かつ て「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭を産出する
福島県いわき市の炭鉱。エネルギー革命の影響で
山は閉山の道をたどることになる。炭鉱会社は、
地元の温泉を活かしたレジャー施設「常磐ハワイアン
センター」
の計画を進めていた。
目玉となるのは、フラダンスのショー。
地元の娘たちにダンスを指導するべく東京の名門
歌劇団から招かれた一人のプロダンサー、平山まどか。
しかし彼女はいま落ちぶれていた。いろんなしがらみを
かかえ町へ来た彼女は、炭鉱を守ろうとする新事業反対派
の住民たちと衝突を繰り返しながら、生きていくために
熱心にダンスに打ち込む娘たちに、彼女自身も情熱を
徐々に傾けていく。
そして一人、また一人増えていくダンサーたち。
はたしてこの事業は成功するのか。



実話を基にしたストーリーだけあって、観終わってみて
思うのは、斜陽化していく産業に沈んでいく町に一陣の
風をふきこんだ「平山まどか」の物語でした。


ストーリー自体は、廃坑に沈む町に、突拍子もない
ハワイ化計画がおこり、フラダンスをメインに素人の
女性たちが、それぞれの境遇や運命に左右されながら、
笑いあり、涙ありのサクセスストーリーです。
ある意味、よくあるパターンのお話ですが、やはり
この手の「人が苦労や問題を乗り越えながら成長していく話」
には安心感とともに、さわやかさがのこりますね。

フラダンスの情熱的で気分を高揚させるような一面や、

あの手の動きには『手話』としての意味があることなど、

発見も多かったです。


でも、なんといってもよかったのが物語の中心にいる「平山
まどか」を演じる松雪泰子さんの熱演でした。
「フラガール」たちを陰にも日向にも懸命にささえ、
ときには叱咤し、ともに泣き、彼女なりの心の変化も
見せながらの劇中の存在感は、見事でした。


この人は以前「太陽は沈まない」というTVドラマを
見て以来好きな女優さんです
そのときの役どころは大病院の医療過誤に対して、微力ながらも
懸命に立ち向かう家族を支える弁護士役でした。
毅然とした容貌と冷静な立ち振る舞いの中に、情熱と優しさという
とても人間的な一面を併せ持つ女性を演じられていたので、その
役者としての幅の広さにとても好印象をもっていました。


「フラガール」での主演も、僕の期待以上に応えてくれました。
この人の魅力のひとつは、「怒り」ですね。
今回の作品の中でも、何度か男性相手にひるまない「怒り」を
見せてくれます。どのシーンをとっても、「怒」の感情表現に
主張がぴんとのっかっていて、力感があり、頼もしく、決まって
いるのです。だから精神的に強さをもった女性を好演できるん
でしょう。


そして彼女が流す「涙」は、「怒」から印象づけられるものとは、
裏腹の"弱い部分"をとても強調するので、その人物の奥深さがよく
表れ、ストーリにもアクセントが入ります。
表面と内面のギャップによって見るものにその点を意識させてしまう、
そんな「涙」でもあります。


また、彼女の「笑顔」は人を和ますためのものでない、のが特徴です。
彼女が見せる「笑顔」は自分がその人を受け入れたときにのみ、言葉
にかわって向けられる特殊な「笑顔」です。

演技のうえでは普通の笑顔というものが少ない、というか"無い"に等しい。

それゆえ笑顔に「説得力の強さ」を感じます、この女優さんには。


そういう意味で、松雪さんの「喜怒哀楽」は、見るものを意識している、
「やりこんでいる部分」を非常に強く感じます。
そういうところが、かえって女優としての魅力を感じるのですね。
見ていて松雪さんの表現が面白い…待ってました!さすが!という感じで。


僕が竹内結子さんに感じる演技と、松雪泰子さんに感じる演技との
違いは、誤解を恐れずにいえば「自然」と「人工」の違い、といえます。
役になりきれる点では、まったく共通する二人と思いますが、なりきり
方で、かなり松雪さんは「あえて演じている」度合いが大きい。
そこが松雪さんにとって「見せどころ」なのではないか、と思うのです。
Heart Wave・・・

僕はこの「やりすぎる」松雪さんの作り出す世界が、とても好きです。

物語の中で、彼女がどう役を演じ、その場面にふさわしい表現をするか、

そしてどう自分らしさを醸し出すか、という見るものにとっての"楽しみ"を

彼女は、わかりやすく味わわせてくれるから。


最後に、この作品で「蒼井優」という女優を知りましたが、いい表情を
するなぁと思いました。まだ洗練されていない「幼さ」が残ってましたが、それが
この作品中の役どころにぴったりだったし、ラストでみせる笑顔は力が
ありました。キャスティングの良さが光ってます。
高ぶる気持ちが伝わる笑顔…なかなかできる表情ではないですが、見事な
ものでした。「素朴」という美しさがとても魅力的な人・・・

これからが楽しみな方ですね。


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