浅草に新しくできた劇場、浅草九劇のこけらおとし公演、ベッド&メイキングスの『あたらしいエクスプロージョン』を観てきました。

ベッド&メイキングスを観るのは、『墓場、女子高生』に続いて2回目。

今回は、敗戦後に邦画界初のキスシーンを撮ることになった映画人達の話で、6人の俳優さん達が何役も兼ねながら、にぎにぎしくもエネルギッシュな舞台になっていました。

史実を元にしていて、考えさせられるところもありましたが、俳優さん達の早変わりを楽しみながらその熱気に乗っかって観るのが正解なような気がします。


以下、ネタバレありの感想ですので、未見の方は自己判断のもとお読みください!




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2017年3月5日(日)マチネ

浅草九劇

作・演出 福原充則

出演 八嶋智人 川島海荷 町田マリー 大鶴佐助 富岡晃一郎 山本亨




物語は、戦前に戦意高揚のための映画を撮っていた枡山(八嶋智人)と、数多くの時代劇に出演してきた俳優の月島(山本亨)を柱に展開しました。

私は知らなかったのですが、映画にキスシーンを入れるのはGHQの指導だったんですね。

実際、GHQのデビット・コンデという人物が、映画の企画や脚本を検閲し、民主主義の象徴としてのキスシーンを入れるように言ったり、剣で相手を斬ることや、切腹や仇討ちのシーンは禁止したりしたとのこと。


この劇では、忠臣蔵を演じている月島達に、富岡晃一郎演じるデビット・コンデがいちいちダメだししたり、でもやっぱり月島は斬らずにはいられなかったり、とかなりコミカルなシーンになっていて笑いました。

そして、そんなにキスシーンを入れろと言うのなら、と段々暴走していく忠臣蔵。


一方、枡山の方は、戦意高揚映画を作っていたため、機材も、フィルムもGHQに取り上げられている。かつてのスタッフはほとんど戦死してしまい、復員してきたのは助監督(富岡晃一郎)だけ。

それでも、映画が撮りたい。


ある日、枡山は、街娼をやっている富美子(川島海荷)を見て、彼女をヒロインに映画を撮りたいと熱望します。嫌がる富美子を説得し、闇鍋屋(大鶴佐助)の情報で、カメラを持っている男(町田マリー)に接触しますが、この男、カメラは貸すけど、操作は自分にやらせろ、と言い張ります。


実は、この男は・・・という秘密が明かされて、戦後の引き揚げ者の苦労や、国策映画を撮っていた枡山の思い、映画を撮ることの本質のようなところまで言及されていた気がします。

枡山は、アクロバティックな方法でフィルムも何とか調達し、富美子と闇鍋屋とを主人公に、映画を撮り始めるのですが・・・


今でこそ、キスシーンなんて当たり前のことだけど、それがGHQからの指導だったのはびっくりしました。同時に、なんだか滑稽な感じもしてしまって、笑えることじゃないかもしれないけど、いや、やっぱり笑い飛ばす方が正解かも、これってコメディになりうるよね、と思ったり、「移植された民主主義」なんて言葉が頭に浮かんだり。


実際に、当時の映画人達は、どんな思いで理不尽な要求をのんでいたのかしら。

日本で一番最初にキスシーンがある映画は佐々木康という人が撮った『はたちの青春(1946年)』だそうだけど、観客も、始めて観るそれに、すごくざわざわしたのかな。

この劇では、そんなに言うなら入れてやる!日本で一番最初にキスシーンを入れるのはこの俺だ!とたくましく開き直り、映画を撮ることへの貪欲さ、そして生きることへの貪欲さ、そこから湧き出るエネルギーが満ちたラストシーンになっていました。


6人の俳優さん達の演じ分けはとても見事でした。

最初に、焼け野原に立つ枡山を演じた八嶋智人さんは、一瞬、あれ、違う人かしら?と思ってしまいました。陰影のある演技が印象的でした。同時に、月島のマネージャーも演じていましたが、こちらはいつもの軽妙な八嶋さんでした。


枡山に振り回される助監督を演じた富岡晃一郎さんは、まさにぴったり、という感じ。富岡さんは、デビット・コンデも演じたのですが、私がこの人物を知らなかったせいもあるかもしれませんが、その人物像がつかみきれなかった気はします。この人物に関しては、もう少し、じっくりと観てみたかったな、と思います。もしかしたら、あえてふんわりと描いたのかな?という気もしますが。


川島海荷さんも、戦後を生き抜くバイタリティあふれる女性をパワフルに演じていたし、町田マリーさんや大鶴佐助さんも、巧妙に何役もこなしていました。

大鶴佐助さんを観るのははじめてだったんですが、黒木華さんに似ていてびっくりしました(笑)

剣劇の俳優を演じた山本亨さんは、その堂々たる姿が素敵だった。そして、デビット・コンデの通訳を演じた時は、また全然違うので驚きました。


タイトルに「エクスプロージョン」とあるように、この作品の作り手側は、観客の感情が発火することを望んでいるとのこと。

私自身は、心がスパークするところまではいきませんでしたが、小劇場の濃密な空間で、目の前で繰り広げられる熱気あふれるお芝居を楽しむことができました。

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