イギリスに十数年暮らしている間に、私がもっと頻繁に作った料理と言えば、先週開催した第7回クッキングリッシュの会で紹介したこれです。


コーニッシュパスティー

クッキングリッシュの会

この料理はイギリス最西端の州コーンウォールの名物料理です。


現在では日本からの旅行者の中にも、コーンウォールまで足を伸ばされる方も少なくありませんが、二昔前、私が初めてそこを訪れた頃には、旅行のガイドブックにも紹介されていなかった秘境でした。


私も昔のパートナーがコーンウォール出身でなければ、土地の名前は知っていても、恐らくその地を踏むことはなかったと思います。


初めてコーンウォールに行きパスティーを口にした時、生まれて初めて食べるものなのに、その味はなぜか私にノスタルジアを感じさせました。子供の頃、精肉店の隅でおばちゃんが揚げていてコロッケの味にソックリだったのです。


似ていても当然。パスティーの中には牛肉、じゃがいも、たまねぎなど、コロッケの材料と同じものが詰まっているんですから。


この地方でこのパイが生まれたそもそものきっかけは炭坑でした。当時の炭坑夫の奥さん達は、夫のお弁当をハンカチで包む代わりにパイ生地で肉や野菜、果物、スイートを包みました。


当時のパイ生地の厚さは1cm以上あったとも聞きました。夫がそれを持って地下に潜る途中、あるいは昼時に地上から地下の夫に投げ入れる時、途中で壊れない様に頑丈にして焼いたのです。


当時のパスティーは、中が3つ4つのセクションに分かれていました。1つのパスティーの中に肉の部分、果物の部分、そしてスイートの部分などがあったそうです。


昼に肉の部分を食べ、果物の部分は食後のデザートにし、そしてカスタードなど甘いものが入った部分は3時のティータイムに取っておいたと言う訳です。パスティー1つを持って地下に潜れば、炭坑夫は一日地下で食べ物に困らず集中して仕事ができました。


また自分の好みの詰物を包んで焼いてもらったパスティーを、他の炭坑夫に間違って食べられてしまわないように、残った生地で名前のイニシャルを入れて焼いたそうです。


ここで私が紹介するパスティーは、私が何度も、何度も焼いて時には失敗もしながら、やっと作り上げたこれが一番美味しいと自信の持てるレシピを、日本で入手が可能な材料や調味料にアレンジしたものです。詰物もシンプルにミートパイ。果物もカスタードも入ってはいません。


<材料 6~7個分>

(ショートクラスト生地
薄力粉...300g
粉マスタード...小さじ1
砂糖...小さじ1
ベーキングパウダー...小さじ1/4
塩...ひとつまみ
バター、冷蔵庫で冷えたもの...150g
冷水...大さじ3~4

(フィリング)
ステーキ用肉(輸入ステーキ肉など)、細かく切る...300g
サラダ油...適宜
たまねぎ、粗みじん切り...中1/2個
にんにく、みじん切り...1かけ
じゃがいも、細かく切りでんぷん質を水で洗い流す...中1個
粉マスタード...小さじ1
ホースラディッシュ...小さじ1
小麦粉...大さじ1強
固形コンソメ、50~60mlの湯で溶く...1個
塩こしょう...適宜(こしょうはたっぷりと!)
味の素...適宜
パセリの葉、みじん切り...大さじ山盛り1

(ドリュール)
卵...1個
塩...適宜

*2013年11月27日、コーニッシュパスティ用生地の材料の内変更した部分は、新たに砂糖、ベーキングパウダー、塩を加えた点です。また、小麦粉はアメリカのオールパーポス、イギリスのプレーンフラワーでも美味しく作れます。


<作り方>

1.ショートクラスト生地を作る。薄力粉に粉マスタード、砂糖、ベーキングパウダー、塩を加えよく混ぜ合わせる。冷蔵庫から出したてのバターを加え、指で潰すようにしながら手早く粉に擦り込んでゆく。

2.粉とバターが合わさり、壊れたクッキーのようにポロポロになったら冷水を少量ずつ加え、耳たぶ位の柔らかさの滑らかな生地になるまで練る。(水の目安は、これでいいと思ってから更に大さじ1/2程の水を加える。)

3.2の生地をフォイルでしっかり包み、冷蔵庫で最低30分以上冷やす。

4.フィリングを作る。 フライパンを熱し油をひかず牛肉を炒める。赤身が消え水分が湧いて来たら、リードクッキングペーパーを敷いた皿に取り、余分な水分をしっかり切っておく。

5.汚れをペーパーで拭き取ったフライパンに油を熱し、たまねぎを1~2分炒める。にんにくとじゃがいもを加え更に1~2分炒める。4の肉を戻し、粉マスタードとホースラディッシュ加える。小麦粉を加え全体に混ぜ合わせる。

6.5にスープを加え、とろみがついたら調味料で味を整える。(こしょうの味はパスティーの決め手。思い切ってたくさん入れるのがコツ。) 最後にパセリを加え全体に混ぜ合わせたら火からおろし、皿に取って広げて冷ます。

7.オーブンを200度前後で予熱。2の生地を麺棒で4~5mmの厚さにのばし15~6cmの円形を作る。(どんぶり等を利用して型抜きすると良い。)

8.7の円形生地の中心に6を載せ左右から寄せて閉じ合わせる。詰物を入れ過ぎると煮汁が外に飛び出すので注意。合わせ目はしっかりと閉じる。

クッキングリッシュの会

9.合わせ目をにフリル柄を付け、ジャンボ餃子の様な形にする。

10.ドリュールを作る。卵に塩を加えよく溶いてあみじゃくしでこす。9のパイ全体に刷毛でドリュールを塗り、オーブンに入れ約30分またはきつね色になるまで焼く。


コーニッシュパスティーのフィリングは、通常調理せずパイ生地で包みます。しかしそうすると味見が出来ないのと、詰物が水っぽい為になかなか上手く包めません。そこで私は先に炒めて味見をしっかりし、詰物にとろみをつけてまとめ易くしています。


ショートクラストペイストリーは扱い難い生地です。ボロボロに生地が破れて上手く包めない原因は、粉が十分に水分を吸わずグルテン不足だから起こることです。


バターが溶け始める前に手早く粉を練り、粉がバターの溶けた油分を吸収する前に十分な水を吸わせてやり、冷蔵庫でグルテンの発生を促せば、ゴムのように伸縮のある生地が作れます。

クッキングリッシュの会

熱々でも冷めても美味しいコーニッシュパスティーは、夕飯の残りは翌日のお弁当に。コロッケに似た味はおやつにも喜ばれます。


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