では、2枚目のカードとなる、その後のオダギリ「あきらめる」にまいりましょう。
【あきらめる】
「もしもしっ! もしもしっ!
オイッ、聞いてるのかオイッ! オダギリっ!
書類だよ書類!
どうでもいいから書類持ってこい!」
インターホン越しの古田からのうるさい催促と、肝心の書類がないことで、諦めムードのオダギリ。
その結果、
「もう…もういいか。
もういいや。もういい。
いいいい。飲もっ」
そう覚悟を決めたオダギリは、飲みに行く前に、うるさい古田の声を封じるために、
「聞いてんのか! オイッ、オダギリ!」
の言葉を最後に、拳でインターホンを壊してしまう。
場所は変わって、クラブらしきお店の中。
「もろびとこぞりて」の曲をアレンジしたライフカードの音楽が流れ始め、
メリ~クリスマ~ス!
と、テレビCMの最初のシーンにあった、オダギリと、そばにいるお店の8人のホステスらしき女性たちが一斉にクラッカーを鳴らし、紙吹雪が舞う中でクリスマスをお祝い。
「ああもう、あぁーっ!
もう飲んで飲んで。
もうみんな飲んで~。
なに~」
オダギリにシャンパンを注ぎながら、
「クリスマスなのに一人ぃ~?」
と、左隣のホステスの女性からの問いかけに、
「一人なんだよ。
お仕事させられてたの」
するとオダギリのそばにいたホステスの女の子の一人が、オダギリのほおに人差し指を近づけて回しながら、
「か~わ~い~ちょ~お~」
と同情する。
すかさずオダギリも、その女の子に人差し指を回しながら、
「か~わいそ~う」
と答えることに。
「クリスマスなのにさ、契約書持ってこいとかいうんだよ。」
オダギリのその言葉に、8人の美女が、
「ウッソー、ありえな~い」
と同情するが、どうもそれが営業っぽい感じがしてならない。
さらにオダギリは、
「ありえないでしょ。
ありえないから、もうやめちゃったのイェーイ! イエーイ!」
と、まるで契約書を持っていくのをやめたことが偉いかのように、両手でVサイン。
周りの8人の美女も、「イェーイ」の掛け声や拍手でオダギリを盛り立てる。
「やめるよね、そんなのね~」
うるさい古田がいないので、ここぞとばかりはしゃぎまくるオダギリ。
とそこへ、なぜかその古田が突然入店!
「いや~、ありえないよ~。
大事な書類待ってんだけどさ、持ってこねえんだよ若造が。
5時間だよ、もう5時間。
ありえないよ。
ありえないよ。
だからここで飲んじゃうんだよ。
徹夜で待っちゃうんだよ」
「ウッソ、ありえな~い」
古田のボヤキに、またまた営業っぽい受け答えで同情する、2人のホステスたち。
それを見たオダギリはあわてて、
「ちょ~、ちょっと貸してごらん」
と、右隣のホステスの女性が頭にかぶっていたサンタの帽子と、自分がかぶっていた赤いとんがり帽子を取り替え、白いヒゲを付けて変装することに。
1時間後
古田の動向を、別のテーブルで見守り続けるオダギリと8人の美女。
「だから打っちゃったらね、ふつうはさ、ふつうはさ、ふつうはさ、こうだと思うじゃない。
こうだと思うじゃない。
違うの、(プーッ)こうなの。ハーハー。
アッ、ちょっとオナラ出ちゃった。
ア~ハハハハ~」
「ウケる~、チョーウケる~」
話がはずんでいたものの、お酒を飲みすぎたためか、古田が立ち上がり、急にもよおしたらしく、
「オシッコっ」
と言ってトイレへ。
取引先の古田にバレないように、サンタの赤い帽子に、目には丸い黒メガネに白いヒゲで変装していたオダギリは、古田がトイレに行ったのを見計らって、
「あっ、俺、帰る帰る帰る。
帰る帰る帰る」
「エェー、なんでぇ~? どうしてぇ~?」
「あ~、急に用を思い出したから。
ゴメンね。
これどうもどうも。
あっ、じゃ、あのまた。
コートコートコート。
コート取ってくれる?
早くね、早くねっ」
しかし、すぐに戻ってくる古田。
「おっかしいな~、ちっとしか出なかったね。
ただの頻尿? フヒヒッ」
古田に見つからないように、急いでお店を後にしようとしたオダギリだが、意外と早く古田がトイレから出てきたので、お互い鉢合わせすることに。
「アッ!」
電話で催促して、書類を待ってからもう6時間あまり。
もう待っている我慢の限界を超えたみたいで、
「オダ~~ギ~リィ~~~!」
と言って、鬼のような形相でオダギリの元へ勢いよく近づいていく古田。
がしかし、
「待ってたのよオダギリく~ん!
俺はお前を待ってたのよ!
来たのか?」
「ハイ」
「来たのか!」
「ハイ!」
「ヨ~シヨシ!
じゃ飲もう、飲もうね。
ハイ、ごめんなさいね、前通りますよ。ハハハハハ」
と言って、古田はオダギリを自分が座っていたテーブルへと誘う。
「オシッコはね、ちょっとだったからよかったの。
オシッコはね、ちょっとだったからよかったの。
ウフフフ」
オシッコがちょっとだったからオダギリにも会えたと、うれしそうに話す古田。
「古田さ~ん、この人待ってたの?」
「そうだよ。俺はこの人を待ってたんだよ。
なっ、なっ、なっ、なっ、ハハハハ」
「待ってたんですよね…エヘ」
「何で待ってたんだっけ~?」
ホステスのその言葉に、ほろ酔い状態だったのが、ハッと我に返ったと思われる古田。
「そうだよオダギリ。
お前持ってきたんだろうな!
エッ! お前持ってきてんだろうな。
ほら出せ。早く出せ! 早く出せよ!」
椅子から立ち上がった古田のその言葉に、しかたなくオダギリは、手に持っていたぬいぐるみを、おそるおそる古田に差し出すことに。
それを見た古田は、書類を持ってきたと信じていたばかりのオダギリからぬいぐるみを渡されたことで、「お前、俺をナメてんのか!」と、堪忍袋の緒が切れるのかと思いきや、
「これだよ! オダギリ。
僕が待ってたのはこれなんだよ、も~う。
ウ~、チュキチュキチュキ、もうオダギリ大チュキもう~」
受け取ったぬいぐるみをオダギリのほおにこすり付けながら、
「ヤッター! ヤッタヤッター!」
とはしゃぐ古田。
「ヤッタ? ヤッタ~!」
お酒に酔っていて、書類のことを忘れていると感じたオダギリは、とりあえず古田の調子に合わせることに。
「イェイ、イェ~イ! イェ~イ! みんなもイェ~イ!」
まるでぬいぐるみがお目当てだったようにはしゃぐ古田と、それに合わせるオダギリとホステスの女性たち。
その後、
「あぁ~疲れたな~、ちょっと古田さんは」
お店で古田に気を使ったことで、疲れた表情で街を歩くオダギリに着信音が。
画面を見て古田だとわかったが、しょうがなく電話に出るオダギリ。
「ああ古田さ~ん。
お疲れさまです。
楽しかったですね~」
お店ではとても盛り上がったので、「そうだね、楽しかったね」と言われるのかと思っていたら、
「オダギリィ~!」
と、さっきまでとは違い、怒り心頭のよう。
「なんで俺がぬいぐるみ持ってんだよ」
たぶん家に帰った後、古田がぬいぐるみを持っていたことで、古田の奥さんから不信に思われたので気づいたのではないかと思われる。
「エッ、いやっ…」
「契約書どうした契約書。
今日中に届くはずだろうが、まだ来てねえぞこの野郎!」
急に仕事モードの口調に変わったことで、
「さっきまでなんかメリークリスマスな感じじゃ…」
と、おそるおそる尋ねるオダギリ。
しかし古田は、
「なんで俺とお前がメリークリスマスなんだよっ。
いますぐ飛んで持ってこい!」
と、いますぐ契約書を持ってくるようオダギリに厳しく告げる。
それを聞いたオダギリは、
「エェアア~!?」
と声を上げ、契約書がないのにどうしようといった感じで困惑することに。
★もうチョコっと一言!
取引先の相手を演じていた、古田役こと古田新太さんは、「あきらめる」篇より姿を現しましたが、図体といい、髪をオールバックにしたといい、なんだか中小企業のやり手の社長さんみたいで、けっこうハマリ役でしたね。
ある意味、主役のオダギリさんより目立ってました。