シネマな時間に考察を。

心に届く映画を語る、シネマな時間に考察を。ヨーロッパ・中東・アジアを中心とした愛すべき短館系作品のレビューを綴っています。映画と心のちょっといい関係をさがして。心がきらりとひかる瞬間を大切に。


テーマ:

からっぽな“心”にふわりとふりかかる質量が、
無垢な魂のように哀しげに愛しげに漂う。
刹那な世界に拾い集めた、きらきら光るものたちを並べて。


シネマな時間に考察を。-ku0.jpg

『空気人形』
2009年/日本/116min
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:ペ・ドゥナ、ARATA、オダギリジョー


生まれたことの「生」を祝うケーキの上のローソクを、

ふーっと一息吹き消すのは、

儚い人生の花を咲かせたタンポポの、

最後の命をふーっと一息吹き飛ばす、

「死」へのため息のそれと、いずれ同じこと。


シネマな時間に考察を。-ku4.jpg 淋しい男の代用品。空気で膨らますだけの型遅れな安物の。空っぽな空気人形は、ある朝持ってはいけない「心」を持ってしまう。男が唯一与えてくれた「キレイ」という言葉。心を持った空気人形は、滴る雨粒の光の反射に「キレイ」とはじめて言葉を発す。持ってはいけない心を持ってしまった哀れな空気人形は、外の世界へ歩み出る。きらきら光る美しいものを拾い集めて、冷たい身体の体温のかわりにそれらのきらきらをスケッチし、空っぽな心に注入していく。


彼女はある日、孤独で優しい老人に教わった。都市に生きる人間達は、見かけは完全に見えていても、大抵の人間が空っぽなんだと。満たされることのない空虚な心。誰かに温かい息を吹き込まれることをじっと、じっと待っている。


シネマな時間に考察を。-ku1.jpg どんなに荒んだ生活を送るしかない者たちにも、1つだけ必ず持っている心、キレイだと思う気持ち。キレイなものを見る目と、キレイなものに触れる手と、キレイなものに憧れる心を。


シネマな時間に考察を。-ku2.jpg 是枝監督の作品には常に死を喚起させる要素が含まれている。『空気人形』では肉体的な死以上の、心の欠如=精神的な死をテーマにしながら、ファンタジックな魔法もきらりとかけられている。それでいて過去作品のどれにも属さない類の心の風穴をすーっと開けられた心地がする。とても切なくて、なのにとても綺麗で。きらきらしている。とても沢山、きらきらと。

特筆すべきはワンシーン出演のオダギリジョーの存在。これがこの作品を見事に神がかり的崇高さへと昇華させている。おかえり、と迎え入れ、君がみた世界に美しいものはあったかと問い、あったと答える空気人形に優しく、もしくは切なげに微笑み、いってらっしゃい、と送り出す。空気人形は彼に言う。生んでくれてありがとう、と。創造主の愛と憂い。創造物の宿命と選択。刹那な世界の終わりに空気人形が見た夢は、切なくも神々しく美しい。最期に彼女はキレイに去った。その姿は心の病で過食に走る少女の心に「キレイ」を与えた。

心を持ってしまうことは切なくて苦しい。世の中益々希薄になって、心を亡くした忙しい人で溢れ返る。空気人形のように時々は、心の栓を外してシューっと力を抜くことができたなら、もっとうまくバランスを取れるかもしれないのに。

ふわりと天井に浮かぶくらいの、

ゆるやかな心の質量をもてたなら。

『空気人形』:2010年4月22日DVDにて鑑賞

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