PAGES D'ECRITURE

フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。


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前回の 「租税回避地との闘いは具体的な制裁を前提とする」 の末尾で言及したように、UBS(Union Bank of Switzerland)に関する記事を引用します。

ゴルゴ十三 、もとい、『ゴルゴ13』の「報酬はスイス銀行に・・・」という台詞は有名ですが、実際に「スイス銀行」という名前の銀行が存在するわけではないこともまた、有名です。スイスに本店のある銀行の中でも最大のものが、ここに登場するUBSです。スイス連邦銀行法に定められた守秘義務により、不正な資金の洗浄に利用され易いという側面を持っていることも有名です。低い税率から、租税回避地のブラックリストにも入れられかねないスイスは、以前のような秘匿性は保てなくなりつつあります。

今回引用するのは、週刊誌 Le Nouvel Observateur の先週号(2009年4月9-15日、通巻2318)に掲載された、La Suisse est sens dessus dessous. UBS : quand les banquiers se mettent à table (スイスは上を下への大騒ぎ。UBS:銀行家が口を割るとき)という記事です。


La Suisse est sens dessus dessous.

UBS
Quand les banquiers se mettent à table



ヨーロッパとアメリカ合衆国が銀行の秘密と決別しようとしているときに、スイスの銀行の中でも最も威光のある銀行が、自ら現行犯逮捕されるようなまねをした。エリー・ルティエAiry Routierが、資産管理に関する世界のナンバー1が、いかにして長い間、億万長者、詐欺師あるいは小金持ちの預金者が税金を逃れるのを助けてきたかを語る。一人の元幹部がアメリカの司法による「天秤」で完全に測られる日まで…


 陽気な小妖精の格好をしていても、青白いマスクの影にいる彼はすぐに見分けが付いた。3月2日月曜日、UBSの元会長、マルセル・オスペルMarcel Ospelは、毎年のように、レヴォルッツァーRevoluzzerと呼ばれるグループでバールBâleのカーニバルで行進していた。活気にあふれて、変装した銀行家は太鼓を叩いていた。「スイスの銀行の秘密(を叩くか)のように」、翌日『トリビューン・ド・ジュネーブTribune de Genève』がコメントした。それでも同紙は、護衛がいないことと群集のお人好しの性格を意外に思うように、明らかにしていた。マルセル・オスペルはしかしながら、スイスで最も憎まれている男の一人である。スイスの主要銀行の用心深さと秘密の伝統を破り、彼は同行をヨーロッパで並ぶもののない金融の大惨事に導いたのである。

 何年もの間、オスペルはエスタブリッシュメントの人物であったし、スイス連邦の白眉、UBSはノウハウとスイスの有能さの象徴だった。私有財産の管理の世界一として、同行は3兆2000億スイスフラン(2兆900億ユーロ)を国外の顧客のために運用していた。2007年終わりには、単独で、アメリカの億万長者、ロシアの財閥、腐敗した国家元首だけでなく、税務署との微妙な問題を抱えるフランスの商人、謎の相続人や世界中の臆病な預金者がスイスに預けた資産の3分の2を保有していた。

 今日、彼の逸脱のせいで、UBSはオバマ、サルコジとメルケルに、前例のない決意による銀行の神聖不可侵な秘密と戦う機会を提供している。スイスでの反応は、侮辱の範囲に達している。キリスト教民主党の議員トーマス・ミューラーThomas Müllerは、スイスを税の天国(租税回避地)のブラックリストに記載すると脅していた、ドイツ財務相ペエル・シュタインブリュックPeer Steinbrückを「ナチ」扱いするほどだった。「ドイツのゲシュタポはエリートを構成していた。シュタインブリュックは私にそのことを思い出させる。彼は頑固で、思慮がなく傲慢だ!」スイスは基準を見失った。「UBS、それは結構なろくでなしの連合(Union des Beaux Saluds)だ!」、あるインターネット利用者が言葉を投げつける。「連中はヴァルドーの旗を汚した」、ジュネーブのタクシー運転手が感想を述べる。彼は奇妙にも、中央政府、チューリヒの金融資本家とドイツ語圏住民に破綻の責任を負わせている。

 ビジネス界と政治権力の共謀が一般に問題にならない国での恐るべき不信の兆候として、UBSは自社チームと連邦評議会、すなわちスイス政府とのサッカーの試合を取り消さなければならなかった。したがってスポーツでの会談に習慣的に続く楽しい食事会も同様である。「メディアによる喧騒」のせいで。政治家たちは、ペーター・ク-ラー Peter Kurerを巻き込むことを望まなかった。オスペルに代わってUBSのトップになり、またしても途中で投げ出したばかりである。「サッカーの試合は残念だった」、フリブールFribourgの社会主義者の議員の一人が嘲弄する。「あれはUBSがルールを守る数少ない場所の一つに違いない。」

 実際、マルセル・オスペルが指揮していたとき、UBSはあらゆる規則を犯していた。慎重さに関する規則に始まって、サブプライムや度が過ぎた投機にのめり込んでいた。銀行員から経済ジャーナリストに転向し、辛らつな本の著者でもある、ミレ・ザキMyret Zakiによると、「UBSは12ヶ月間でスイスの国内総生産の8分の1を失った」。連邦国家はその分を負担することを強いられた(600億ドル)。オスペルはまた、サウジアラビアのスルタン・ビン・アブドゥルアズィーズ王子とシンガポールの主権ファンド(112億ドル)に助けを求めた。それだけでは不十分で、顧客は逃げ続けた。その中にはスウォッチの象徴的な会長、ニコラス・ハイエックNicolas Hayekもいる。数ヶ月の間に、1500億ユーロが口座から引き出された!そして幻想、「神話」(ミレ・ザキ)が崩壊した。完全無欠と信じられていた銀行は、あらゆる悪巧みに加担していたのである。マドフ事件には首まで浸かっていた。

 経営陣の無責任と世界危機の猛威によって破産した銀行?ありふれている、と人は言うだろう。しかしオスペルは金融危機を取るだけにとどまらなかった。その影響力の下で、UBSもまた、何年もの間、大規模な不正行為に身を投じていた。戦後保管されていたユダヤ人の資産をめぐる論争以来、初めて指差されているスイスが今、混乱に満ちているとしたら、スイスが銀行の秘密というドグマの再検討を強いられているとしたら、その模範となる銀行が現行犯逮捕されたからである。カルビンの国には耐え難いことだが。

 不正行為の初めは、43歳のアメリカの匿名の差出人、ブラッドレイ・バーケンフェルドBrandley Birkenfeldである。不精な独身者、「ここには、強いビールと尻軽女」とジュネーブのアパートの扉に書いていた、このUBSの元従業員は、昨年6月、フロリダでの裁判で全てを打ち明けた。バーケンフェルドは、ロシア系カリフォルニア人の不動産開発業者、『フォーブス』によれば当時世界で236番目の富豪で、税金逃れの専門家、イゴール・オレニコフIgor Olenicofが2億ドルをアメリカの税務当局から隠すのを幇助したとして告発されていた。オレニコフの会社は当初はボリス・エリツィンに近く、バージン諸島に住所を置く、ロシアのある金融会社の背後に隠れていた、ロシアの投資家の手先であるとされる。バーモント州にあるノーウィッチ大学の予備役将校訓練課程、そのモットーは「裏切るな、盗むな、嘘をつくな」である。その出身であるバーケンフェルドは、5年の禁固刑を受ける恐れがあった。判事は彼に取引の可能性を与えた。自ら有罪を認め、自身が歯車の一つでしかなく、UBSの経営陣の責任であるとすれば、彼はアメリカの司法による温情を受ける権利があだろう、というものである。契約は結ばれた。

 この罠は、期待以上に機能した。バーケンフェルドの自白が、彼自身が提供した数百のピースによって補強されていただけなおさらである。これらの証拠資料の一つに関して、UBSのアメリカ向け個人資産管理の現在の責任者、Martin Liechtiマルティン・リーヒティ(ドイツ語読み、フランス語読みでは「マルタン・リェクティ」)は、2007年末に熱狂的に書いている。「我々は、2004年に年間、投資顧問一人当たり400万フランを扱っていたが、2006年には1700万フランにした。我々はさらに野望を拡大し、顧問一人に付き6000万にしなければならない!」 リーヒティは結局裁判で証言することになる。バーケンフェルドと同じく、他に選択肢はなかった。カリブ海へのバカンスに向かうときに、マイアミの空港で逮捕され、パスポートを押収され、電子ブレスレットの装着を義務付けられ、裁判が終わってからでなければスイスに帰国することは許可されない。それ以来、スイス銀行化協会は、銀行の秘密を保持する者に対して、アメリカ合衆国訪問を断念するように助言している。同じ運命に苦しむ危険を冒さないように。

 強権的な方法によって、アメリカの司法当局は、UBSの非合法な商行為を曝け出すことに成功した。全ては2001年に始まる。この年、スイスと米国は一つの協定に調印する。スイスの銀行に株式または現金を所有する全ての米国民は、身元を特定され、その資産から生まれた利益の総額を申告しなければならない、というものである。外国銀行のスイス子会社の大部分と同じように、バークレイズはそのとき、匿名のままでいることを望むアメリカの顧客の口座を清算する。ブラッドレイ・バーケンフェルドはその従業員の一人である。オレニコフやその他のハイリスクの顧客とともに、彼はUBSに移る。ここはすばらしい世界の全てを、両腕を開いて迎え入れる。それ以来、バハマやリヒテンシュタインのダミー会社を経由する、非申告の資産の移動というワルツが始まる。

(つづく)

AIRY ROUTIER



Le Nouvel Observateur 2318 9-15 AVRIL 2009

http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2318/articles/a398652-.html




これを最後に、ネタ切れになるので長すぎるので、次回 スイスの銀行家が口を割るとき【2】 に続きます。

訳文中の、ロシアの資産家オレニコフとバーケンフェルドの事件に関しては、

秘密暴かれるUBS、揺れる富裕層(1/3)

秘密暴かれるUBS、揺れる富裕層(2/3)

秘密暴かれるUBS、揺れる富裕層(3/3)

に詳しく説明されています。というか、これを読めば当エントリーをわざわざ読む必要はないくらいですが・・・

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