2011年04月20日(水)

★ 『エンジェル ウォーズ (日本語吹替版)』

テーマ:【青春】
2011年。アメリカ/カナダ。"SUCKER PUNCH".
  ザック・スナイダー監督・原案・脚本・製作。
 『17歳のカルテ』のゴスロリRPGバージョンみたいなものだろう、と軽くみていた映画だったので、何も期待はしていなかった。
 タイトルがキャッチーな響きのある『サッカー・パンチ』から、最初から見る意欲を失わせる『エンジェル ウォーズ』へ変えられてしまった点も謎だったが、予告編を見て、期待していたものとは違い、ファンタジー系のテレビゲームを連想させる画面に失望感を味わったりもした。

 『ドーン・オブ・ザ・デッド』の妙に開放的で陽気でさえある雰囲気に、すばらしい監督が出現した、と思ったのもつかの間、次の『300<スリーハンドレッド>』の自閉症を思わせるコミュニケーション能力の不在に息苦しさを感じて、これはダメな監督だ、と見放してしまったザック・スナイダー監督だったが、
 同じようにコミュニケーション能力に問題あり、と思われながらも魅力的な部分が多くて困惑した『ウォッチメン』で、意外にまだまだやれる監督かもしれない、と見直していた。

 物語からすべて自分で作ったこの『エンジェル ウォーズ』はザック・スナイダー監督が初めて、自分のやりたいことをやりたいように作った作品で、実質的には映画作家としてのデビュー作でもあり、その真価が問われる、キャリアの上でも重要な作品となる。

 想像力を暴走させ過ぎて、不健康さと屈折の度合いが強く、映画の全体像やバランスを見失っているような印象があったが、自分の思いのたけを全部ぶち込んだような物語には、監督が本来持ち合わせている陽気さや楽天的な要素、開放的なところも垣間見えるような場面もあり、映画作家ザック・スナイダーの誕生を告げる作品にはなり得ているような気がする。

 妄想癖のある引きこもり少女が、妄想の果てに、自分自身の命とひきかえに自由への鍵を手にする、そして自由と希望の鍵を、愛とともに他の人物に託す。これは『カッコーの巣の上で』そのものだが、この物語の語り手はいったい誰なのか、という謎が残る。

 物語の語り手は誰か、という映画や小説などでもっとも重要な部分がこの映画の主題にも見えるように作られていて、最後に「物語を語るのは、この映画を見ているあなた自身なのだ。さあ!戦闘準備はできているかい?」というザック・スナイダー式のハッタリもそれなりに決まっている。
 決して傑作とは言えない映画だったが、「これまで考えてきたこと、自分自身の青春の形象化を何とか完成させてみせてやる。」という熱気が、バランスの悪さやわかりにくさも含めて、ひとりの孤高の映画作家の映画を見た、という充実感をもたらした。

 音楽は、ピクシーズ、ビョーク、ザ・スミス、イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ、ロキシー・ミュージック、ユーリズミックスなど、いかにもな選曲がなされている。
   IMDb        公式サイト(日本)
映画の感想文日記-suckerpunch2
 舞台は1960年代はじめあたりだろうか。ロボトミー手術が平然とおこなわれていた精神科病棟の中でバレエのレッスンをしているシーンは心持ちダリオ・アルジェントの『サスペリア』風で、新しい治療方法として演劇が取り入れられている、という設定になっている。

 1960年代のコスチューム劇の中でコスチューム劇が演じられ、ベイビードール(エミリー・ブラウニング)の想像力が飛躍して、さらにその中でコスチューム劇が展開する、という『インセプション』みたいな多重構造のドラマが描かれる。
 ベイビードールが想像力世界の中で、現実との接点を見出し、閉鎖病棟からの脱出計画に仲間たちを巻き込んでいく物語。
 キャラクター設定が細やか過ぎて、物語の流れを重くしてしまったような傾向も見られた。精神科医のゴルスキー博士(カーラ・グギーノ)だけのエピソードで一本の映画が作られるくらいに人物像にさまざまな要素が入り込んでいる。
映画の感想文日記-suckerpunch3
 コスチューム劇の中では独裁者的な権力を誇示する支配人、ブルーを演じるオスカー・アイザックという俳優がなかなか面白い。現実の世界では思い通りの人生が歩めないもどかしさを抱いているらしい複雑な人格を巧妙に演じていた。最後にベイビードールを前にして流した涙が忘れがたいイメージを残す。
映画の感想文日記-suckerpunch4
 スタンリー・キューブリックの『突撃』の塹壕のシーンをそのまま再現したセットや、ジョン・カーペンターの『ゴースト・オブ・マーズ』を連想させる近未来の列車など、おそらくザック・スナイダーが過去に見て感動した映画やアニメやコミックのイメージによる戦場の中で5人の少女たちが自由への戦いを繰り広げる。
 5人の中では、『ハイスクール・ミュージカル』のヴァネッサ・ハジェンズがもっとも名の知れた女優だったが、意外に地味な役どころで、何と密告者の裏切り者キャラクターだった。当然ながらむごたらしく処刑されることになる。
映画の感想文日記-suckerpunch5
 仲間たちを救うために悲劇的で英雄的な戦死を遂げることで、一番のもうけ役だったロケット(ジェナ・マローン)。現実には料理長にナイフで刺されて死ぬ(これはコスチューム劇内部での出来事だったかもしれない)だけだが、想像力世界の中では列車に仕掛けた時限爆弾ごと都市に突入し、敵に壊滅的な打撃を与える。
 『パラサイト・バイティング 食人草』ではタフな眼鏡女子の役だったが、この映画ではキャラクター的にも一番魅力的に映り、おそらく、近いうちに主役級の女優になることは間違いない。
映画の感想文日記-suckerpunch6
 5人の美少女戦士がファンタジー世界でバトル・アクションを繰り広げる、という設定のわりには期待されるセクシー度数は限りなくゼロに近い。監督がそういうものに全く興味がないので仕方がないが、あまりヒットしていない理由の一因にはなっているだろう。(カルト映画になる要件にも欠けている。)
 一見オタクらしさは全く感じられないスナイダー夫妻だが、裕福で数多い友人がいる、アウトドア・スポーツを愛するオタク、という人物がいても良いことだろう、とこの映画を見て思ったことだった。このままオタク夫婦でオタク世界全開の映画を作り続ければ、いつか当たりの日が来るかもしれない。
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