前回に続いて久慈層群玉川層で見つかった、恐竜化石のレビューをお伝えします。

2回目は竜脚類の歯を取り上げます。^^

2012年6月当時の報道によると、大小5本(6本という記述もあり)の歯が、久慈層群玉川層(8,500万年前)の琥珀体験採掘場脇の河川から見つかました。

※2012年6月22日時事通信にて配信された写真

当時は咬耗面(噛み合わせですり減った面)の形状が巴形になっていることやカリナ側(切縁部)にも咬耗面があることから、ティタノサウルス形類のネメグトサウルス類の歯ではないかと言われましたが、現在は単にティタノサウルス類の歯という位置づけに落ち着いています。

展示されていたのは状態の良い3本でしたが、観察すると興味深い点も見つかりました。^^

まず展示されていた3本の歯とも、表面に縮緬の細かい皺があり、竜脚類の歯冠の特徴を持っていました。

歯根部の断面は左と中央の歯冠が楕円形、右の歯冠は少し潰れた円形ですが楕円とも言えなくはない形状でした。

一番大きい歯冠には側面のカリナに咬耗面が発生していることが確認できます。

これら3本の歯冠ですが、竜脚類の歯としては鉛筆型とかペグ(釘、杭)型と呼ばれるタイプなのですが、横からじっくり観察すると咬耗面の角度が微妙に違ってました。

一番大きな歯冠と一番小さな歯冠は咬耗面の角度が急で上下の歯が垂直に近い形で咬み合っていたのでしょう。一方真ん中の歯冠は咬耗面の角度が緩やかで水平に近い形で上下の歯が咬み合っていたようです。

 

竜脚類の場合、顎の可動する方向が、上下、前後、左右とそれらのコンビネーションで違うため、似たような形の歯でもすり減り方が種族によって差が出るんですね。また異歯性竜脚類は稀なため、当時の久慈には複数種の竜脚類が居た可能性が出て来ました。・・・あくまで個人的な妄想ですが ^^;

 

現在は見つかった標本の研究より、発掘調査で新たな標本を見つける方に重点が置かれているようなので、暫くは詳細が判らないでしょうが、追加標本が出てくれたらありがたいですね。^^

 

ではまた。

 

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それでは久慈琥珀博物館で展示されていた標本を、ピックアップして行きたいと思います。

最初は発見されて間もない、小型獣脚類の歯についてです。

見つかった歯ですが博物館のキャプションによると、今年の3月25日に博物館の琥珀採掘体験場脇の9,000万年前の地層から出たもので、早稲田大学の平山廉教授らの発掘チーム(発見者はインドネシアからの留学生で、早大4年のナタニエル・ルナルディさん)により発見されたものです。

標本の大きさは長さ20mm、幅、5mm、厚さは3mmで薄くてナイフ状に曲がった肉食恐竜の歯型ですが、鋸歯(ステーキナイフなどにある細かいギザギザ)がない変わった歯でした。

国内で同様の特徴を持つ歯の化石が福井から見つかっており、フクイべナトルと名付けられたというニュースは皆さんも知っておられると思います。^^

フクイべナトルは異歯性(歯の生えている場所で形が違うこと)で獣脚類なのに植物食だった可能性が高いという研究結果が出ていますが、久慈で見つかった歯については1本だけなので、そこまでの判断はまだできませんが大変興味深い発見です。

 

では詳しく見てみましょう。

表面はつるつるで、断面は薄いレンズ型です。角度を変えて観察すると、光の加減で遠心側(顎の付け根側)に急にカーブの角度が変わっていることが判ります。また観察用の拡大鏡で見る限り、近心側(口先側)遠心側共に鋸歯は見られませんでした。

テレビ、新聞、webを通して得られる写真では、展示されている画の面と同じなので裏側の状態がどうなっているのか、公にされている面が頬側なのか舌側なのか判りませんでした。展示のキャプションでもその所は触れられていないため、これ以上は現時点は無理かと諦めていたのですが、後日この面が頬側であることが判りました。

 

以前福島で被災したチンタオサウルスの修復プロジェクトに、クラウドファウンディングで参加していることはお伝えしてますが、別のクラウドファウンディングで、若い研究者さんを支援するプロジェクト、”新種のラプトルに名前を付けたい/黒須球子さん”のリターンイベントで行われたサイエンスカフェ(5月7日、8日の2回開催)で、その情報を得ることができました。

サイエンスカフェでの内容は、研究中等の理由で詳細は記せませんが、事務局のイベント公表にリンクを貼りましたので、参考にしてみて下さい。^^

 

黒須さんは今回の発掘に数日間お手伝いで参加予定だったそうですが、大発見があったため発掘作業で記者会見の準備ができない平山教授から、発表用の原稿を頼まれて結局最終日(記者会見の日)まで現地に留まることになったそうです。^^;

サイエンスカフェで見せて頂いた標本の写真には裏側(舌側)の写真も含まれ、良く見ると歯冠表面に数条の縦の皺が近心側にあり、典型的なパロニコドン型の歯であることが見て取れました。

※ Wikipedia より、パロニコドンの歯

パロニコドンは北米各地の白亜紀後期(7,500~6,600万年前)の地層から発見される小型獣脚類の脱落歯で、歯以外は見つかっていません。一応トロオドン類の歯ではないかとされていますが、幾つかの形状があり有効とされる特徴は・・・

・頬側の歯冠表面はフラットなこと

・舌側の歯冠表面に数条の縦皺があること

・鋸歯が近心、遠心側ともに無いこと

などが挙げられ、久慈で見つかった化石は時代こそ古いですが、典型的なパロニコドンの歯と思えます。

正式には平山教授の論文待ちになりますが、詳細が明らかになるのが楽しみですね。^^

 

最後にサイエンスカフェでの記念撮影

初日の方が参加人数は少なかったのですが、恐竜倶楽部のメンバー(恐竜パンテオンの高橋さんや、Asaさんなど)ともお話する機会を得られ、楽しい時間を過ごすことができました。^^

 

ではまた。

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琥珀博物館のレポ、後編は本館の展示をお伝えします。

実は本館の入口はオートゲートで、入館券がないと扉が開かない仕組みに・・・

入館の受付(発券所)が新館にしかないため、必然的に新館から見学することが多いと思います。^^;

 

本館が常設展示スペースということで、新館で展示されていた標本は通年で見ることはできませんが、本館でも久慈層群玉川層で見つかった様々な化石や、日本および世界各地から産出した琥珀を見ることが出来るようになっていました。^^

こちらは琥珀と一緒に見つかったモササウルス類の歯ですが、モササウルス類としては大きい歯なので、8mクラスの個体が当時の海には居たようですね。

また白亜紀後期の示準化石(その地質時代を代表する目安となる化石)でもあるハコエビの化石も良く見つかるそうです。

 

続いて日本各地の琥珀産地の説明が・・・

産地で意外だったのは東京都の八王子市ですかね。ミネショでも見たことないなぁ・・・

北海道の三笠からも琥珀が出るんですね。

夕張産のアンモナイト、メソプゾシアと琥珀が母岩に埋まった状態の標本もありました。考えてみれば夕張からはノドサウルス類の頭骨が見つかっていますから、中生代の琥珀が出る地層は、今後恐竜の化石が見つかる可能性大ですね。^^

ちなみに千葉の銚子でも白亜紀の地層から琥珀が出るようですが、マナーの悪い採集者に荒らされて、社会問題にもなったようです。まともな採集者なら、私有地に許可なく入ったり、露頭をつるはしで削るようなことはしないはずですが・・・ ^^;

 

続いては玉川層から見つかった貴重な化石のコーナーです。

カマキリの入った琥珀や

様々なワニの歯

恐竜では周飾頭類(角竜類と堅頭類を指す)の座骨(骨盤の一部)

などが展示されています。 ※標本の大きさは約13cm

当時の三陸海岸一帯は様々な動植物が住む、豊かな場所だったことが判ります。^^

 

続いて縄文時代以降の琥珀の流通についての展示です。

首飾りや勾玉など、古墳からの様々な出土品が出ています。日本人と琥珀の付き合いって結構昔からあったのですね。これは意外でした。^^;

 

後は工芸品の展示とミュージアムショップですが、宝石としての琥珀は余り興味がないので、私の場合は入手するとしてもミネショでしょうね。w

 

以上で2回に渡って久慈琥珀博物館のレポをお伝えしました。

小型獣脚類の歯の展示は5月末までですが、特別展は6月26日まで開かれていますので、東北に旅行される方は訪れて頂ければと思います。

 

ではまた。

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ゴールデンウイーク後半の5月4日、「宮沢賢治と恐竜」展が開催されている、岩手県久慈市久慈琥珀博物館へ行って来ました。

まずは新館へと向かい、入場手続きをして見学スタート。

新館のエントランスには恐竜ロボがお出迎え。^^

そして某テレビ局・朝ドラの紹介展示が・・・

最終回で出て来た”箸置き”もしっかりと展示されています。w

 

1階の展示室は幾つかのコーナーに分かれていて、琥珀が出来上がる過程や収集から加工までの手順、琥珀の由来や神話について、学習できる展示となっています。

また琥珀と一緒に産出する化石についても説明があり、久慈層群玉川層が今から 8,500万年前の汽水域~浅海堆積層であることや、ワニやカメ、恐竜化石が産出する地層であることが解りやすく展示されていました。^^

 

2階の展示室は通常ギャラリーとなっていて、美術工芸品を展示しているそうですが、特別展が開催される期間は企画展会場として模様替えを行っているとのこと。

その2階展示室へ上がる階段前には、企画展のポスターが・・・

”宮沢賢治”は岩手県を代表する作家ですが、子供の頃から石や鉱石集めが好きな少年だったそうです。

やがて農学校の教師になると、生徒たちを連れて花巻市の北上川河畔にて植物の化石や、日本初となる偶蹄類の足跡化石を発見するなど、日本の古生物学にも寄与していたのですね。

また、当時の日本では恐竜の化石が出るなんて思われていなかった時代に、自らの作品に恐竜(竜脚類)を登場させるなど、太古の時代に思いを馳せていたのかも知れません。^^

くしくも宮沢賢治が亡くなって45年後に、日本初の恐竜化石である”モシリュウ”の上腕骨化石が岩手県の宮古層群から見つかり、ちょっと因縁めいたものを感じました。^^;

 

展示は文学的なもの以外に、三陸海岸の地層から発見されている様々な化石が展示されていました。

クジラの化石やアンモナイト、サメの歯、

種市海岸の水深20mの海底から見つかった、白亜紀の珪化木など様々・・・

また久慈で見つかった恐竜化石も展示されています。

ティタノサウルス類の歯や、

コエルロサウルス類の後肢の趾骨

翼竜や首長竜の化石も見つかっています。

そして、先日プレス発表された小型獣脚類の歯。

こちらの標本は5月31日までの展示だそうです。

以上で新館での展示レポは終わりですが、個々の標本については後日改めて掘り下げたいと思っています。

 

後編に続きます。^^

 

まずは熊本-大分両県にて発生した地震において、

被災した方々にお見舞い申し上げると共に、

お亡くなりになられた方へ謹んで哀悼の意を表します。

 

その地震直後の4月17日、科博で行われている

恐竜博2016の特別鑑賞会へ行って来ました。

この特別鑑賞会は、「恐竜でフクシマを応援しよう」プロジェクトに

賛同し、一定金額の募金をされた方へのリターンとして開かれた

ものです。

参加者は午後4時に日本館講堂へ集まり、真鍋研究主幹(以後

真鍋博士)から特別展内容や、東日本大震災で被災した福島県

広野町役場に展示されていた、チンタオサウルスの修復プロジェ

クトの経緯について説明を受け、閉館後の特別展会場へ向かい

ました。^^

真鍋博士のギャラリートークで特別展を見学、チンタオサウルスの

前では、修復を担当された群馬県神流町のゴビ・サポートジャパン

の高橋氏からご挨拶を受け、皆で記念撮影となりました。

最後は第二会場のクリーニングハウス前で、今回のリターンの

一つである、チンタオサウルスのフィギュアを真鍋博士より受け

取って解散となりました。

私が頂いたのはシリアル№5で、賛同された順序のようでした。

 

ただ、これで帰っては折角特別鑑賞会に来た意味がないので、

贈呈式後に真鍋先生にへ神流町のスピノサウルス第一標本と、

第二標本について質問させて頂きました。^^

神流町のスピノサウルス類第一標本と

第二標本。 ※この写真は神流町恐竜センターで撮影したもの

 

今回見つかった第二標本には、鋸歯と皺が見つかって入ると

報じられているのですが、肉眼では非常に判りづらく、また

スピノサウルス類の歯には明確な鋸歯が見つかっていない

との論文もあって、その辺りの審議を確かめたかったのです。

第一標本から研究をされている真鍋博士によると、第一標本の

歯はいわゆるスピノサウルス科の中のスピノサウルス類の歯に

見られる均一な条線と皺(しわ)、カリナの部分に顆粒状の構造物

が鋸歯の替わりに2列に並んでいて、蛇の肋骨のような皺が見ら

れることからスピノサウルス類の歯と同定したが、第二標本の歯

は前記した特徴とスピノサウルス類にはなく、バリオニクス類に

見られるしっかりとした鋸歯が見つかっているということで、非常に

興味深いとのことでした。

※写真は手持ちのスピノサウルス.sp歯のカリナ部拡大写真

※同じくスコミムス.sp歯のカリナ部拡大写真(鋸歯がある)

 

また真鍋博士によると、第一標本と第二標本が完全に別種か

どうかはまだ性急ですとの話が・・・

スピノサウルス類の顎の骨は、そこそこ見つかってはいるものの、

完全な歯が生えた状態で見つかっていないため、歯列によって

鋸歯がある可能性も一応残っているからだそうです。

「それでも別種が居たと思う方がワクワクしますよね。」と仰って

いました。^^

それからタイのシアモサウルスの歯とラオスのイクチオベナトルの

歯も明確なカリナがなく、辛うじて顆粒状構造物などの痕跡が

あって、両者ともスピノサウルス類の可能性が高いとも話して

頂きました。

 

今回のレポは以上ですが、またこのような機会があれば、

積極的に賛同して行きたいと思っています。

勿論、被災者支援もです。

 

ではまた。