文学どうでしょう

立宮翔太の読書ブログ。
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偉大なる、しゅららぼん/集英社

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万城目学『偉大なる、しゅららぼん』(集英社)を読みました。

もはや、荒唐無稽な出来事を大真面目に描かせたら、右に出る者がいないんじゃないでしょうか。相変わらず素晴らしく面白いです。

怪しげなサークルに勧誘されてしまった主人公の、恋あり戦いありの学生生活を描いた『鴨川ホルモー』や、会計検査院に所属する3人が、大阪に隠された秘密と直面する『プリンセス・トヨトミ』は、映画化されて話題になりましたね。

どちらも、荒唐無稽な歴史や伝統を、もうひたすら大真面目に書いていて、コミカルさとシリアスさが共存しているところに面白さがあります。

巧みな設定、キャラ立ちした登場人物たち、そして思いも寄らない展開の連鎖。万城目学の作品はどれも面白いので、おすすめですよ。

さて、今回紹介するのは、『偉大なる、しゅららぼん』なんですが、もうタイトルの時点でユニークですよね。

「偉大なる」という形容の後には、本来すごいものが来るはずですが、それが「しゅららぼん」ですよ。「しゅららぼん」て!

耳にしただけで、なんだかとってもへんてこで、偉大なんだか偉大じゃないんだか分かりません。というか、絶対偉大じゃない気がしますよね。

では早速、「しゅららぼん」が出て来る場面を紹介しましょう。

「しゅらららららららららっ、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼんんんんんんんんん」
 ほとんど間を置かず、すさまじい音の波濤が襲いかかってきた。(323ページ)


つまり、そういうことなんです。「しゅららぼん」というのは、音のことで、一種の擬音語なんですね。

え、全然意味が分からなかったですって? では、もうちょっとしっかりとした説明がされている場面を引っ張って来ましょう。

「敢えて言うなら、しゅららら――、だな。これは最初の部分だ、あとはわからない。まともには聞けない音としか言いようがない」
 とあっさり棗が先陣を切った。
「涼介は?」
 催促の言葉を向けられ仕方がなく、
「ううん・・・・・・、そうだなあ、敢えて言うなら、ばばばば、いや、ぼぼぼぼん――、だな。とにかくやかましい。棗の言ってる最初の部分は、まったく知らん」
 と先発に続いたが、やはりしっくりこない。すると、
「しゅららぼん、だな」
 と淡十郎が妙なまとめ方をした。
「何だ、そりゃ?」
「二人の聞こえた音を合わせたらそうなる」(358ページ)


つまり、そういうことなんです。なるほど、そういうことだったんですね。ふむふむ。

えっ、やっぱりよく分からなかったですって?

いやあ、実を言うと、ちゃんと説明をする気がないんですよ。すみません。

「『偉大なる、しゅららぼん』って何だろう?」と思ってしまった時点で、もう作者の勝ちというか、気になってしまった方は、もうぜひ読んでみてください。後悔はしないはずです。

万城目学の小説は、読んでいくごとにじわじわと設定が分かって来るところに面白味があったりもするので、読む前にはあまり情報を知らない方が絶対いいです。

なかなかに紹介の難しい作家なんですよ。それだけ、ずば抜けて面白い発想の、魅力的な作品を書く作家ということでもあります。

今まで、京都、奈良、大阪などを舞台にして来た万城目学ですが、今回の物語の舞台は滋賀県の石走(いわばしり)です。琵琶湖のすぐそばにある、かつての城下町。

石走自体は架空の地名のようですが、その石走を実質的に支配している有名な一族に、日出家という一族があるんですね。

物語の語り手である日出涼介は、そこの分家の生まれです。高校生になると同時に、本家に行って、お城で本家の人たちと暮らすことになりました。

それはどうやら、何らかの力の修業に行くことでもあるようです。その力とは一体何なのでしょうか?

本家のお坊ちゃま日出淡十郎と涼介とは、友達のような主従関係のような不思議な距離感を保ちつつ、同じ高校に通い始めるのですが、クラスメイトに思わぬ人物がいました。

棗広海という、棗家の人間。日出家と棗家は言わば宿敵同士の家柄なんですね。どうやら棗家の人間も不思議な力を持っているようです。

静かで、それでいて激しい対立をくり広げる日出家と棗家の面々。しかしやがて、日出家と棗家両方を脅かす存在が現れて・・・。

『偉大なる、しゅららぼん』は簡単に言えば、少年マンガ的な小説です。しっかりしたキャラクター設定もそうですし、ストーリー展開もまさにそんな感じです。

特にライバルを助ける時の感じは、『ドラゴンボール』におけるベジータの「勘違いするな。お前を助けに来たわけじゃない、お前を倒すのはこのオレだ!」の感じと、ほとんど一緒と言っていいでしょう。

ただ、そうした「少年マンガ的」というのが、少年マンガのコピーとかノベライズのようかというと、それは全く違っていて、小説ならではの設定があったり、擬音語が巧みに使われていることもありますが、小説としての面白さがしっかりとある作品です。

なかなかに荒唐無稽な設定の物語ですが、かなり夢中になって読める小説だと思います。「しゅららぼん」が気になってしまった方は、もう読むしかないですよ。

作品のあらすじ


テレビではマジシャンがマジックを成功させて、決めゼリフを言います。「いかがでしたか? ザッツ――KOWABY SHOW!」(13ページ)と。

そのマジシャンの技をじっと見つめていた〈僕〉と父。

父は、「ああやると、いかにも普通の手品っぽく見えるから不思議なもんだ。あいつなりの工夫だな。何ごともやりすぎないことが肝心だ」(14ページ)と分析しました。

そのマジシャンは〈僕〉の兄だったんですね。マジシャンですが、どうやらマジックではなく、何らかの力を使っているようです。

〈僕〉は兄がかつてそうしていたように、高校3年間は本家で修業をすることに決まっています。そこで、湖西を離れて本家のある石走に向かいました。

同じ高校に通うことになったのは、本家のお坊ちゃま日出淡十郎。淡十郎はちょっと太っていて、常に殿様のような鷹揚とした態度を崩しません。

有名な一族ということもあり、周りが気を使うので、何でも思い通りに事が運びます。

たとえば、赤が好きだからと赤い制服を着たり、景色がいいからという理由だけで、自分の席を勝手に決めたり。

そして、淡十郎が太っていることをからかった人々は、ひどい目にあわされました。

 小学校時代、彼を「ひでぶ」呼ばわりしたクラスメイトは、自宅のまわりに一夜で水路を掘られ、水攻めにされた。泳いで水路を渡れぬよう、ピラニアまで放たれたという。中学校時代ではその禁句を口にした上級生と下級生が、それぞれ寝ている間に布団ごと拉致され、起きたときには、筏の上で石走城の堀を漂っている自分を発見した。(79ページ)


淡十郎の詰襟が赤く、用意された自分の詰襟も赤かったので、てっきりそれが制服かと思っていた〈僕〉ですが、単に思いっきりわがままな校則違反でした。

日出家のことを知っている学校の先生やクラスメイトは誰も何も言って来ませんが、日出家のことを知らない人にとっては、かなり目立つ格好をしている〈僕〉。

不良のようなクラスメイトは、「オメー、どこの中学だあ?」(62ページ)と〈僕〉に因縁をつけて来ました。

〈僕〉は力を使うことを毛嫌いしているんですが、この場合仕方がありません。意識を集中させて、不良の心に触れようとします。

すると、「うるせえんだよ、お前ッ」(62ページ)と立ち上がった男がいました。

〈僕〉は何も喋っていませんから、不良と男がにらみ合っている内に再び力を使おうとすると、「ばぁ、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼんッ――」(63ページ)というとてつもない音がしました。

目をつぶり、耳を塞いだ〈僕〉。ようやく音が止むと、〈僕〉は男に殴り飛ばされてしまいました。男は「お前、ふざけんなよ。今度やったらぶっ殺すぞッ」(64ページ)と吐き捨てるように言います。

〈僕〉が一体、何をしたというんでしょう? 不良も何が何だか分からず呆然としています。

そして、あのとてつもなく大きな音は一体何だったのでしょうか?

淡十郎の言葉で、その男が日出家といがみ合っている棗家の棗広海であることが分かりました。

淡十郎は、「おもしろいやつだな。何も知らないんだな、お前」(64ページ)と何故か〈僕〉のことを気に入ったようです。

〈僕〉と棗はいざこざがあって以来、本家のおじからも、棗家の人間とは関わるなと言われていることもあり、冷戦状態が続いています。

ところが、理科の授業で〈僕〉と棗は同じ班になってしまうんですね。お互いに協力しようとしませんから、実験は全然進みません。

4人1組の班なのですが、女子が1人休んでいて、3人で作業をすることになりました。困ってしまったのは、間に挟まれた速瀬という女子。

「ちょっと・・・・・・どうして、ぜんぜん進んでないの」(108ページ)と速瀬が目を潤ませ始めたので、仕方なく〈僕〉と棗は作業を始めます。

速瀬は、新しくやって来た校長先生の娘で、絵を描くのがとても好きなんですね。淡十郎と帰宅する途中で、速瀬が絵を描いている所に出くわしたことがありました。

すると、速瀬の描いた絵を見て以来、淡十郎の様子がおかしくなります。風景の美しさを口にしたかと思っていると・・・。

「彼女、速瀬という名前なのか・・・・・・」
 と後に続いたものだから、僕は「え」と淡十郎の横顔に視線を戻した。
「失礼、今何て?」
「だから、彼女のことだ。とても美しい」
 膨らんだ頬が、明らかにピンクに染まっていく様を、僕はのどから泡が吹けるのではないか、というくらい大口を開いたまま、まじまじと見つめた。(121ページ)


どうやら、淡十郎は速瀬に恋をしてしまったようです。しかし、その速瀬はどうやら棗のことが好きらしく、〈僕〉は棗に恋人がいるかどうかを聞いてほしいと頼まれてしまいました。

複雑な恋愛感情のもつれから、ますます敵対関係が深まっていく日出家と棗家の次世代の若者たち。

しかしやがて、日出家と棗家は互いにいがみ合うどころではなくなります。〈僕〉は速瀬の父親である校長先生の様子に、どこか不気味なものを感じるんですね。

そして〈僕〉は思い出します。駅前のロータリーにあった石走藩の藩主の銅像に「速瀬」という名前が刻まれていたことを。

〈僕〉の嫌な予感は実現し、日出家に最大の危機が訪れることとなり――。

はたして〈僕〉たちは、恐るべき敵に、いかにして立ち向かっていくのか!?

とまあそんなお話です。色んなマンガやアニメからの小ネタが入っているのも結構面白い所です。

たとえば、〈僕〉は吹奏楽部に入ってトランペットを始めるんですが、それは金曜ロードショーでやっていた某アニメ映画に影響を受けたからなんです。

少年が鳩を放ち、トランペットを吹くアニメ映画。「バルス!」で有名な天空のほにゃららですね。そういう小ネタも良かったです。

あらすじの紹介では触れられませんでしたが、淡十郎には清子というお姉さんがいます。馬に乗って移動する引きこもりなんですが、もうとにかくすごい力を持っているんです。

そして、〈僕〉が恋心を抱くのは、あろうことか、宿敵棗広海の妹で・・・。

キャラ立ちした登場人物がくり広げる、荒唐無稽な物語。はたして、「しゅららぼん」とは一体何なのか? 興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。

明日は、ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』を紹介する予定です。
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