コバルト編集部ブログ

コバルト文庫の最新情報をお知らせします!!


テーマ:
みなさまごきげんよう




実は今日はこのあととある会合があります。




その様子はまた後日をお楽しみに

(ってあんまり大したことじゃないけど)




ということでブログでは引き続きためし読みをお届けします。




90年~00年代を飾った人気シリーズたちが

一堂に会しますよ(≧▽≦)




全作品ちょっとずつ お楽しみください






編集(て)




『コバルト名作シリーズ書き下ろしアンソロジー①  龍と指輪と探偵団』

(榎木洋子 高遠砂夜 響野夏菜 前田珠子
         カバーイラスト/明咲トウル)









『龍と魔法使い 龍の夢の花』
(榎木洋子 イラスト/後藤 星)



「久しぶりの祖国はどうだねタギ」

 爽やかな秋の風のような声に、黒髪の魔法使いタギはふりむいた。

 長身の美丈夫がそこにいた。

 初めて見たときから少しも変わらぬ美貌に温かなまなざしを持つ相手。人の姿をとったフウキ国の守龍シェルローだ。

「ああ、あんま変わってねーな。街並みも人の雰囲気も。懐かしいまんまだ」
「知り合いに挨拶はしてきたのか?」
「ああ……いや。あいつらには会ってねー。ここに寄る前でも後でも、どんな顔していいかわかんねーからな」
「そうか。だがもっと頻繁に訪れればいい。きみの祖国だ」
「生まれた場所は違うぜ?」
「だが祖国だ。きみは私の風の中で育ったんだよ。私の守護する国の子どもだ」

 タギは唇を噛んだ。もう少しでみっともない顔を見せそうになったからだ。

 ひとつ深呼吸をして、再び足元に目を向ける。

 ここへ来てからずっと見つめていた人物。

 暗く静かな洞穴の中で、ここでけぽっかりと光に包まれている。

 山肌にいくつか開いた穴から光が入り、魔法で導かれて集まっているのだ。

 中心にあるのは水晶を含む岩の囲い。中には花に囲まれた寝台がひとつきり。

 そして眠るのはたぐいまれなる黒髪の美女。

 父親と同じ日に輝く金髪が、呪いによって黒く染まってしまった風龍の娘。



 シェイラギーニ。

 タギの人生の一部。

 運命の女神のもうひとり。



「まだ目覚める気配はないよ。長い長い眠りだ……きみの寿命が間に合うかどうか。娘との約束ならば気にせずともいい。人の時は短い」
「ああ。わかってる。けど、そういうわけにはいかねェんだシェルロー。約束しちまったからなあ」

 眠るシェイラを見ながらタギは答えた。

 敬愛するフウキ国の守龍シェルロー。かれにはいつも見守られていた。

 養い親が永遠の眠りについたとき、守龍の飛翔を空に見て心が癒され、励まされたのを昨日のことのように憶えている。この国を出ざるを得なくなった事件の時も、やはりかれは自分に暖かな風を送ってくれていた。ひとりの人間として、過分の計らいを受けたと思う。

 その大恩ある守龍の娘を、こうして長い眠りにつかせる原因となったのは自分だ。

 深く深く傷付けてしまった。

 彼女は生まれた直後から自分と親密に過ごしすぎた。ほんの八歳程の子どもだったはずが、みる間に心を成長させて(まるで人間の短い寿命にあわせるように)タギに持ってはならない思いを抱いてしまった。

 恋をしたのだ。

 龍が、人間に、恋をしてしまったのだ。

 そして沢山の悲劇が起こり、シェイラは眠りについた。

 彼女が眠る前にタギは言ったのだ。

「――その先の命を、一緒に生きよう」と。

 シェイラの返答は「孫でも連れて起こしに来い」だった。あいにく、孫はいないが――。

 できれば、目覚めたときそばにいたかった。

 と、タギの口の端が持ち上がった。

「なあ、見ろよシェルロー。シェイラのやつ笑ってるぞ。夢でも見てるのかね」
「……娘はたいがい静かな顔で眠っているが、きみが来ていることが分かっているのかもしれない。たしかに、幸せそうな顔だ。楽しい頃の夢でもみているのだろう」

 ベッドの傍らに立ち、シェルローは長く優美な指先で娘の頬をなでた。

 まさに父シェルローのいうとおり。

 風龍の娘シェイラギーニは夢を見ていた。

 懐かしく幸福な時代の夢を。





『レヴィローズの指輪 水の伯爵からの招待状』
(高遠砂夜 イラスト/起家一子)



 回廊を通り、広間につくと中は豪華なパーティ会場になっており、ご馳走が並んでいた。デザートのケーキも食べ放題で、いろいろな種類のものが並んでいる。壁やテーブルの上には灯りと装飾を兼ねて大きな蝋燭に火がたくさん灯されていた。

 日は落ちかけていたが、広間は程よい明るさに包まれている。

(わあ、本当においしそう……) 

 思わずテーブルの上のご馳走に手を伸ばしそうになったジャスティーンはここでハッとする。

(このお料理だって水の伯爵が用意したものよね? 迂闊に食べて変なことになったら大変だわ。さすがに毒は入ってないにしても、しびれ薬とか眠り薬とか入ってたら怖いし……)

 本音では食べたくてたまらないのに、疑いのあまり食べられないジレンマに陥り、ジャスティーンは悩む。それでも誘惑に負けそうになりながらも、今は待てと自分に言い聞かせた。

 まずは彼の真の目的を確かめるまでは、不用意に料理に手はつけるべきではない。

(もったいないけど我慢我慢)

 名残惜しい気分を切り替え、ジャスティーンが辺りを見渡す。しかし、こんなに豪華な料理まで用意されているのに、なぜか自分たち以外の者の姿がなかった。

「まあ、誰もいませんわ、なぜですの?」

 ダリィの言葉にジャスティーンももう一度、視線を周囲に廻らせる。すると壁際の休憩用のソファーの上に小さな人影が見えた。

 小さな男の子がソファーの上にちょこんと座っていたのだ。遠目にも目を引く容姿だ。淡いブルーがかった髪の色と琥珀の瞳。スノゥよりまだ二つ三つ幼い姿──。

 その大きな瞳がジャスティーンと真正面から合う。不思議な印象の残る目だ。

 けれどこんな広い会場にたった一人で何をしているのだろう? 衣服は貴族の子供のもので使用人ではないことだけはわかる。

「あの子……?」

(誰……?)

 ジャスティーンが呟くと、突然子供はひょいと立ち上がり、ちょこちょことこちらへと小走りに走ってきた。それに気づかず歩き続けていたダリィに、ジャスティーンは思わず声をあげた。

「あ!」

 しかしダリィとぶつかる直前、子供はすっと透き通り、跡形もなく消えてしまった。

(えっ、どういうこと!?)

 思わずジャスティーンはぽかんとした。

 ダリィには今の子供の姿が見えなかったのだろうか? 慌ててジャスティーンが周囲を見回すと、先程まで立っていた場所とは違う位置に、再び子供の姿が見えた。

(……? なんで!?)




『東京S黄尾探偵団 夏休みだョ、全員集合!』
(響野夏菜 イラスト/藤馬かおり)


 ふと、厨房のドアが突き開けられたような音が聞こえてきた。今度は誰がミスったのか。

 ジャンの言葉に耳を澄ます癖がついているので、自然と注意する。が、聞こえてきた怒声に行衡は混乱した。

『なんだ貴様ら~~~~! 出て行け――――っ!!』

 台詞の前半はフランス語、後半は英語だった。明らかに闖入者に向かって言われた言葉に、ぎょっとした行衡は顔を上げる。

 驚きのあまり、顎ががくんと下がった。 

「お――――――っす!」

 サングラスをヘッドアクセサリーがわりにした栗毛の少女・如月みさおが、こちらに向かってきながら行衡に片手を挙げていた。

 ウエーブのかかった長い髪は背に垂らされたままだ。ノースリーブのシャツに、ショートパンツ、これ見よがしにさらしされた素足よりなにより先に、まずそこに目が行く。

「馬鹿おま、髪しばれ!」

 口走った行衡は、みさおとともに現れた砧兵悟と新田善美に拘束された。二の腕を掴んだ兵悟が「お」と感心するような目になる。

「おまえ。固くなったな、腕」
「そりゃあ毎日、野菜を運んでりゃって言うか、なんでここにみんないるんだよ!?」

 彼らの後ろには、全員の高校卒業に際し解散した、東京S黄尾探偵団のメンバー全員が、ぞろぞろとくっついて来ている。

 意味不明だ。わけがわからない。これは夢だろうか。

「なんで、って、ありがたく思いなさいよねロクガツ」

 六月一日生まれだから、六月。なつかしい綽名を呼んで、みさおサマは相変わらず高飛車に上から目線でおっしゃってくださるが、なにをありがたく思えというのだ?

 全身全霊を捧げている職場に、ズカズカ上がり込まれたというのに?

「決まっとろーが、六月ちゃん」

 不満が顔に現れたのか、慈吾朗が言った。こんがり日焼けしたジイさんは、イラつかせる目的で着てきたとしか思えない、コミカルな、クラゲと戯れる半魚人模様のアロハシャツだ。

「おぬしに合わせて、すちらににしたんじゃろうが」

 カタカナの国名を発音しきれなかった慈吾朗は、「なにを合わせたんだ」とばかりに眉根を寄せた行衡に思い出させる。

「わしゃー、『全員集合』ちゅうたぞ? 一番抜けだしにくいのは、おまえさんじゃないかと思ってのー」
「あのトンチキなメールか? あれマジだったのか!? 俺りゃあ、おまえに来んなっていったぞ、じじい!」

 行衡はまくし立てた。




『女神さまのお気の向くまま 宴の前』
(前田珠子)



 九州は某県某郡――。

 自然溢れる喜吉町大字杉田――。

 その、あまり多いとは言えない住民の中に、大変特異な体質を持つ人物がいることを、周囲の殆どの住民は知らない。

 それもそのはず、その人物は国家最大級の重要人物指定を受けた上、その情報は政府直々に保護――秘匿とも言い換えられる――されているからである。

 その人物の名は森桜子。

 ほんの一年前ちょっと前までは、普通の県立高校に通う普通の女子高校生に過ぎなかった彼女は、ある日、たった一升の日本酒によって、それまで抱いていた人生設計を根底から覆された人物である。

『あなたは異世界からの凶悪な侵入者たちと戦い、この世界を守る宿命の戦士なのです!』

 と、突然告げられた――わけではない。

 わけではない……のだが。

『あなたは、異世界からの凶悪な侵入者たちと戦い、この世界を守る宿命の女神さまの依り代に選ばれたのです!』

 と、告げられたのでは、あまり内容的には変わりがない。

 普通の高校生活を送って、普通に受験して、手堅く地方公務員を目指していた女子高生の世界は、その日を境に一変してしまったのだ!

 以来、国家権力全開の移動設備を整えられ――自衛隊駐屯地が比較的近くにあったのが彼女の不幸だった――、高校の出席日数を盾に断ろうとしても、国家権力でなんとでも裏工作できるからと言い切られ、それでもイヤだと拒絶しようものなら、問答無用で美味なる日本酒を口元に差し出されて強制出動と言うことになる。

 これは別に、桜子が未成年にも係わらず大の酒好きだからというわけではなく、最初の不意討ちでとっくに彼女に憑いてしまった問題の女神さまが大の美酒好きだからなのだ。

 美味なる日本酒で女神さまを引っ張り出し、事件解決後には更なる美酒の提供を約束することで、女神さまに『お願いする』というのが、政府の機密機関――もの凄く情けないモノを感じるのは桜子の気のせいではないと思いたい――のやりようだった。

 更に言うなら、『お仕事ご苦労様』のお礼も美味しい日本酒で。

 世界を守る『女神さま』は、それで満足してしまう。勝手に取り憑かれて、勝手に国内全域自衛隊機で移動させられて、自分の意志などお構いなしに身体を勝手に使われて……受けた覚えのない授業を勝手に受けたことにされて、試験勉強で地獄の塗炭の苦しみを味わわされる巫史たる桜子のの苦労などお構いなしだ。

 普通であれば、こんな桜子の何より力強い味方になってくれるのは、その家族のはずである……両親は不慮の事故で亡くなって久しいが、彼女には親代わりに育ててくれた姉がいた。

 若くして少女小説家としてデビューし、以来それなりのヒット作を生み出し続ける姉のおかげで、桜子が経済的に困ることはなかった。

 そう……経済的には。

 だが。

 経済面を除けば、小説家である姉――森桃子は、桜子にとって鬼門に等しい困った人物でもあったのだ。

 大事なたったふたりきりの家族であるにも係わらず、桜子が姉を信用仕切れない理由――それは、桃子の性格に起因するのだ……。



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