2008年 フランス 〔ドラマ〕 129分

○監督・脚本 : セドリック・クラピッシュ

○出演 : ジュリエット・ビノシュ、ロマン・デュリス、ファブリス・ルキーニ、アルベール・デュポンテル、フランソワ・クリュゼ、カリン・ヴィアール、メラニー・ロラン、オドレ・マルネ ほか



≪あらすじ≫

ある日、ダンサーのピエールは

心臓病で余命わずかと告げられる。

シングルマザーのエリーズは弟のピエールの身を案じ、

子どもたちを連れて彼のアパートに同居し始めた。

やがてピエールは向かいに住む

大学生のレティシアが気になっていく。

しかし、歴史学者のロランもまた、レティシアを愛し始めていた。

一方、離婚後も元妻とマルシェで働くジャンは、

買い物に来るエリーズに好意を寄せるようになっていた。
(quotation from goo映画)



≪レビュー≫★★★☆☆(※少しネタバレあります)

文字通りパリを舞台にした群像劇で、

性別も年代も異なる人々の日常を切り取っています。


同じセドリック・クラピッシュ監督作品である

『スパニッシュ・アパートメント』が面白かったので観てみましたが、

1つのアパートに集う学生たちの青春をコミカルに描いた

それとは異なり、本作は華々しいパリに住む人々の

暗い側面に焦点を当てた感じです。

“これがパリ。誰もが不満だらけで、文句を言うのが好き”

というピエール(R・デュリス)のセリフが

すべてを語っていました。


登場人物皆が人に言えないことや負の要素を抱えていて、

それぞれに興味をひく部分はありましたが、

特に注目していたのは、シングルマザーのエリーズ(J・ビノシュ)と

彼女が通うマルシェで働くジャン(A・デュポンテル)。

年齢を重ねた2人ならではの落ち着いた恋の歩みは

じんわり胸に沁みます。


一方、歴史学者ロラン(F・ルキーニ)の激しい妄想と

ストーカー的な行動は怖かったですあせる

後の展開も急すぎて、理解に苦しみました。

あれはひょっとして、妄想の延長だったのかな?

ただ、弟フィリップ(F・クリュゼ)に子どもが産まれたという知らせを

華やかなメリーゴーランドの前で受けた後歩いてゆく灰色の街は、

まさに彼の心を表しているかのようで、印象的でした。


そのほかにも直線と曲線、動と静、俯瞰と仰視等、

対比的な演出が上手く使われていて、

とても興味深かったです。
またロイク・デュリーを中心に、バッハ、エリック・サティ、

クインシー・ジョーンズといった多彩な音楽も華を添え、

“移民の街、パリ”を匂わせていました。


劇的な事件があるわけではないものの、

パリに住む人々の華やかならざる面を
ゆったりあたたかな眼差しで見つめた本作は

なかなかの良作。

★3つです(3.3)。



<公式サイト>

http://www.alcine-terran.com/paris/