★ 『わたし出すわ』

2009年。アスミック・エース エンタテインメント/セントラル・アーツ。
  森田芳光監督・脚本。
 10月31日より全国公開された作品なので、公開初日に見たことになる。しかし、広い館内に観客は私ひとりだけだった。途中で食べるものの音がうるさいおばさんが入ってきたようだったので、観客数2名だったことになる。
 前評判は確かに良いとは言えない映画だったが、まさかここまで人々の興味の外にあるとは意外だった。

 近年の日本映画ではたいへんに貴重なオリジナルの脚本による製作で、キャストも今波に乗っている旬の俳優陣が集められている。
 「映画は破滅に向かっている。それが唯一の映画だ。」という言葉をこれほど実感した出来事もなかった。いま自分たちが映画と呼んでいる形での日本映画は遅かれ早かれ、確実に滅亡するだろう。ハリウッド映画はもはや破滅したも同然の状態(経済的に)だが、それは悪いことではなく、良いことなのかも知れない、と思った。
 今後は独立資本系での映画製作や発表の機会が増えることにつながるのなら、再び面白い映画を数多く見ることができる時代がやってくるのかも知れない。

 この『わたし出すわ』は、途中で30分以上眠ってしまったので、ストーリーの所々がわからないままだったが、特に問題はない。
 森田監督作品としては、『間宮兄弟』、『サウスバウンド』、『椿三十郎』に続く新作だが、これまでのキャリアは一体何だったのか、というほどに変な映画で、どちらかといえば『サウスバウンド』に近いが、もっととんでもない作品になっている。
 現代の日本で人々の最大の関心事である「お金」について、失敗をおそれずに真正面から挑戦した映画だというだけでも尊敬に値する。
 クールでクリーンな印象が強調されるような演出、編集、美術は肌に合わない、というより全く好みではないが、面白くない、つまらない、という感想ですませてしまってはもったいない何かがこの映画にはある。
 物語がすぐれているとも思えなかったが、強烈な異物感が残るこの映画を映画館で見た貴重な観客のひとりとして、後世に自慢できる日がいつか訪れることがないとは言えない。
        公式サイト
映画の感想文日記-watashi1
 路面電車のシーンがなぜか好きだった。何かわからないが素晴らしい。
 運転手を務める井坂俊哉と小雪が出会うシーンだったが、森田監督の過去の作品で松田優作主演の『それから』を連想させられた。
 くるりとCoccoのシンガーソンガーによる『初花凛々』のプロモーションビデオも思い出した。
映画の感想文日記-watashi2
 キャラクターや話し方が似ていたので横山めぐみだと思い込んでいた黒谷友香とのエピソードはちょっとサスペンス風で面白かった。自業自得の大きな悲劇を迎えることになる。
映画の感想文日記-watashi6
 狙った獲物は逃がさない、金を持っていそうな女性を見つけると、言葉巧みに接近して金を奪い取る詐欺師を演じた袴田吉彦は新境地開拓とも言える名演を見せていた。チョイ役だったが。
映画の感想文日記-watashi7
 『さよならみどりちゃん』での荒井由美の『16番目の月』の熱唱がいまだに印象深い小山田サユリは借金まみれの主婦を演じる。小山田サユリが出演しているだけで満足した、ということもあった。
映画の感想文日記-watashi3
 謎の金塊の秘密は小池栄子の意外な告白によって明らかになった。
 この映画には、小池栄子、仲村トオルという名作『接吻』のコンビが出演している。『サウスバウンド』つながりで豊川悦司も出てくれば良かった。
映画の感想文日記-watashi4
 消費者金融会社で働きながら、箱庭作りが趣味のピエール瀧は、妻の小池栄子が小雪からもらった支度金で念願の箱庭協会会長に就任する。
 出演者の中でもっとも色気があったように見えた小澤征悦のエピソードにも独特の味わいがあって、面白くはなかったが、印象に残った。
映画の感想文日記-watashi5
 日本期待の長距離ランナー、山中祟にぶしつけな質問をするレポーターの北川景子。
 山中崇は小雪の巨額の資金援助によって、脚のトラブルをアメリカで治療していた。
 「お金」とは何かについて、この映画に使われたお金も含めていろいろ考えさせられる不思議で不可解な興味深い映画だった。
 エンディングは辻詩音の『ほしいもの』というアップテンポのけっこう良い曲で映画の後味をさわやかなものにすることに成功していた。
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