ある日の午後、競技会明けて、しばらく休養させてた馬を放牧したら、丸馬場で飛んで跳ねて、元気いっぱい。


・・なのは私も見てたんだけど、問題はその後。


洗い場に繋いだら、スタッフが、様子がおかしいです、と。


みたら、全身ものすごい発汗、体中はこわばり、おしっこする姿勢でも出ない。


一歩も動けないくらいの、全身硬直状態。


首から背中の筋肉は硬く盛り上がり、脾腹は巻き上がり、四肢も全てが硬直してる。


少し前掻きもするが、よくある腹痛の疝痛ではない。


引馬しますか?とスタッフ。


でも、直感的に、これは動かすべきではないと、馬房へどうにか戻す。


明らかに、異常事態。


クォーターホース(と、アパやペイント)特有といわれる、HYPPという病気が頭をよぎった。


いつも頼りにしている競走馬の獣医師が、休日にもかかわらず、駆けつけてくださって。


とりあえず、補液と、強制的に、鼻にカテーテルを入れ、胃に水を流し込み、鎮痛剤投与してもらい・・。


全身、極度のすくみのようだけど。


発症から数時間すると、四肢の硬直も、すこしだけ緩和して、ロボットみたいだけど、歩けるようになってきた。


先生にも、サラにはない疾患かもしれない、と話して、遺伝疾患の可能性もあると思い、調べてみた。



HYPPとは、Impressive (1968年)という1頭のクォーターホースから始まった遺伝疾患。


高カリウム性周期性四肢麻痺。


マッチョなクォーターホースに多い、とは以前聞いていたけど、それは


「HYPPの症状の一つである筋肥大が起こるため、これを狙って生産が繰り返されたため」 とも。


インプレッシヴが、優秀なホルターホース(体型を競う競技)であったために、その子孫は莫大に増えていったそう。


インプレッシヴ症候群 イコール HYPPみたい。




そして、その症状が今回発症した馬の症状と、酷似していたから。


また、競技会場ではアルファオンリーの飼料だったらしく、アルファはカリウムが高いので、その蓄積が今来たのかなと疑ったから・・。


詳しい友人に聞いたところ、これは、HYPPのキャリアだったら、AQHAの血統書に記載されることが義務付けられているそう。

また、登録時に、HYPPだけはDNA検査が義務付けられてるみたい。(祖先にHYPP遺伝子を持つ馬ががいた場合?)


それは知らなかった。慌てて血統書をみると、当然キャリアではなかった。


(ちなみに、うちのクオーターも全頭調べた)


まあ、キャリアだったら、まず輸入できないのかな??



でも、必ず、全てのことには原因がある。


と、私は思うから、この症状の原因を突き止めたくて。


じゃないと、今回は治まってラッキーでも、今後の対策も対処も分からないままだから。


オーナーさんにも相談して、その馬のたてがみを、アメリカの検査機関に送ってもらい、遺伝子検査(DNA鑑定)をしてもらうことに。


そして先日、待ってた検査結果が・・。


実は、Tomさんの言った通りだった。


それは、PSSM.(polysaccharide strage myopathy)の遺伝疾患が見つかったと。


多糖類貯蔵筋症。難しいけど・・。


筋肉にグリコーゲンとか、糖類を異常にため込み、すくみ、いわゆるタイドアップとか、タイイングアップとよばれる症状を引き起こしてしまうのだそう。


症状は、まさしく当馬そのもの。


対策としては、運動をしっかりすること、できるだけ放牧、ブドウ糖を少なく、脂質をエネルギー源とすること、可溶性糖分の少ない乾草をメインにすること、等・・。


などなど・・いろいろなことが分かっただけでも、今回の発病と検査の価値はあった。


再発性らしいから・・・。


この馬が、ゲルディングだったのも、不幸中の幸いだったかな。


遺伝疾患なので。


とりあえず、その後は何の異常もなく、健康に暮らしている。


だけど、詳しい友達と話してて、馬の突然死だとか、こういう、あまり例を見ない症状でも、なんらかの原因は必ずあるはず、と。



おしっこしたそうにしてて、でもしなくて、数時間後に突然死した馬の話だとか。


(排尿姿勢というのは、筋痙攣を緩和するためにとる姿勢だと言われる、とも)


突然、全身発汗、全身痙攣して、死んだ馬の話だとか。


去年聞いた話でも、生後2か月の仔馬が突然容態が悪くなり、死んでしまったとか・・。


でもそれらは必ず、何らかの原因はあるはずだから。


私だったら、できるだけ詳しいところに解剖に出して、診てもらいたいと思う。


死んだら終わり、というようなところも多いみたいだけど。


(確かに、解剖や、運搬にもプラスアルファの費用がかかるから)


でも、馬に携わっている限り、できるだけのことはしてあげたいし、その死もむだにしたくない。


そして今後の馬たちのためにも、まだまだ知識も増やしたいから。


クォーターホースが日本に増えてきたけど、クォーター特有のこんな病気があることを知らない人も、まだいるかも。


(ちなみに、PSSMは、クオーター特有ではないが、好発する、と)


私も、まだまだ、知らないことが多い。



これからもずっと、毎日、勉強です。


全ては馬のために。



















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