XPJUG(eXtreme Programming Japan User Group)会長である
倉貫氏のエントリからTB。ディフェンシブであることが様々な弊害を巻き起こしているという警笛を鳴らしています。
倉貫氏によるディフェンシブの定義は以下のようになっています。
「開発途上のリスクを計画上の時点でなるべく潰し、開発側に発生する利益分を減らさないような開発の進め方」
ここで重要なのは「開発側に発生する利益分を減らさない」という下りです。この利益分の考え方、いわばビジネスモデルがディフェンシブの元凶となっていると私は考えています。
そのビジネスモデルとは、
「人月計上によるコスト積み上げ型モデル」です。このモデルの大きな特徴は、
① 受注額からの減点方式
② 資産価値ではなくコスト+αの見積もり方式
③ コストの質が固定費のためリスキー
この3点です。①から見ていきましょう。
SIerの利益の出し方は減点方式になっています。減点方式とは倉貫氏の指摘にもあるように、
「決められた金額の中でどれだけ安く作り上げることで利益を出す構造」
という構造のことです。
つまりスタート時の資金が100とすると、時の経過と共に段々と100が目減りしていく構造のことです。このモデルは途中で収益回復の機会はありませんので、分母であるコストの圧縮以外儲けが増える構造などありません。
次に②について。「コスト+α」というのは、システムの値段がその価値で決まるものではなくこんだけお金かかったんでそれに色つけたよ、という値段で決まるということです。簡略化して言えば、
「値段=単価(売値)×要員数×期間」となります。あとはライセンスとかハード費用とか雑費とかそんなの。
SI業界においてコストの圧縮方法は大別して3つです。これ以外にあるのかな??
1.工数の短縮
2.単価の低減
3.人数の削減
上記のような単純な掛け算でシステムの値段が基本的に決まる構造なので、
掛け算の要素となっている項目が小さくなればいいだけの話なのです。
工数を短縮するには、一番時間とカネがかかる製造部分の期間を短くするのが効果的です。開発生産性を向上してあるべき形で期間を短縮するのが望ましいのですが、実際にはテスト期間を圧縮することが多いです。製造とテストをパラで走らせるとか。
ヒューザーが鉄を減らしてコストを浮かすなら、この業界はテストを減らしてコストを浮かすのです。そんなものです。
単価の低減といえば流行真っ盛りのオフショア。もう金銭感覚の基準が違う。机上の計算では日本の何分の1のコストでできることでしょう。また、国内で地方の売値が安いところに出すローカルオフショアなどというものもあるようです。
が、あんまり上手く言ったという話は当社でも他社さんでも聞きません。これから徐々に成功事例が出てくるでしょう。個人的には楽観視しています。
単価は基本的にスキルによって決まるものだと思っていますが、往々にして年齢序列です。給与分のコスト見込んだ売値になるからだと思っています。単価だけ高いけどマネジメントができない中年SEが多くいるとそれだけで利益を圧迫します。非原価部門にディスパッチしてる会社も多々あるようです。あーうっとおしいw
人数の削減はやりたくてもできない会社が多いでしょう。自社に使用できるソフトウェア資産がどれだけあるのか。「この部分の要員はxxシステムで作ったaa.jarでカバーできるね。」なんていう資産ベースのSIやっている会社がどれほどあるのか。
人間に頼らないでシステム開発ができるなら、SIerとしては最強のビジネスモデルになるとは思いますが、しばらくは要員計画でヒーヒー言うでしょう。大きなブレイクスルーがあるとは到底思えない。
私がよく言っている作らないSIビジネスへの転換は早い者勝ちだと思うのだが…。どうなのかしら、弊社は。
話をコスト圧縮に戻しましょう。
これら3点の各要素は毎月かかる固定費になるので、これを削るということは期間分だけマイナスが生まれやすくなり、原価比率があがります。原価比率があがるとその分儲けは減ってくるので、何か大きな案件で爆死すると他のたくさーんの優良プロジェクトの儲けを吹き飛ばしてくれるわけです。とばっちりとはこのことです。多かれ少なかれシステム屋さんでこういう経験をされたヒトは相当いるはず。
また問題なのが、
肝心要の「見積もり金額」がかなり不確定な部分があるということです。始まる前から負けているわけです。
弊社のみならず同業他社さんでも「当初の見積もりが甘すぎてやってもうた」という話は日常茶飯事。億単位の案件がトラブルになるともう大変です。
何よりもトラブルを起こしてはいけないため、どーやってもディフェンシブにならざるを得ません。儲け方がそうなってしまっているからです。こうなるとお鉢が回ってきた案件の運にも左右されます。
「見積もり金額でよーいドンの世界だと、プロジェクトの成功は能力や付加価値よりも運が重要な要素になってしまいがち」
と倉貫氏がおっしゃられている通りです。たまたま優秀なヤツが入ったから回ったとか、土日でカバーして回したっていう案件めっちゃ多いと思います。
プライムで請けた会社は一気に全ての機能を見積もってよーいドンでSIの開発モデルは動くので、いくら天才的なPMでも必要なコストの半分しかなかったらトラブルになるに決まっています。無理なものは無理です。できないものはできません(´ー`)yー~~~
③は②と絡んでますね。MECEになってないかもw
固定費の比率がでかいということは、ある一定の体力がないとできないってことです。損益分岐点を越えてくると収益が高くなってきますが、こえるまでの原価比率が高いので体力のある大規模な会社じゃないとでかい案件とれないってことです。倉貫さんが指摘しているのはそういうことだと思っています。
単価には売値と原価があって、原価ってのはそう簡単に低減できるもんじゃありません。原価100万のヒトがある日突然「お前今日から40万」っていうわけにはいかないし。
以上のことを踏まえると、
いかにコストベースの見積もり手法が脆弱なものか、よくお分かりになると思います。現場では足を出さないよう日々ディフェンシブな開発をせざるを得ないSEが多くいると思うのです。
ここまでのことを踏まえると、
「システムを必要としている企業であれば、もはや、SIerなどに頼むのではなく自社で優秀なプログラマーを雇用して、そこで開発をした方が良い」
「本当に優秀なエンジニアは、SI業界など去って、IT企業に行った方が良いんじゃないかと思ってる。」
というのはこの業界の禁句じゃないかと思うんですがwwww
つまり、
それほどまでに耳の痛い御指摘だということです。人間が揃いさえすれば外に出す必要などないと。同じ予算かけるならノウハウもたまるし自社の技術力や運用力も当然上がるインソースのスタイルに変えればいいんじゃないということだと思います。私もそう思います。コストと考えず投資と考えるならば。
アウトソースを考える思考の根幹は、「アウトソース対象となっている事業や業務はコスト」という認識があるからでしょう。優秀な人材をアウトソースしたいなんていう話は聞いたことが無い。なぜか?それは投資に他ならないからです。
最近では単価低減圧力が非常に厳しくなっています。SIビジネスは遣ろうと思えば誰でもできる参入障壁の低いビジネスなので、海外の競合とも戦わなくてはならない時代に入りました。もうコスト積み上げではインドや中国には勝てません。英語というハンデもあります。インソース化の流れが加速する可能性も否定できません。
そんな中で今までとは全く違うSIerこそが求められていると信じてやみません。
長文におつきあい頂きありがとうございました。m(_ _)m