2010年02月06日(土)

★ 『インビクタス/ 負けざる者たち』

テーマ:【ヒューマン・ドラマ】
2009年。アメリカ。"INVICTUS".
  クリント・イーストウッド監督。モーガン・フリーマン主演・製作総指揮。
 ネルソン・マンデラを主人公にした映画をイーストウッド監督が作ると知ったときには、なぜ、いまさら?という気持ちが強かった。
 2010年のFIFAワールドカップ開催国である南アフリカ共和国への応援の意思表示をしたかったのだろうか。マスコミでも南アフリカの治安の悪さを懸念するような報道がなされたりもしていたので、そんな偏見を捨て去れという思いも多少はあったのかも知れない。
 ネルソン・マンデラを主人公にした映画にはすでに、『マンデラの名もなき看守』というすぐれた作品があり、それと見比べてみると、題材のドラマチックそうな予想に反して、地味さが際立つ。

 ラグビーになじみが薄いこともあり(ルールもよく知らない)、試合の場面でも何が起こっているのかはっきりとわからない場面が多く、どっちが劣勢でどっちが優勢なのかさえ判別できないほどだった。
 ドラマ性が弱いようにも見える物語の展開にも違和感があり、いくらでもドラマチックにできそうなエピソードをわざと地味にしているような印象があった。
 しかし、イーストウッド監督があえて地味な物語を語ろうとするのは、『ホワイトハンター・ブラックハート』、『センチメンタル・アドベンチャー』などでも見られたことで今に始まったことではない。
 これは実話をもとにした原作に忠実に沿った結果なのかも知れない。あるいは、ドキュメンタリー映画を見ているような気分に観客を導くための演出意図だったのか。

 「MALPASO PRODUCTION」というクレジットを眼にしただけで泣きそうになるほどにクリント・イーストウッドには取りつかれているので、実際は内容など何でもいい、というくらいなものなのだが、
 今回はモーガン・フリーマンの企画、製作総指揮の下での映画ということもあり、昨年の『グラン・トリノ』、『チェンジリング』みたいに魂を揺さぶられるような物語とはちょっと違い、楽天的にさえ見えるような人間賛歌が歌いあげられているようなイメージがある。

 ただし、『マンデラの名もなき看守』と比較すると、ネルソン・マンデラの描き方にも多少の意地悪さがあり、最初の方では周囲の人々の言うことを聞かない独裁者のようにさえ見え、実の娘との意思の疎通ができないことに悩んでいるエピソードなど、偉人というより、孤独な悩み多きひとりの人間として描かれている。
 それだけに、クライマックスのオールブラックスとの決勝戦で一挙に爆発する高揚する場面の連続には、編集のこれ以上はないだろうという上手さ(マルパソ組のジョエル・コックスが担当)もあって、
 ダニー・ボイルの『スラムドッグ$ミリオネア』がなぜいまいちだったのか、それは編集が下手過ぎたからだった、ということを思い出したりもした。
 クリント・イーストウッド監督作品だから、という理由だけではなく、すばらしい映画であることには間違いない。
   IMDb       公式サイト(日本)
映画の感想文日記-invictus1
 スタジアムには実際に数万人の観客を入れて撮影しているように見えた。整然とした観客のマナーの良さを見ていると今年のワールドカップも心配いらないように感じられた。
映画の感想文日記-invictus3
 ネルソン・マンデラがいかに偉大な人物なのかについては、本人に演じさせるのではなく、ラグビー選手のフランソワ・ピナール(マット・デイモン)の視線を通して描かれている。
映画の感想文日記-invictus4
 もっともドラマチックに盛り上がったエピソードは、過去には敵同士だった白人警察官と黒人警察官とが仕事を通して次第に気持ちがひとつになってくる物語だった。実際に警察官役の俳優にはキャラクターの立った人物像が多かった。
映画の感想文日記-invictus5
 アメリカン・フットボールみたいな派手さはなく、肉体と肉体とのぶつかり合いと押し合いだけが目立つラグビーだったが、決勝戦では細かいショットをつなげて、見せ場が多くなってきた。
映画の感想文日記-invictus2
 ネルソン・マンデラにそっくりだというモーガン・フリーマンは長身と身のこなしの軽さ(マンデラは元ボクサー、フリーマンは元ダンサー)は似ていたが、やはりモーガン・フリーマンはモーガン・フリーマンにしか見えなかった。
 エンディングで流れる本物の映像には、一瞬どっちか見分けがつかないものも確かにあったが。
 劇中で朗読される詩『インビクタス』(私が我が運命の支配者、わが魂の指揮官、という一節を含む有名なものらしい)には、感銘を受けた。
 音楽は『グラン・トリノ』に続いてカイル・イーストウッドがジャズとカントリーとR&Bとを混ぜたようなバラードを用意していて、これもまたすばらしかった。
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