2008年03月15日(土)

★ 『ノーカントリー』

テーマ:【サスペンス】
2007年。ParamountVantage."NO COUNTRY FOR OLD MAN".
ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン監督・脚本・製作。
 この映画を見て、主演がトミー・リー・ジョーンズということもあり、同じようにカウボーイ・ハットをかぶって警察官を演じていたせいか、トミー・リー・ジョーンズ監督・主演による『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』 を連想した。
 アカデミー賞の作品賞と監督賞とを受賞したこの『ノーカントリー』よりも、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』の方がすぐれた映画だったというように思われてならない。

 もともとコーエン兄弟の映画は、どちらかというと苦手で、評価の高い『ファーゴ』よりも、初期のコメディ調の犯罪映画、『ブラッド・シンプル/ ザ・スリラー』や『赤ちゃん泥棒』などの、軽い感じの方に好感を持っていた。
 この映画は、『ブラッド・シンプル』に似た要素も少し感じられて、面白かったものの、いつもコーエン兄弟の映画を見るときに感じる違和感のようなものが、またあった。

 若い頃から数多くの映画を見つつ映画を作ってきた人の作品には、映画というジャンルに対する抑えようのない愛と憎しみが感じられるのが普通だが、コーエン兄弟の作品にはそういった部分が希薄で、なぜコーエン兄弟は映画を作りつづけているのかが、よくわからない。
 それは意識的に排除している部分なのかも知れないが、何となく、技術系の職業に就職するべきだった人が、職業選択をあやまって映画監督になってしまった、というイメージがある。

 『すべての美しい馬』(読んでいない)などで知られる純文学作家のコーマック・マッカーシーが書いた犯罪小説、『血と暴力の国』が原作で、小説のほうを読んでから見てみようかとも思ったが、
 その素晴らしさに圧倒されたジェイムズ・エルロイの『LAコンフィデンシャル』が、映画化されたら、こじんまりとした、しかもそこそこに良く出来た映画になってしまったことにがっかりしたことがあったので、すぐれた小説の映画化の場合は、映画の方を先に見た方が良い、という経験から、先に映画を見ることにした。

 おそらく原作の小説では、ある程度すんなりと納得できるものになっているのだろう、最後の夢についての会話が、映画では奇妙な印象を与えるものになっている。
 現代風の犯罪アクション映画を装った西部劇として見ると、出演者の好演もあって、面白いものになってはいた。
     IMDb             公式サイト(日本)
nocountry5
 『いのちの食べかた』 で見たのが記憶に新しい、牛を殺す道具を使って、人間を特別な理由もなく理不尽に殺してゆく殺人鬼、アントン・シガー(ハビエル・バルデム)。
 魂を持たない純粋悪として描かれる。
 『海を飛ぶ夢』では、穏やかな微笑を浮かべながら、尊厳死を選択する老人を演じていたが、同じ俳優だとは思えないほどに、ここでのハビエル・バルデムはおそろしい。
nocountry1
 物語の語り手で、本物の生きた破壊の預言者、シガーと出会ってしまったために引退を決意する保安官エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)。映画のタイトルは、「老人の住む国ではない」という保安官エドの引退を決意した決心に由来している。
 物語は聖書やギリシャ神話に基づいたもののような印象があり、『キング 罪の王』 にも似た感触があった。
 さすがにトミー・リー・ジョーンズは名優で、ふだんは缶コーヒーのCMに出ている変なおっさん、とは別人になりきっていた。
nocountry4
麻薬取引のトラブルで全員が死んでいる現場に残された200万ドルを手にしたために、マフィアに追われるはめになったモス(『アメリカン・ギャングスター』 でもっとも印象に残った俳優、ジョシュ・ブローリン)。
 よく考えてみれば、この映画は『アメリカン・ギャングスター』より、はるかにすぐれた面白い映画であることには、間違いない。
nocountry6
 モスが愛する妻、カーラ・ジーン(ケリー・マクドナルド)にも悪魔のようなシガーの魔の手がしのび寄る。果たして、シガーはカーラ・ジーンを殺したのか、あいまいなままだったところに、よりシガーのおそろしさが強調される効果があった。
nocountry8
手のつけられなくなったシガー殺害をマフィアから請け負うクールな殺し屋、カーソン・ウェルズ(最近活躍がめざましいウディ・ハレルソン)。実生活ではもっとも犯罪者に近い俳優だが、もっとも理解しやすい人物を演じる。
nocountry7
 大金をめぐって悪党たちが争奪戦を繰り広げる物語は、フィルム・ノワールではなじみ深い物語で、最近見たジュールス・ダッシン監督の『男の争い』(1955年)を想い出したが、あれよりはるかに劣った映画であることには間違いないだろう。
nocountry2
 『羊たちの沈黙』のレクター博士以来の、もっとも恐ろしい殺人鬼と評されているらしい、シガーのキャラクター造形には、さえた演出が見られた。
 が、やはりコーエン兄弟の映画とは、何か肌が合わない、という印象がどうしても残る。
ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション
¥3,124
Amazon.co.jp
血と暴力の国 (扶桑社ミステリー マ 27-1)/コーマック・マッカーシー
¥900
Amazon.co.jp
AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

asphaltさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。