コバルト編集部ブログ

コバルト文庫の最新情報をお知らせします!!


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みなさまごきげんよう




たいへんご無沙汰してしまって申し訳ありません。




ご無沙汰している間に6月刊が無事校了いたしました。




本日からためし読みをアップしていきます




まずは新作のこちらから




昼間の地震は地震そのものよりもフロアじゅうのスタッフのスマホから流れる速報アラームのほうがびっくりした 編集(て)



『蝶よ毒よ 邪悪な獣の正しい飼い方』
(山本 瑤 イラスト/雲屋ゆきお)


(あらすじ)絶対、貴方に求婚させてみせる!! 悪戯好きで魔女と忌み嫌われ、ルブラン王国を追放された王女・エミリエンヌは残忍な氷狼公と悪名高い辺境伯ラファエルに花嫁として召し出されるがすげなく拒絶される。ラファエルを屈服させるため、エミリエンヌは意地でも彼に求婚させると決心し…!? タイムリミットは一ヶ月。求婚したら負け! 極悪侯爵VS性悪王女、激辛×激甘ラブバトルのはじまり


「ナイフ大小五本、針、大小併せて十二本、小瓶が三つ、ロープ、鉄の鎖、怪しげな粉薬が数種類、小石が七粒、ヤモリの黒焼き、イモリの蒸し焼き、蛇の皮、蝉の抜け殻、火酒一瓶……」

 マーロウが淡々と取り出したものを述べながら、テーブルへ置いてゆく。丸テーブルは瞬く間に、エミリのドレスに縫い付けられていたものでいっぱいになった。

「肉の正体はこれか」
「そのようですね」
「……この娘、確かどこかの国の王女と言わなかったか」
「ルブラン王国の三番目の王女様ですよ。エミリエンヌ・フランセット・ルブラン様。御歳十六。昨日、そうお伝えする前に公爵様が地下牢に閉じ込めてしまわれて」
「深窓の姫君が男の股間を蹴るか?」

 ラファエルは今、すわった瞳でエミリエンヌを睨んでいた。エミリエンヌは男物の大きなローブに身を包み、ちょこんと椅子に腰掛けさせられている。

「言え。なぜ不器量な娘を装った」
「装ってなんかいないわ。普段のあたしよ」
「太い黒ぶちの眼鏡に、目立つソバカスをかくのがか? 言葉遣いも」
「なかなか楽しかったでしょ」
「ふざけるな」
「その鋭く獰猛な目は、人の外見しか映さないの?」

 エミリは緑の瞳を光らせた。

「あたしの中には厄介で残酷な魔女の血が流れているのよ。見た目なんて関係ない。眼鏡にソバカスがあろうと、品のない言葉遣いであろうと、素顔のままであろうと、皮をめくれば一緒よ。目の前にいる人間を呪わずにはいられないし、陥れる。たとえあたしが生まれたての子鹿のような容姿をしていても、騙されないことね」
「ふむ」

 ラファエルは顎に手をあてて、じいっとエミリを見た。ローブを着ているにもかかわらず、そうすると、エミリは再び裸に剥かれたような気分になる。それで無意識のうちに、ローブを胸の前でかきあわせた。するとラファエルが意地悪く笑ったのだ。

「確かにおまえは無垢な子鹿だな」

 これにはエミリは猛烈に腹が立った。無垢な、という一言が特に。

「撤回して!」
「自分で言ったのだろう」
「たとえ話でしょっ! イボだらけのヒキガエルとか、蛇にしておいてよっ」

 ラファエルは、はははっ、と小気味よく笑う。そんな公爵を、マーロウがなぜか驚いた様子で見つめた。

「では、訊こう。ルブランの王女。おまえは俺に、どんな呪いをかけてくれる?」

 エミリエンヌは怒りで頬を染めたまま、じっとラファエルを見た。もう笑っていない。残念、と呟く自分がいた。笑うと、この人って、幼くなるというか、全然印象が違うのに……。

 獰猛で、残酷で、敵味方なく気に入らない者は首を刎ねると言われている公爵。野獣のような佇まいに隠された気品と、矜持の高さ。このこっくりとした深い灰色の瞳の奥をのぞいた者はいないのだろうか。

 見てみたい、とエミリエンヌは思った。そしてそんな自分に驚いた。底が知れないという意味では同じアンサルディ公爵に対しては、そんな風に思わなかったのに。

 この男が隠しているものを見たい。誰も知らない、この男の本質を暴きたい。

「……畏れさせる」
「なに?」
「何者もを畏れない氷狼公に、あたしを畏れさせる」

 それが究極の呪いだ。もちろんエミリは魔法なんて満足に使えない。それでも、なんとかして、この男にまいったと言わせたかった。

「俺がおまえを畏れるだと? 無力な子鹿のようなおまえを?」
「子鹿を畏れる狼だっているってことを、証明してみせる」
「どうやって?」

 エミリは考えた。どうやって? あの色ぼけ案山子男(アンサルディ公爵)はなんて言っていたかしら? 結婚することで、獰猛な野獣を飼い馴らす、とかなんとか。

「求……婚」

 ラファエルの顔から柔らかさが消え、見る見る獰猛なものへと変わる。そう、求婚。それがそもそもの目的だったではないか。

「一ヶ月以内に、あなたに求婚させる。ひざまずいて懇願させる。結婚してくれって」

 ラファエルの目が光った。ぐいっと腰を引き寄せられ、左腕で顎をつかまれる。顎が砕けてしまうほどの力だ。それでもエミリはできるだけ不適に見えるような目で彼を見上げた。するとラファエルは言った。

「どうやら、今まで女王が送って来た女よりは、楽しめそうだな。求婚の呪いだと? ではもし、その呪いに失敗したときは?」

 エミリは鼻の頭に皺を刻んで渋面を作る。

「好きにすればいいわ。なぶり殺してくれてもいいし、指をぜんぶ切り落としてあなたのネックレスにしてくれてもいいし、殺された後だったら血を飲まれてもいいわ」

 くすくす、と笑ったのはマーロウだ。しかし主に睨まれて目を泳がせた。ラファエルはエミリに向き直り、低い声で言う。

「では、呪いが失敗した暁には……おまえは、自分で再び地下へ行け。ただし今度は、ドレスの中の道具をすべて置いていくんだ。そして二度と、出られると思うな」

 エミリは深く頷いた。期間限定ではあるが、どうやらこの城においてもらえる。



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