわかる画家別幻想美術の見かた という本だったので、幻想的な作品にはこだわりがあります。
ギュスターブ・モロー「ガラテア」
彼は幻想美術の代表作家として≫すぐわかる画家別幻想美術の見かた にも紹介されていましたね。裸体の女性を美しく描いた作品としては、ルーブル美術館展(横浜美術館)で見たフランソワ・ジュラールの「プシュケとアモル」が思い出されますが、モローの作風は独特で個性的ですね。グスタフ・クリムトのエロティックさともまた違います。モチーフの面白さについては後ほど。
オディロン・ルドンの名前を知ったのはつい最近。≫一冊でわかる絵画の楽しみ方ガイド
という本で、彼の「キュクロプス」という不思議な魅力のある作品を見つけたのがきっかけです。本展覧会では、本で見た作品とは若干作風の違う鉛筆画「煙突の上の小さい悪魔」「男と輪」「2つの球体の間に座る男」の方が、カラーの作品より面白く感じられました。ルドンにはかなり興味を持ちましたよ。ちなみに本で見た「キュクロプス」という作品はギリシア神話に出てくる巨神・キュクロプスと女神・ガラテアを描いた作品。先に触れたモローの作品と同じ登場キャラだったりします。スポットを当てたのが「ガラテア⇔キュクロプス」と逆なのが面白いですね。
へオルへ・ヘンドリック・ブレイトネル「月光」、レオン・スピリアールト「月光と灯火」 両方同じ「月光」というモチーフでありながら全く違う作風の作品。ブレイトネルの「月光」は広い視野で描かれ、雄大な印象を受ける魅力的な作品です。一方スピリアールトの「月光と灯火」は「灯火のある建物越しに月を見上げる」という窮屈で眩暈を覚えるような構図が特徴。「今夜は何が起きるんだろう?」と物語の登場人物になったかのような錯覚を覚える、吸い込まれるような作品です。後者の方が僕好みかな?
なんかものすごく長くなってしまいましたが、それだけ楽しかったということ。確実に空いてるならもう一回行きたいです。
↓文中でも紹介した本。
ルノワール・ゴッホ・モネ・モロー・マネ・ミレー・ゴーガン・ルドン・ロートレックら、オルセー美術館展に関係する作家の紹介も多い本です。「アルルのゴッホの寝室」は大きい写真入で紹介されていますよ。紹介されている作品数も多く、年表も見やすいです。
あと、内容の充実具合からすると、とても安いです。
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