文学どうでしょう

立宮翔太の読書ブログ。
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十二番目の天使/求龍堂

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オグ・マンディーノ(坂本貢一訳)『十二番目の天使』(求龍堂)を読みました。

意外と思われるかどうかは分かりませんが、少年マンガと自己啓発書はよく似ています。まずは少年マンガから見ていきましょう。週刊少年ジャンプのテーマとして知られているのが「友情・努力・勝利」。

要するに、仲間と共に訓練や修行をして、巨大な敵や困難を乗り越えるというのが物語のパターンとなるわけです。バトルものでもそうですし、甲子園を目指すスポ根ものでも、パターンとしては同じです。

週刊少年ジャンプではなく月刊少年ジャンプに連載されていた作品ですが、ちばあきおの『キャプテン』というマンガがあります。実にすごいマンガで、主人公のキャプテンが次々と変わっていくんですよ。

キャプテン (1) (集英社文庫―コミック版)/集英社

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最初の主人公の谷口は名門校から転校して来たせいで、本当は単なる補欠だったのに、すごい実力の持ち主だと勘違いされてしまいます。言い出せずに努力を重ねて、やがては本当の実力を身につけて……。

絵柄は古く感じられるかもしれませんが、それぞれのキャラクターが個性的で面白いですし、まさに「友情・努力・勝利」に心打たれる名作マンガなので、読んだことがない方は、ぜひ読んでみてください。

一方、自己啓発書というのは成功哲学について書かれた本ですが、有名なのがデール・カーネギーの『道は開ける』、わりと新しいもので言えばスティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』などがあります。

ぼくが最も愛読していたのは、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』。ビジネスなど人生の成功者にはある共通点があるということが様々なエピソードで語られていく本です。読むとやる気が出ますよ。

思考は現実化する―アクション・マニュアル、索引つき/きこ書房

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『思考は現実化する』に限らず、自己啓発書というのは大体どの本もメッセージとしては同じで、明確な目標(ビジョン)を持ち、情熱を燃やしながらたゆまぬ努力を続ければ、必ず成功出来るというもの。

まさに少年マンガの主人公というのは、この成功法則通りに行動しているんですよね。『キャプテン』で言えば自分たちがどんなに弱くても決して諦めず、敵チームに勝つためにひたすら練習を続けること。

ダメだと思って行動しなければ何も手に入れられず、目標を持ち努力をすれば必ず結果がついてくる、それが冒険や競技を通して語られるのが少年マンガ、メッセージで語られるのが自己啓発書と言えます。

さて、今回紹介する本の作者であるオグ・マンディーノは自己啓発書のベストセラー作家で、『十二番目の天使』は失意のどん底にあった主人公が少年野球チームの監督になり様々なことを学んでいく物語。

物語というよりはプラス思考の素晴らしさを綴る自己啓発書よりの作品で、まあ分かりやすく言えば岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』に近い雰囲気。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら/ダイヤモンド社

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『もしドラ』はマネージャーがピーター・ドラッカーの経営哲学の本を読んで、それをチームに活かすという作品ですね。物語としては出来過ぎですが、経営哲学に関心のある方は手に取ってみてください。

同じく物語としては出来過ぎで、メッセージ色が強い故に好き嫌いは分かれそうな『十二番目の天使』。ただ、下手くそな少年が努力するスポ根的なノリはベタながら面白く、ラストには感動させられます。

作品のあらすじ


こんな書き出しで始まります。

 外の世界との断絶……自分自身に課した幽閉……。葬式以来、眠ることと人生の終わりを感じながら書斎の椅子にぼんやりと座り続けること以外には、ほとんど何もしていなかった。電話もファックスも回線を切り、外に通じる扉と窓は、すべてしっかりとロックしてあった。友人や隣人たちからの同情の言葉は、もう一言も聞きたくなかった。(11ページ)


愛する妻のサリーに支えられ、仕事に情熱を注いで来た〈私〉ジョン・ハーディングはついに、大手会社の社長の座を手に入れたのでした。本社に近いのが、生まれ故郷ニューハンプシャー州ボーランド。

これで自分の会社を率いることと、故郷に戻るという長年の夢が叶いました。成功者として故郷に迎え入れられ幸福の絶頂でしたが、それから間もなくサリーと息子のリックが事故で死んでしまったのです。

どんなにいい仕事があっても素晴らしい家があっても、それを分かち合える妻と子供がいないならば、もうどうやって生きていけばいいのか分かりません。〈私〉は外部と連絡を絶ち家に閉じこもりました。

そして以前治安の悪い地域に住んでいた時に念のために買っていた拳銃コルト45を手に取り、弾丸を込め始めます。撃鉄を起こし、銃口をこめかみにあてて、神に祈りを捧げ、引き金を引こうとしました。

するとまさにその時、ベランダから大声が聞こえたのでした。「ジョン、ジョン! 中にいるのか! 答えてくれ、頼むよ! ドアを開けるんだ! どのドアでもいい! 窓でもいい!」(36ページ)と。

心臓バイパス手術を受けたばかりで療養中のはずの幼馴染ビル・ウェストがかけつけてくれたのでした。最近ではもう付き合いはなくなっていましたが、幼稚園からハイスクールまで一緒だった、親友です。

ビルは誰とも会いたくないと言う〈私〉を無理矢理ドライブに連れ出します。そして昔二人が一緒に汗を流した、町営のリトルリーグ用公式野球場へ行ったのでした。昔を懐かしんで、色々な話をする二人。

ボーランド・リトルリーグは最低十二人からなる四チームに分かれて戦うのが伝統でした。しかし一人監督が足りず、仕事を辞めるつもりで休んでいる〈私〉にビルはその監督になるようすすめたのでした。

 私は首を振り、ため息をついた。
「すまない。俺には無理だよ」
 ビルが立ち上がった。良かった。あきらめてくれたようだ。
 続いて彼は、ダグアウトの階段をゆっくりと登り、ホームプレートの方に歩き出した。彼の足が止まった。こちらを振り向いて彼が言う。
「なあ、ジョン。俺たち、リトルリーグの最後の年に同じチームだったよな。覚えてるだろ? 俺たちは無敵だった。リーグチャンピオン!……ところで、あのときの俺たちのチーム名、覚えてるか?」
 ビルの最後の説得が始まっていた。
「もちろん覚えてるさ。エンジェルズだよ」
 ビルが頷いた。
「実はね、ジョン。まだ監督が見つかってないチームの名前が、それなんだ」
 私は目を閉じた。ずーっとそうしていた。どのくらいそうしていただろう。思い出せない。いつしか私は、「選抜テストは土曜の朝だっけ?」と尋ねる自分の声を聞いていた。(53~54ページ)


土曜日、選抜テストが行われました。そうして子供たちの実力を元に四人の監督が選択会議で子供たちを選び、チームが作られるのです。〈私〉には、気になる選手が一人いました。とても体が小さな子供。

やる気はあるものの何をやらせても下手くそなその子供ティモシー・ノーブルをどの監督も取りたがらないだろうとビルは言います。少しでも試合に出さなければならない決まりがあり、お荷物になるから。

選択会議ではトッド・スティーブンソンという優秀なピッチャーをエンジェルズが獲得することが出来ました。そしてどこからも指名されず最後に残った選手が加入することになります。ティモシーでした。

こうして十二人の天使たちからなる新生エンジェルズが活動を始めたのです。練習日になると思っていた通り、ティモシー一人だけが守備も打撃も、何をやらせても駄目で、みんなから笑われてしまうほど。

〈私〉はティモシーの居残り練習に付き合うことにしました。そうする内にティモシーの父親は家を出ていってしまい、母親と貧しい暮らしをしていることが分かります。家族の話はしたくなさそうでした。

「すると、お前はまだ一年かそこらしか野球をやってないのか」
 彼の顔に生気が戻った。彼は元気に頷き、額に垂れていたブロンドの髪を古い野球帽の中に押し込んだ。続いて彼は、小さな胸を大きく張って両の拳を強く握りしめ、それを頭上にかざして大声で叫んだ。
「でも、毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどん良くなってるんです!」
「ん? 今、なんて言ったんだ?」私は唾を飲み込んだ。
「毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどん良くなってる!」
 私は自分の耳を疑った。こんな言葉を、どうしてこの子は知っているんだろう……こんな小さな子が、どうして……私は深く息を吸い、自分を落ち着かせようとした。
 ビジネスマンとして出世街道を歩み始めた頃、私は、以後の自分の人生に素晴らしい影響を及ぼしてくれた、一冊の本に巡り合った。フランスの心理療法学者、エミール・クーエが二十世紀初頭に書いた『意識的自己暗示による自己支配』という本だが、その中でクーエは、「心身双方の病気のほとんどは、ポジティブな自己暗示によってきれいに取り除ける」と断言していた。
(120~121ページ)


ティモシーが自分に言い続けているもう一つのフレーズはウィンストン・チャーチルがオックスフォード大学の卒業生に贈った「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめるな!」(123ページ)。

ティモシーはその二つの言葉を、なにかと親切にしてくれる年老いた医師メッセンジャー先生から教わったのでした。メッセンジャー先生は野球が好きなのか、ティモシーの練習を足繁く見に来てくれます。

毎日よくなっている、絶対にあきらめるなの二つの言葉を自分自身に言い続け、どんな辛い練習にもめげないティモシー。いつしか〈私〉の指導にも熱が入りますが、やはりそれほど簡単に上達はしません。

やがて試合になると、ティモシーはフライを落としてしまうという大きなエラーをして、チームが負ける原因を作ってしまったのでした。

帰宅途中で〈私〉は子供の頃に自分のエラーでチームが負けた時のことを思い出します。恥ずかしくて悔しくて、家に帰れず球場でずっと泣いていたことを。その時は父が迎えに来て慰めてくれたのでした。

ハッとして車をUターンさせ球場に戻ります。すると暗闇の中、外野フェンス近くの芝生の上にティモシーが力なく座っていたのでした。

落ち込むティモシーを慰めていた〈私〉は、ティモシーが使っているグローブがあまりにもボロボロなことに驚きます。そこで亡くなった息子にプレゼントした新品同様のグローブをあげることにして……。

はたして、がんばるティモシーは、試合でヒットを打てるのか!?

とまあそんなお話です。愛する妻と子を自己で失い、絶望にうちひしがれる主人公が、体が小さく誰よりも下手くそな十二番目の天使ティモシーが努力し続ける姿を見て、いつしか心動かされていく感動作。

この本の教え「毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどん良くなってる!」「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめるな!」と自分に暗示をかけるやり方はやろうと思えば実生活で応用出来ます。

そうしたプラス思考の大切さを説く自己啓発書としても読めますし、純粋に下手くそなティモシーがとにかくがんばるストーリーを楽しむことも出来る作品。感動的な一冊なので、興味を持った方は、ぜひ。

次回は、アリス・シーボルト『ラブリー・ボーン』を紹介します。
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