シネマな時間に考察を。

心に届く映画を語る、シネマな時間に考察を。ヨーロッパ・中東・アジアを中心とした愛すべき短館系作品のレビューを綴っています。映画と心のちょっといい関係をさがして。心がきらりとひかる瞬間を大切に。


テーマ:

決してサラを忘れぬように。
名前が歴史を語り継ぐ。
伝えることの意義を問う。


シネマな時間に考察を。


『サラの鍵』
2010年/フランス/111min
監督:ジル・パケ=ブレネール
出演:クリスティン・スコット・トーマス


戦時下にひっそりと咲く善意の花。
リンゴをありがとう、と。


「私の名前はサラ・スタジンスキ」
そう言って相手にさっと手を差し出した少女はしかし、その後のアウシュビッツを免れた新天地で、新たな暮らしを手に入れながらも、スタジンスキのその名を固く、封印した。


あの日、じゃれあう朝のシーツの中。幼いきょうだいの無邪気な笑顔。
けたたましく扉を叩く音に跳ね起きる。運命のノック。

少女の咄嗟の判断。その鍵が幼い命を守ってくれるはずだった。
けれどその鍵は、少女に罪悪感だけを残して消えた。


シネマな時間に考察を。 弟との約束。
私を待っている。絶対に待っている。

その必死の思いと責任感、そして弟への無償の愛が、過酷な運命と非情な試練を強いられた不運な状況下をもろともしない、ただひらすら「弟の元へ」という思いが、サラを動かす原動力。一緒に逃げた少女の死は、サラのより強い思い、生きるエネルギーを感じさせる象徴となった。そうして辿り着いたアパートで・・。


納戸の扉の鍵を開けた、

その瞬間から少女は、悲鳴と引き換えに自身の心の扉に鍵を掛けた。
固く、固く。


罪悪感を閉じ込めた心の鍵。
日記の中にしたためるように封印したサラ。
そして67
年後、その鍵を運命的に手にしたジュリアがいた。
偶然が引き寄せた運命の出会いに今、閉ざされた歴史が開かれる。


知らなくてもいい事実だったかもしれない。
それを知ることがなければ、現代に生きる彼女の人生が変わることなどなかったのかも。戦時中のことだ、何が出てくるか解らない。そういわれた時、ジュリアは躊躇しなかった。知りたいの。覚悟してるわと。夫は言う。真実を知ったからといって誰かが幸せになったのか、世の中が今よりよくなったのかと。確かにその真実は、むしろ人々を傷つけた。


それでもジュリアは知ろうとした。サラの心に近づこうとして。そして彼女の行動が遂に、今は亡きサラの心の扉を開けた。きっと、開けたんだと思う。そう信じたい。


どれほど黒い歴史であれ、過去があるから今がある。過去によって今を生かされている。過ちも全て現在へと続く1本の道。今を生きている感謝を忘れないためにも、ときに過去に目を向けて。過去を知ることで今の現在が変わらなくとも、未来をほんの少し変えることができるかもしれないから。


1942年、ナチス占領下のパリ。
ユダヤ人一斉検挙の朝から始まるこの映画は当然、ホロコースト映画である。しかしながらアウシュビッツのシーンは一切ない。黒い歴史に翻弄されたもうひとつの悲劇を、現代に生きる家族に接合させた切り口で、また新たなホロコースト映画の傑作となり得た。小説を原作に持つこの種の作品には、史実に基いた作品とは違うもうひとつの視点が与えられる分、より深く、より多感的に歴史の真実の背景に目を向けることができる。『縞模様のパジャマの少年』などもそうだった。


危険を冒してまでサラを救った農家の夫婦も忘れがたい。
彼らの記録があったからこそ、ジュリアはサラと出会えた。


記録といえばこんな場面がある。
ヴェル・ディヴ事件に関する資料(写真・文書記録)などが極端に少ない事実を、「何でも記録するのが得意なドイツ人が何故?」とジュリアの若い同僚は疑問視するのだが、ユダヤ人を検挙したのはナチスではなくフランス政府なのだ。そこには非ユダヤ人である“フランス人”の裏切りもあった。裏黒い事実をフランス国は記録に残さなかっただけのこと。


奇しくも日本では今、原発事故の記録に関して揺れている。
事実は全て記録して欲しい。未来のためにもしっかり残す義務がある


1995年、有名なシラク大統領の演説。
過ちを認め、公表し、これから始まる歴史をより良くせんとする意思表明。


私たちには映画によって知ることのできる歴史がある。
例え何もできなくても、知ることならば誰でもできる。そう思う。


サラが死ぬまで抱え続けた罪悪感は、ジュリアに宿った小さな新しい命の誕生によってきっと救われたはず。サラだってそう。確かに弟のことは死なせてしまった。けれど彼女は生きて家族を持った。そうやって人の歴史は続いていくのだから。


全てを暖かく包みこむ、
幸福なラストに心、ときめく。



『サラの鍵』:2011年1月24日 シネリーブル神戸にて鑑賞



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3日分の食料と毛布。

屋内競輪場の概観や収容された人々の様子、

その衛生状況の悲惨や通交証の存在のこと。

『黄色い星の子供たち』に観たのと同じ映像に、当時のリアリアティを重ねて感じた。


ハリウッドからも映画化オファーがあったそうだが、

本国フランスで撮られたことに何よりの価値がある。


それにしてもルーシーがキリンのぬいぐるみの名前だったなんて。

ヤラレタ!

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