シネマな時間に考察を。

心に届く映画を語る、シネマな時間に考察を。ヨーロッパ・中東・アジアを中心とした愛すべき短館系作品のレビューを綴っています。映画と心のちょっといい関係をさがして。心がきらりとひかる瞬間を大切に。


テーマ:

武器商人vs廃品回収。
[壊す者]と[壊された物]との遠まわしな闘い。
非暴力かつ大いなる“悪戯”で世界を平和にする作戦!


シネマな時間に考察を。

『ミックマック』
2009年/フランス/104min
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ
撮影: テツオ・ナガタ

出演:ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ、ドミニク・ピノン


1つ1つのイタズラを缶バッヂか何かにして机の上に並べてみたい。
1コマ1コマを重ねてパラパラまんがにしてみてもいいかも。


シネマな時間に考察を。 社会で選らばし優遇者も、ごく普通の凡人も、どこか可笑しな変人達も、みんなどこかにガラクタを抱えて生きている。社会も世界も廃品で溢れ、世の中はいたずらで満ちている。


地雷で亡くした父の仇と頭に残る弾丸のリベンジに、ガラクタで応戦するというドタバタ活劇が小気味よく、反戦というシリアスなテーマもジュネにかかればご覧の通り。明暗のコントラストを上げた画質にトーンを下げた深い色相が生み出すその色温度。フレーム一杯、緻密に配置された人物構図と絶妙なカメラアングルはファンの期待を裏切らない。いちどハリウッドで地雷を踏んでしまったジュネ監督の、戻るべき場所へと無難に収まった1作となった。


少々孤独に、けれど平凡に暮らしていた男に突然降りかかる悲劇。流れ弾に当たり入院している間にアパートも仕事も失いホームレスになってしまうという冒頭を、科白もナレーションも排した映像だけのシュールな状況説明で繋ぎ、物語は動き出す。その男、バジルは路上パフォーマンスで小銭を稼ぎ、川べりでそれなりに心地よく安眠をとる。その逞しさ。運命を受け入れている。悪あがきなし。そんなポジティブさを買われ、バジルはとあるホームレス家族の一員として迎え入れられることに。廃品置き場に設えられた秘密小屋が彼らのアジト。そこに集う7人は全員何かしらの特技を持つ。1人1芸。まさに芸は身と心を助けるのだ。


シネマな時間に考察を。 物語の進行とは別の次元で発生させる、遊び心満載なカット割りが幾つも散りばめられ、漫画的なプロットの連続に観る側の心を自由にする。ギャグのような展開ですら、こだわりの美的センスで映画然とせしめ文句を言わせない。メンバーのひとりの軟体女と同じくその柔軟な映画作りに、地元パリでの拘束されない撮影ぶりを監督が楽しむ様子が見て取れる。そのことが嬉しい。


そうこうして長らく待ち続けた待望のジュネ最新作だった訳だが、鑑賞後は無性にキャロが恋しくなった。彼らはもうダブル監督で作品を撮ることはないのだろうか。『ロストチルドレン』のあの退廃的ダークファンタジーな、目を見張るディテールに溢れたあの世界へと、もういちど連れて行って欲しいのに・・。


シネマな時間に考察を。 ブラックないたずら満載というプロットは『デリカテッセン』に通じるものがあるものの、『デリカテッセン』は舞台そのもののが奇想天外であって、だからこそ着地点が予測できない面白さ=自由さがあった。本作は、兵器製造会社への復讐劇という目的意識が明瞭になってしまっている分、着地点は想定の範囲内を逃れられないし、平和祈願のメッセージすら織り込んでしまうため、小さくまとまってしまった感は否めない。


『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の監督オファーを断ったという話は有名だが、オファーしたくなる気持ちも分かる。ホグワーツ魔法魔術学校のグリフィンドール談話室の美的ヴィジュアル、魔法薬学・変身術・呪文学・薬草学そして闇の魔術に対する防衛術などの魔法飛び交うファンタジックな授業の様子。ジュネ的映像マジックで作り出されるそれらの映像が可能ならと、想像するだけで心踊りわくわくしてしまう。大鍋から得体の知れない不気味な気体が立ち昇っていたり、廊下を縦横無尽に走り回るピーブスやゴーストたちの自由でユーモラスな世界観、肖像画の中でひそひそ話をする中世の騎士や婦人たちのシニカルな画。確かにジュネ版ハリー・ポッターを観たくないといえば嘘になる。が、監督曰く、魔法や空飛ぶほうきで全てが解決してしまう世界を描くのは実に面白くないとのこと。やはり彼には奇想天外なオリジナルストーリーが何よりだ。


ジュネ組俳優で欠かせないドミニク・ピノンはいい具合に歳をとり、年齢が生み出す造詣の中で彼の独特な顔立ちも妙に落ち着いてしまったがために、彼ならではの強烈なインパクトが返って埋もれてしまったように感じるのがいやはや残念。けれどやはり彼には最後までジュネ作品に出続けて欲しいという気持ちは変わらない。そしてまた次なるジュネ監督最新作を今から心待ちにしたい気持ちも、やはり変わらない。


ガラクタに対する美意識と、
壊れた廃品への敬愛を込めて。


『ミックマック』:2010年9月19日 シネリーブル神戸にて鑑賞

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