「ちょうどえかったかも知れんのー」

ケンスケが隣にいたトモカズにささやく

 

「頭数じゃあ、負けとるけんの」

ニヤニヤしながらトモカズが言うと

 

「じゃが、全員来ても漢のワシは問題ない」

と、ケンスケが真面目な顔をして答えたので

 

「はいはい、漢の中の漢ーっ」

とトモカズは笑いながら返した

 

 

 

 

 

「あいつら残り5人じゃないですか、みなヤッちゃりましょうよ」

赤坂中の2年生がパンクにつげる

 

「オマエら、ヤラれる思うて、びびってチビっとんじゃないんかー」

 

「ギャハハ」

「こいつらマジかー」

 

パンクの声に反応して一斉に笑い出す者

ニヤニヤにて見下す者

 

ポケットに手を突っ込んだまま

かわいそうにという顔をして

なめた目つきで見る者

 

いろんなヤツがいた

 

その瞬間バンクの顔面に

飛び蹴りが入ったかと思うと

 

すかさず脇にいた一人に頭突きを食らわせ

その横にいる奴の髪をつかんで

マコトが膝蹴りを食らわせた

 

「くっそっ」

 

不意を突かれたパンクが

よろけながら立ち上がったその刹那

マコトがパンクの横っ腹にけりを入れる

 

「ぐはっ」

パンクは今度は前かがみにしゃがみこむ

 

マコトがすかさずパンクの背中に蹴りを入れ

右手に持っていた短い木刀を両手に持ち

しゃがんだパンクの背中に振り下ろした

 

「うぐッ」

パンクが低いうめき声をあげた刹那

赤坂の連中の顔色が一気に変わった

 

それを見ていた

コウタ、トモカズ、ケンスケ、ショウイチが

すかさず「ザッ」と足を踏み出す

 

「次は誰ならッ」

 

マコトが声を上げると

もうすでに何人かの足は後ろに下がっていた

 

 

 

 

 

 

 

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トイレの横に並ぶC中のヤツらと

俺たちは向き合った

 

「ほう、お前ら逃げんとよう来たのう」

 

パンクがポケットに手を入れたまま

ニヤニヤしながら言い放った

 

だが目つきは鋭く

微動だにしてはいなかった

 

 

 

 

 

「オマエら、今日はお薬の時間はすんだんか?」

いつも冷静なトオルが

パンクに向かって口を開く

 

「飲み忘れたらダメでちゅよ-」

横からコウタがすかさずちゃちゃを入れると

 

「やかましいわ、カスが!」

「やるんか、コラ!」

とC中の何人かが口を開く

 

 

 

 

「ていうか、ご招待受けたんは、こっちじゃいうて聞いとるが・・・」

「のう、赤髪クン」

 

トオルが桧垣にニヤニヤしながら

指でコイコイとジェスチャーをする

 

「とりあえず、こんなぁ、イワしてくるわ」

 

桧垣が向こうに行けとトオルに首をふり

トオルはそれにこたえる形で

2人は列から抜けた

 

 

 

 

 

「うちのモンがいろいろ世話になったらしいのう」

秋田が口を開いた

 

「わしがゲームを楽しんどったら、からんできたのはそっちなんじゃが・・・」

「おまえ、バカなんか?バカなんじゃろう?いやバカに違いない」

 

と、アキラが笑いながら返した

その瞬間両者の目つきが変わった

 

「こいや、カス」

「やかましいわ、バカが」

 

二人とも低い声で言うと

少し離れたところでタイマンが始まった

 

 

 

 

 

 

 

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「来ました、多分港中です

「7人おります


トイレの外から声がした






「来たか、クソどもが


秋田が立ち上がり外へ出る






「間違いない、港中のヤツらじゃのう


秋田について
トイレから出た桧垣が

自転車を公園の
入り口付近に止めている
集団を見てつぶやいた




「あのリーゼントがアタマよ」

桧垣はつぶやくと

「あんなを徹底的にヤレよ


と、一段低い声で言った




「あのトイレにおる集団かのう」

「おう、多分そうじゃろう


入り口に自転車を止めながら
様子をうかがう

「そこそこ人数おるのう
誰か短木、持っとるんか

「ワシとコウタが持っとるで


マコトが答えながら
学生服の裏から
隠した木刀を取り出す

「向こうもこっちに、気づいたようじゃのう


集団と集団が
正面を向き合い
遠くから相手を確認した






威嚇しているヤツ
ポケットに手をつっこみ
ニヤニヤ笑っているヤツ

相手を目で見ると
一瞬で緊張感がはしる






「よし、いくか


アキラは静かに言うと
全員でトイレに向かって
歩きはじめた





「数は負けとるが、1人1人つぶしゃあええ

「アイツら、何やってくるか分からんし、武器も持ってきとるじゃろう」

「武器出す前に、速攻でいわさんかい


「今日は最初から、木刀使うで」

「今日はチンタラせんと、一気に勝負つける気でいこうや



歩きながら
トオルが中心に話をまとめる



俺たちはやがて
秋田たちの前に立った





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待ち合わせの運動公園

トイレ脇に
人だかりがあった




「おい、2年は皆、そろうたか


桧垣が横にいる一人に
声をかけた

「8人全員、そろいました」
「ほうか、分かった


桧垣は答えると

「ちょってみんな、集まってくれ


と、全員を集めた





「今回は港中のアタマを、全員でツブすけん


「まわりのザコは相手にせんでええ、徹底的に一人だけ狙え


桧垣に続いて
秋田も口を開いた





「一気にいくんスか


2年生の1人が質問すると

「2年は後ろに回るかどうかして、腕と足をとにかくつかめ」
「オマエらがロックしたら、ワシらがシバキまわすけん


と、桧垣が指示をする






「とにかくアタマだけに集中して、先にシバキ倒す

「その後のザコの処理は、流れを見て決めるけん」

秋田が言うと

「分かりました」

と、2年の1人が答えた





「今日は皆、シャンとしとるよのう


パンクがニヤニヤしながら言うと

「前回の天神中のときは、ちいとキキすぎとったけんの


と、秋田が笑う

「ワシゃあ、こないだ港中のアタマにシゴされたけん、今日はシャンとしとるで


桧垣も笑う

「今日はビッチ共を、後悔させちゃらにゃあ、いけんのう」

パンクが言いながら
地面にツバを吐いた






「まあ、とりあえず一服して、リラックスしとかんかい


桧垣がトイレの中に入る

「後で変わるけん、先に見張っとけ、港中のモンが来たら、すぐ言えよ」

パンクが言いながら
3年達から
先にトイレに入る





「全員で22人か


「なら相手の倍は、おるじゃろう」

「ワシの港中の知り合いに聞いたら、7人ぐらいじゃないかゆうて、言いよったで」

などと言いながら
タバコをふかした




約束の日は来た
隣町の境にある待ち合わせ場所の
運動公園に自転車で向かう






2回目の他校との
ケンカだからなのか
前回に比べると余裕があった

だが、ケンカをしたいがために
ここにいるわけじゃないのに
なぜ自分がケンカをしにいくのかが
不思議だった






ここにしか居場所がなく
ここでしか受け入れてくれるところは
何処にもなかった

ここにいるみんなが仲間で
ここにいるみんなが居場所だった




居場所を守るためのケンカが
自分の意志と反しても

自らの居場所を失いたくなければ
いくしかないのは当然だが

それ以上に最近は
仲間を大切にしたいという意識が
芽生えていた






仲間にちょっかいを出すのなら
徹底的にたたかう

そんな気持ちを持つ仲間ばかりが
集まっていたからだろう





自分を受け入れてくれて
自分を認めてくれた仲間に
ちょっかいを出すのならたたかう


自分を守ることが
自分の居場所を守ることに
変わっていた




「向こうは何人ぐらい来るかのう

「天神中とやったときは、たいして人数きとらんかったんじゃろ

「1人で3人やりゃあ、なんとかなるじゃろう

コウタとトモカズが笑う





「とりあえずアイツら、何してくるか分からんとこがあるけん、気ぃつけとけよ


トオルがいうと

卑怯なことしやがったら、漢として許さん


と、ケンスケが答える






4月のはじめにしては
少し海風が肌寒かったが


今回はみんな
特に緊張した感じもなく
自転車を走らせていた





海岸線をしばらく走ると
待ち合わせの運動公園が見えてくる


俺たちは自転車を飛ばして
公園に向かった



「で、伊東はどうするんや声かけるんか

パンクは煙をはき終わると
目をあけ秋田の顔を見た

「伊東かあ、どうするかのう


「アタマ数は、多いにこしたことはないがのう


横から桧垣が口をはさむ





「2年は何人ぐらい集められそうや


秋田が後輩に聞く

「今んとこ、5人はカタイ思います


「なら、3年合わしたら15人ぐらいにゃあなるかのう


「ほうじゃのう」


桧垣の言葉に秋田が答える





「まあ、クソビッチの奴らの人数、少ないんじゃろう


パンクが言うと

「ケンカは数じゃないが、数は多くてもええ」

と秋田が答える

「今日のはあんまり、きかんのう


パンクが吸い終わると
タバコを桧垣に渡した

「フィルターぎりぎりまで吸うか


と、言いながら
桧垣はタバコを深く吸った



「月曜日、全員大丈夫なんじゃろ

「おう、みな行けるで


いつもの非常階段で
コウタの声にトオルが反応する






「ま、ジャンキーな奴ら相手に、負けるわけいかんけん


トモカズが言うと

「あいつら、何でもありじゃけん、気ぃつけんにゃあの


トオルが言う


「今回も木刀大作戦するんか

「短木(短い木刀)だけで、ええじゃろう」

マコトの問いにトオルが答えた

「去年は先輩が不細工じゃったけん、後輩らのためにも気合いれんにゃあ、いけんよのう

と、トモカズがつぶやいた






毎年港、天神、赤坂の各中学は仲が悪く
毎年3年生が争っていた


去年、港中の3年は
赤坂中天神中から呼ばれても

人数が集まらず
出て行かなかったので

「ヤリもせず逃げる中」

と、バカにされ


港中の生徒が
天神町や赤坂町の病院に行ったり
遊びに行ったりすると

カツアゲなどをされる生徒も多く
やり返した生徒もいるにはいたが
かなりカモにされていた

前回、港中と天神中の2年同士が
ケンカすることになったのも


1年生が病院に通っているときに
天神中生からカツアゲをされて
相談に来たのがきっかけだった





「負けるわけにはいかんけん


マコトが空をみながら
つぶやいた




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「秋田さん、日にちが決まりました。月曜日に運動公園です

部室裏のたまり場で声がした

「わかった


秋田はうなずいて答えると
吸っていたタバコを
地面で揉み消した






「集めれるだけ集めんかいや


横にいる桧垣に声をかける

「ほうじゃの、この間は油断したが、こんだあ仇とっちゃる


桧垣はポケットから
タバコを出し

ポンポンと叩いて1本抜くと
紙を出しその上で
タバコをほぐした

「何をしよるんですか、桧垣さん


笑いながら
後輩らしきヤツが聞いてくる

桧垣は黙ったまま
ポケットから
黒い玉みたいなものを取り出し

それをほぐしてタバコにまぜ
また紙に巻きなおすと

「ほら、吸うてみい


と、巻きなおしたタバコを
さっきの後輩に手渡した


「あ、スミマセン

一瞬少しためらったが
すぐに口にくわえると
ライターで火をつけた

目を閉じて深く息を吸い込み

「フゥーッ


と息をはく

「どうや


桧垣が聞くと

「え、なんかヤバイもん入っとるんですか


と、あわてて聞き返した

「じゃなくて、気分はどうやいうて聞きよるんよ


と、桧垣が笑いながら答える

「あー、なんか味が違います


もう一度口にくわえ
煙を吸い込む

「ちょっと貸してみい


秋田がタバコを受けとり
煙を吸い込んだ

「おー、いつもよりキキがワリぃのう


秋田がタバコを
桧垣に渡しながら言うと

「ちょっとケチったけんの


桧垣が答えて口にくわえ
煙を吸った






「おー、ジャン中の名にふさわしく、ジャンキーがおそろいじゃの


ガムをクチャクチャと噛みながら
両手をポケットに入れて
パンクが近づいてきた

「今、混ぜたとこよ


桧垣が答える

「おー、ワシも一服


そう言うと秋田に近づいて
タバコを受け取った

「港中とヤルで
月曜日じゃけん頼むわ

秋田がパンクに言うと

パンクは目を閉じて
タバコの煙を吐きながら
中指を立てた



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俺たちは3年になった

始業式を終えて
いつもの非常階段に
いつものメンバーがあつまる





アタマのアキラ

天然だがムードメーカーの
コウタ

いつも冷静な策士トオル

一番背が高く
仲間思いのトモカズ

コテコテの体育会系で
柔道部のケンスケ

暴れん坊のマコト

そして
いつもクールなショウイチ

この7人は
いつも固定だった






「で、天神中はいつヤリにいくんや


マコトが言う

「天神中だけじゃなしに、赤坂中からもきとるんじゃろ


コウタがマコトに言うと

「とりあえずアキラがケンカ売ってきた、赤坂中からかのう


トオルが答える




「じゃあ、早速赤坂中に申込みせんかいや」

「おう、じゃあいつでもええか


「日取りは任すけん


「ワシらの代になってナメられたら、下のモンにワリいけんのう


と、言いながら
非常階段で大声で話していると

下から階段を上がってくる
音がした




「そん時は、ワシらも連れて行ってください


2年になった
村井と久川だった

「足手まといに、ならんようにします


「ワシらも一緒に暴れさせてください」


村井がアキラに言うと
アキラは目をつむって
寝ているようだった






「また、寝とるんか
まあ、いつものことじゃけん

「ここへ来ちゃあ、寝るけんのう


トオルとショウイチが笑うと

「おう、よろしく頼む


と、ひとこと言うと
アキラはまた目をつむった



「とりあえず、申込みするで
赤坂中にはワシから電話しとくけん

「おう、頼むわ


トオルがいうと
マコトが答えた





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顔面にモロに
頭突きが入り

特攻服は痛さのあまりか
鼻あたりを片手でおさえて
その場に方ひざをついた


すかさずアキラが
もう一度顔面に
正面からケリを入れた





「うぐっ


特攻服は横に回転し
後ろへ倒れる

そこへマコトが
特攻服の背中に
ストンピングを入れまくる





「オマエら、はあ、えかろうが


西村がマコトの肩をつかみ
止めに入った

特攻服の顔からは
血が流れていた

「はあ終わりじゃ
オマエら全員、こっから立ち去れ

西村が叫ぶ






マコトは

「わかりました


と、おとなしく
後ろに下がった





西村の呼びかけに
卒業生が動き始める

「先輩、スイマセンでした」

「失礼します


続々と頭を下げながら
卒業生が引き上げていく






帰っていく卒業生を見ながら

「アキラ、ワシらも帰らんかい


トオルがアキラに言うと

「ほうじゃの、みんな帰るんなら帰ろうか


と、アキラも答えた







「小僧ナメたことしやがって次、会うたら覚えとけよ

帰るアキラを見ながら
特攻服がつぶやいた


アキラは目もあわさず


「いつでも恋

と、ひとこと答えた




いきなり殴られるとは
予想をしてなかったのだろう


特攻服はアキラに
ボコボコにされた


話す途中、しかも年下から
いきなりパンチの洗礼を受け

全員の前でいい恥さらしだった






まず顔面に左ほほに一発
すぐに左手で
胸元をつかまれ連続で二発

そしてそのまま
腹にケリをくらい
後ろにぶっ飛んでいった






「ええど、アキラ


尻もちをついた特攻服に
マコトが追い討ちをかけ

横から左肩あたりに
ケリをいれた

「はあ、トコトンやっちゃるわ


マコトが吠える






その時、後ろの方で

「ドサッ


という音がした

振り返ると
ケンスケが松浦を
投げ飛ばしていた




「さすが柔道部


トモカズの言葉に

「つい反射的にのう、最後はワザと手を離したが


と、ケンスケは答えた






柔道は基本的に
相手を投げたときに
投げっぱなしにせず

投げ飛ばした相手の体が
畳から浮きやすくなるよう
引っ張ってやるのが基本だ

投げられた相手も受け身をし
双方の技術でダメージを
軽減するのだが・・・


今回ケンスケは
投げ飛ばして手を離した


松浦は受け身もとれないので

モロにコンクリートの床に
投げ飛ばされ
落とされた状態になる






「はい、1人終了


ショウイチがクールな
笑みを浮かべた






残るは特攻服ただ一人
特攻服は起き上がると
アキラとマコトの前に立ち

「くそっ、無力な虫けら共が


と、言いながら
アキラに向かって
パンチをはなってきた

アキラはそのパンチを
両手で受け止め
握力を最大にして

「一人一人は無力かも知れんがのう、仲間の力合わしたらワシらでも無敵になれるかも知れんのんよ


と、言いながら
特攻服の手を引っ張り
頭突きをくらわせた